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KASAMA(石川)

印刷とともに150年〜基盤強化と新たな進化へ

 (株)KASAMA(旧・笠間製本印刷)(本社/石川県白山市竹松町1905、田上裕之社長)は、今年5月1日をもって創業150周年を迎えた。同社は、この節目にともない社名を変更し、基盤事業である金融機関向けソリューションを強化するとともに、M&Aを含む新市場への参入も果たし、「200年企業」に向けた新たな一歩を踏み出している。

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田上 社長

「帳簿のカサマ」

 明治8年に金沢の地で産声をあげた「KASAMA」。創業時は、屋号「中外堂」のもとで掛軸・屏風などの表装を手掛ける表具屋を営んでいたという。その技術を買われ、近代簿記への移行を推し進める明治政府の方針のもとで石川県からの依頼を受け、商家の売買勘定を記入した元帳である「大福帳」に代わる洋式帳簿の製造を開始。昭和37年には「笠間製本印刷所」として法人化し、以来「帳簿のカサマ」として知られる存在だ。その後も帳簿の印刷製本技術を活かして、金融機関の業務に関わる通帳や証書、小切手、手形、証券などへと守備範囲を広げながら飛躍的な成長を遂げる。現在、全国約520行ある金融機関のうち、およそ310行を取引先としている。

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創業当時の様子

 この150年の社歴と伝統を受け継ぐ6代目社長の田上社長は、「社長就任から15年。まだ社歴の1/10に達したところ。この長い歴史を歩むことができたのも、お客様、協力会社様、地域の皆様、そして私たちの技術を支え続けてきた社員一人ひとりのおかげ」と、改めて感謝の意を表した上で、「創業以来変わらないもの、それは『お客様の安心と信頼が得られる製品づくり』。間違いのない製品を確実にお客様の手元に届けることを第一に考えている」と語る。

 また、これら不変の経営姿勢にもとづくESG経営の推進企業としても知られる同社。印刷産業環境優良工場表彰をはじめ、GPマーク普及大賞受賞やCSR認定など、業界に先駆けて積極的に取り組み、健康経営優良法人においては9年連続で認定を受けている。

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石川県白山市の本社外観


預金通帳製造は成長事業

 同社の基盤事業である預金通帳は、周知の通り電子化が進んでいる。これについて田上社長は、「当社のお客様は中小企業金融専門機関が多く、全国の信用金庫のおよそ6割が取引先。これら金融機関における電子化の影響は軽微である。また複雑な仕様の預金通帳は同業者でも外注する傾向にあり、当社がその受け皿になっている」と説明。実際、今期の預金通帳の受注は950万冊を超えており、10年前と比べても約125%増となっている。

 また、「手つかず状態」とも言える大手金融機関の案件もいくつか進行中で、「これらの受注獲得が進めば売上に対するインパクトは非常に大きい。生産工程の自動化を進めながら受け入れ準備も着々と進めている」(田上社長)という。

 一方、「かさまーと」ブランドによる商材特化型印刷通販事業も好調だ。とくに平成20年に開設した「クリアファイルのかさまーと」は、150年の社歴の中で育まれた「安心感」が息づく印刷通販として、仕上がり品質へのこだわりやきめ細かなサポート体制、豊富な商品ラインアップなどがプロユーザーから高く評価され、驚きのリピート率を弾き出している。

 また、令和6年には事業買収によってオリジナルTシャツのWeb通販「FunFinity Wear」を開始。初年度も順調な滑り出しで、今後の事業の柱としても期待されている。

あらゆる可能性を逃さない

 同社商材の一部である小切手と手形は2026年度末に完全電子化され、廃止になることが決まっている。田上社長は、「金融機関との継続的な取引は当社にとって大きな財産。今後は、様々な切り口で金融機関の困り事に対応していきたい」とし、なかでも、スマホコンテンツ制作システム「QLEAR(キュリア)」によるマーケティング支援は、すでに大きな実績を上げているという。

 さらに、令和3年にはノベルティ関連のBtoBビジネスを手掛けるアズスーム(株)(東京)と広告代理店業務を手掛ける(有)ホリ・プロダクツをグループ会社化し、新たなマーケットへの参画も果たしている。

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200年企業に向けて新たなスタート(2024年忘年会にて)

 これら一連の業態変革を背景に、150周年の節目に社名を「笠間製本印刷」から「KASAMA」に改称。田上社長は、「創業200周年に向けて基盤事業を固めつつ、新たな事業展開においても、あらゆる可能性を逃さないためにも社名変更に踏み切った」と説明する。「150年目のスタートライン」に立った今、「変化に対応できるKASAMA」、「挑戦し、進化し続けるKASAMA」を目指す想いを改めて強調している。

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