第一印刷、「カーボン屋本舗」九州初披露
小ロットからの裏カーボン伝票印刷
帳票印刷の現場ではノーカーボン化が進む一方で、裏カーボン伝票の需要は一定量残っている。こうした中、(株)第一印刷(本社/静岡県浜松市中央区、大見信二社長)は、5月30・31日に福岡国際センターで開催された「2025九州印刷情報産業展」に出展し、全国対応の小ロット裏カーボン印刷サービス「カーボン屋本舗」の取り組みをアピールした。同展には2日間の会期で7,000人を超える多くの人が来場。同社ブースを目指して訪れる来場者の姿も目立った。

裏カーボン需要の「全国的な課題」に対応
同社が運営している「荷札屋本舗」では、荷札というニッチなニーズに応え、全国に顧客を持つ。そこで培ったノウハウを新たなサービスに活かし、帳票印刷の潜在的ニーズに応えたい。今回、第一印刷が「カーボン屋本舗」として出展した背景には、そうした明確な意図がある。
「裏カーボン伝票自体は確かに減っているが、まったくゼロにはなっていない。むしろ、対応できる会社が減っていることで、どこに発注すればいいのか分からないという悩みが全国で深刻化している」(大見社長)
同社はこの状況を逆にチャンスと捉え、地元での営業展開に加えて、名古屋・大阪など都市部での展示会への出展を通じて全国に向けてサービスの周知を図ってきた。今回の「2025九州印刷情報産業展」への出展は、その流れの一環となるもの。「東北の展示会も検討したが、まずは東京、その前に『荷札屋本舗』で出展した経験がある九印展で『カーボン屋本舗』をアピールしようと考えた。全国の印刷会社に『第一印刷に頼めば裏カーボン伝票は大丈夫』と思ってもらいたい」と大見社長は話す。
今回の展示会では、印刷からカーボン加工、製本、仕上げに至るまでの工程を収めた動画をブースで上映し、設備と工程のイメージを持ってもらうための工夫も行った。大見社長は「来場者は印刷会社が多いが、印刷業界にいる人でも実際の平台カーボン印刷機を見たことがない人がほとんどなので、カーボン印刷の工程をイメージできない人も多い。映像で見てもらうことで、リアルに伝えることができた」と説明する。
「見た目」の品質にまでこだわり、カッティングプロッター導入
今回の展示会では、小ロットからの裏カーボン印刷に加えて、カーボン版の仕上がりの「見た目」にも注目が集まった。同社は今春、新たにカッティングプロッターを導入。従来は手作業で行っていたカーボン版のカッティング作業において、より高精度な仕上がりを実現するための投資を行なった。
「プロッターを導入したことで、複雑な複写内容の裏カーボン印刷にも高い精度で対応が可能となった。版胴に対するカーボン版の接着面積が広がったことで、印刷位置のズレも解消された」(大見社長)
現在はカーボン印刷の精度を高めることにより、製品全体の品質も大幅に向上した。
全国共通の悩みである裏カーボン伝票を供給する救世主へ
展示会の初日、ブースは午前中の開場と同時に人であふれた。「入り口に並んでいた来場者が一気に入ってきて、カタログとサンプルを配るので精一杯になった。3,500部のカタログを用意してきたが、2日間でほとんど配りきってしまった」(大見社長)
中にはカタログだけを手にしてそのまま立ち去る来場者もいたようだが、同社ブースを目的に訪れた来場者も多くいた。「対応ができる会社がないから、引き合いを断ったばかりだとか、お願いしようとしたが探す方法がわからなかったなど、同業者が抱える悩みと当社が伝えていきたい部分が合致していることを再確認した展示会となった」(大見社長)

同社は今後も引き続き全国各地の展示会に出展し、裏カーボン伝票の発注先に困っている同業者向けにアピールしていく考えだ。
要望や指摘は品質向上のチャンスと捉え、社内全体で改善
「要望や指摘は、すべて品質向上のチャンスであると捉えている」と大見社長は話す。カッティングプロッターの導入も、顧客からの一言をきっかけに実現された改善であり、同社の柔軟で前向きな姿勢が感じられる言葉である。
実際、同社ではホームページの意見箱やメール経由で寄せられた要望もすべて社内で共有。社員全員で顧客の声を受け止め、改善していく風通しのよい体制が整っているという。「その姿勢を多くの方に評価してもらっている。一方通行で終わらせず、常にお客様との対話を続けていくことが、信頼につながると考えている」(大見社長)
同社は今後も「裏カーボン伝票は第一印刷に任せれば安心」と、顧客の信頼をさらに高めていくため、品質とサービス向上を目指していく。