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視点の行方

段ボール需要の回復は2022年と予測

印刷ジャーナル 2021年10月25日

 (株)矢野経済研究所は、国内の段ボール市場を調査した。
 全国段ボール工業組合連合会の統計資料によると、2020年の国内段ボール生産量は141億8,735万平米。段ボール需要は経済の動きと密接に関わっていることから、新型コロナウイルス感染症拡大にともなった不要不急の外出自粛による経済活動の停滞は段ボール需要にも大きな影響を及ぼした。最大の需要分野である加工食品(飲料含む)向けでは、自動販売機向けやコンビニエンスストア向けの需要が激減し、青果物も業務用が減少に加えて、局地的集中豪雨の影響も大きかった。電気器具・機械器具向けはサプライチェーンの分断により自動車産業を中心に輸出が大幅減となった影響を受け、需要分野の中でも減少率が最も大きかった。薬品・洗剤・化粧品向けでは通院控えや服薬機会の減少、インバウンド(訪日外国人客)需要の激減などが大きく響いた。
新型コロナウイルスの影響で紙・板紙の生産量が減少したことにより、古紙の発生量が減少。これに米国市場の段ボール需要増や海上コンテナ不足などが相まって東南アジアの古紙輸入が滞っている。その中でEC市場の拡大により中国、東南アジアにおける段ボール需要が拡大していることから、グローバルマーケットでは古紙の需給逼迫感が強まっている。そのため、2019年に急落した古紙輸出価格は2020年から2021年に掛けて上昇基調にある。今後も古紙の需給逼迫は続くと見られるため、そうした状況が、国内原紙市況の値上がりにつながる可能性も出てきている。
2021年は一部回復が遅れている分野もあるものの、総じて前年から回復基調で推移しており、通年においても前年を上回るものと見込まれる。ただ、足元では8月中旬から末に掛けての線状降水帯にともなう記録的な豪雨による青果物への悪影響や半導体不足による自動車産業の急ブレーキなどのマイナス要因が出てきていることに加えて、冬には新型コロナウイルスの第6波到来も否定できず、日本経済は緩やかな回復ペースにとどまる可能性が高いことから、コロナ禍前の2018年や2019年の水準までの回復は先行き不透明感な状況にある。
段ボール需要の本格的な回復期は2022年と予測。その後は微増ペースで推移していくと考えられ、2025年の段ボール生産量は2020年比5.5%増の149億7,000万平米になると予測している。