「驚き」と「安心」を届ける検査機を提供 - 現場発の製品開発で価値創出
(株)ジーティービー・関本 太一 新社長に聞く
今年4月、印刷業界向け検査機を開発する(株)ジーティービー(本社/神戸市中央区)の新社長に関本太一氏が就任した。第三代の関本社長は「自分たちが主体であるという意識を持ち、現場の声を起点とした製品開発を加速したい」との意欲を示す。同社の開発方針である「驚き」と「ワクワク」を生むモノづくりの精神はそのままに、現場とその周囲にある工程や人の課題にも向き合いながら新たな価値創出を目指していく考えだ。

「当社は、創業者である松木宏が初代社長、続いて同じ創業メンバーである大西幹雄が二代目を務めてきた。今回、私は初めて創業メンバー以外から社長を引き継ぐ立場として就任した。これまでは創業者が『道を示す存在』であったのに対して、今後は我々が主体となり、自分たちの意志でアクションを起こしていく段階に入ってきたと感じている」
このように語る関本社長が就任後、まず社内に向けて掲げたのは「自分ごと化」、「学習と成長の継続」、「成果を得るためのチャレンジ」の3つのキーワードだ。「社員一人ひとりがアップデートを意識し、能動的に動いていける会社にしたいという思いを強く伝えている」と話す。
また、20名程度の規模だからこそ、風通しのよさやフラットな組織風土を生かした現場起点の開発が可能になると考えているという。
「当社は部門間の壁がなく、営業も開発も製造も、言いたいことを率直に言い合える環境にある。上司と部下の関係も柔らかく、私自身も営業上がりのため、現場の肌感覚も共有できていると感じている」
スペックではなく、実用的に「使いやすい」検査機を開発
同社の代表的な製品群には、「CorrectEye SIS(コレクトアイ シス)」や「Hallmarker(ホールマーカー)シリーズ」などがある。いずれも印刷物の刷り出しや刷版、検版作業の効率化と精度向上に寄与してきた実績を持つ製品であるが、関本社長が自社製品の特徴として強調するのは、スペックではなく、その「使われ方」にある。
「検査機の場合、解像度や処理時間など、カタログスペックでは他社とあまり差が出ない。現場の声を聞きアップデートを重ねてきたGTB独自の検査エンジン「アイマイン」の優位性にはもちろん大きな自信を持っているが、現場で本当に重要なのは『使いこなせるかどうか』であると考えている。とくに、パソコンが苦手な現場の方にも直感的に操作できることが大切である。そうでないと、いくら精度が良くても現場で定着しない」
さらに関本社長は次のような印象的なエピソードも語ってくれた。
「あるお客様から『コレクトアイ シスを入れたらヤレ紙が増えた』って言われて驚いたが、よく聞いてみると、これまではスルーしていた不良を検出できるようになったので、結果的にヤレが出るようになったということであった。それはつまり、品質を守れる仕組みが構築できたということになる。皮肉のようでいて、すごく喜んでもらえたようで、この話は今でもよく思い出す」
同社では、これまでも市場に「驚き」と「ワクワク」をもたらす製品を数多く開発してきているが、その姿勢は今後も変わることはないという。
「当社は今後も、『こんなものができたのか!』と世の中がワクワクするような製品を出していく会社であり続けたい」
印刷会社だけでなく、その周辺の課題も見据えたソリューションを開発
同社のユーザーの多くは印刷会社であるが、関本社長はさらに広い視野を持って取り組みを進めていく考えだ。
「印刷会社が直接のお客様ではあるが、その周辺にも発注する側の企業やデザイン会社、コンバーターなど、いろいろな立場の人が関わっている。そういう印刷会社のクライアント側の課題を解決することで、結果的に印刷会社の負担も減ると考えている。そのため、我々はクライアントも含めたソリューションの開発を今後も進めていきたいと考えている」
その1つの具体例となる製品が、表記事項 校正・管理クラウドサービス「emba(エンバ)」である。
「印刷物資材の企画段階から受け入れ検査まで一貫して管理・校正ができるクラウドサービス。デザインの元となる情報が正しくデザインデータに反映されているかのチェック、修正指示も全てオンライン上のクラウドアプリで完結する。さらに、初稿〜二稿〜三稿〜と検版をした上で、変遷を追いながら各権限者の承認を経て入稿まで持っていくことができる。さらに今後は、印刷側での刷り出し検査の結果もembaに登録するところまでを想定し、大きな仕組みになっていくものなので、そのような拡張も楽しみにしていただきたい」
同製品は、TOKYOPACK2024でコンセプト展示され、現在ではトライアル導入も始まっているという。関本社長は「この製品が印刷会社と、そのお客様をつなぐ大きな仕組みになっていくことを期待したい」と話す。
九印展に「CorrectEye SIS」のコンパクト版を出品
同社は5月末に福岡国際センターにおいて開催される「2025九州印刷情報産業展」に出展し、page2025でも注目を集めた印刷物刷り出し検査機「CorrectEye SIS」のコンパクト版(菊半サイズ)を実機展示。来場者の興味を集めた。

「大判のコレクトアイ シスは、現在、省力化補助金のカタログ対象製品にもなっている。サイズ以外は基本的にコンパクト版も同じなので、動作を見ていただきたい。検査機は『生産機ではないから後回し』と言われがちであるが、現場の高齢化が進む中、目視での確認はさらに難しくなってくる。若い人も集まらないという昨今の状況では、もはや検査機の導入を後回しにはできないと感じている」
「当社の検査機は、検査をするというより『現場を支える』ための存在であると思っている。人手をかけず、簡単に、正確な結果が得られる。これは、今の現場に必要な当たり前のことであってもらいたい」
印刷検査機とは、印刷物の製品の完成度を測る目であると同時に、現場の信頼を守る「盾」でもある。現場視線の製品開発を進める同社検査機の活用による印刷業界の品質管理の向上に期待したい。