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躍進企業REPORT

小松印刷 綾川工場(香川):稼働効率107.7%アップ、ロス率2.3%削減

印刷ジャーナル 2019年7月25日
槇野 役員
金口 課長
A輪4ライン分のジョブを1台の「コレクトアイ シス」で検査
オペレーター全員が「コレクトアイ シス」を操作できる
A輪4ラインが稼働する綾川工場

非接触スキャナー入力印刷物検査機「コレクトアイ シス」導入
刷り出し・刷了検査に活用、朝のベタ刷りを廃止
品質保証の実施項目見直しで成果

 小松印刷(株)(本社/香川県高松市香南町由佐2100-1、小松秀敏社長)は、年間総印刷量125億枚という莫大な印刷物を、グループ企業を含め国内10生産拠点より高品質・短納期・低価格で実現する総合印刷会社。同社グループではクオリティマネジメントシステム(QMS)の実践と継続的な見直しを行うことで、グループ全体での高品質化を促進するとともに、さらなる生産稼働率の向上による高効率生産を目指している。そんな同社は2018年11月、綾川工場(香川県綾歌郡綾川町枌所東1193-23)に(株)ジーティービーの非接触スキャナー入力印刷物検査機「CorrectEye SIS(コレクトアイ シス)」を導入。今年2月から本番運用を開始し、刷り出し・刷了検査の工数削減・時短効果などによる成果が上がり、稼働効率は前年対比105%の導入前目標に対して107.7%、損紙削減や刷本のやり替えなどによるロス率は導入前目標1%に対して2.3%削減となるなど、多大な成果を上げている。

QMSの実践と継続的な見直しで、全生産拠点で高品質な印刷を推進

 小松印刷は昭和30年に設立。2018年6月期の売上高は、153億円(グループ計274億円)。従業員数は、603名(グループ計1,279名)。グループ企業を含めた国内10生産拠点には全24台のオフ輪、26台の枚葉機を設備しており、超大ロットの受注にも短納期で生産可能な生産キャパを実現するとともに、全生産拠点において同一品質の印刷が可能であるため、企画・デザインから印刷・製本、そして最終の納品までを配慮した"適地生産"が可能となっている。

 約95名が配属する綾川工場には4台のA輪を設備。これらはいずれも平行2回折り、デルタ折りやミシン入れなどの特殊折り仕様が可能で、付加価値の高いカタログやパンフレットの生産が可能となっている。また、本社工場では省力化・省人化を積極的に進めており、自動ラックや包装機などの導入により、製本・加工後の仕分けや梱包、在庫管理などを自動化している。

 また、同社では印刷現場としての取り組みとして、会社のバックアップのもと「印刷技能士1級」を37名が取得している。綾川工場では18名が取得しており、執行役員・製造本部 本部長・生産技術部 部長の槇野健夫氏は「基本的に印刷機を回す責任者になる者は取得を条件にしている」として、今後も資格取得者を増やしていく考えだ。また、綾川工場では独自の取り組みとして3種類のインキを使い分けている。槇野役員は「紙質に応じた最適なインキを使用することでより高品質な製品に仕上がるため、全印刷機に三系統の自動供給装置を設備している」としており、資材関係についても、印刷技能士1級取得者の視点から見て最適であると判断したものを使用している。

 綾川工場では、非接触スキャナー入力印刷物検査機「コレクトアイ シス」を導入する以前は、印刷前にノンブル・折り・見当・色調・版キズ・ゴミなどをオペレーターの目視検査により約20分の時間をかけてチェック。5,000通しに1回は抜き取り検査、2万通し毎のなぞらえ検査、刷了時にも10分程度のなぞらえ検査を行うなど、検査には多大な時間と労力をかけていたという。

 槇野役員は従来の検査体制について「効率が悪いことは承知であったが、そこまでが仕事のくくりであり、品質保証のためには当然のことであるとして、このやり方を長年にわたり続けてきた」と説明する。しかし、それでも人の目による検査には限界があり、印刷・製本後に問題が発覚して刷り直しが発生し、ムダな時間と損紙等による費用が発生するということもあったようだ。それでも「外部流出する前に発見することができて良かったとする認識であった」(槇野役員)という。

 しかし「もし、外部流出していたらクライアントの信用を失うことになり、失注にもつながりかねないという不安は常にあった」(槇野役員)ようで、そのような中、四国地方で開催された展示会で見つけたのが「コレクトアイ シス」であったという。槇野役員は「刷り出し時に欠陥を発見できなかった場合、そのまま最後の製本までいってしまうため、『データと刷本を比較できる』というところは非常に魅力的であった」と、初めて「コレクトアイ シス」と出会ったときの感想について振り返っている。

印刷直後の伸縮した紙でも、データと正確に比較検査が可能

 綾川工場にはA輪のほか、四六全判/菊全判など全3台の枚葉印刷機も設備している。このため槇野役員は、「コレクトアイ シスの入力サイズは四六全判に対応しており、非接触のためインキが乾いていない状態での検査が可能であるため、枚葉印刷機の検査機としては何の問題もなかった」とする一方、ただ1点のみ気になることがあったという。オフ輪で印刷直後の刷了検査では紙が乾燥の熱で縮んでおり、さらに折り出しを広げてスキャンするとは言っても折りの分、データと比較すれば部位毎に複雑に伸縮が起きている。その様なサイズの違う状態で正確に検査できるのかという点だ。

 槇野役員は「印刷直後の縮んだ紙も正確に検査できるのかをチェックするため、本紙サンプルとあえて大きさを変えたデータをショールームに持ち込んで確認したところ、絵柄の伸縮も問題なく正確に検査できていた。ジーティービー独自の検査エンジンであるという『アイマイン』により、人間の目でも捉えにくい、かなり際どい(欠点の)仕込みをした所も捉えてくれた」と、その検査精度の高さに驚いたようだ。

 メーカーのジーティービー・橋本拓也氏に確認したところ、「小松印刷様にご導入いただいた頃に輪転折出しやグラビア印刷での軟包材など、複雑な伸縮に対応するための仕組み『スマートレイアウトマッチ』を開発し搭載していた。それが誤検出の低減や、検査精度の向上に高い効果を出している」と話している。

 テストを成功裏に終え、まず綾川工場の輪転現場に「コレクトアイ シス」導入を決定。2018年11月に設備した。実運用前の設定などを担当した製造本部 生産技術部課長の金口茂昭氏が率先してオペレーターに操作方法などを指導した結果、今年1月には印刷オペレーター全員が「コレクトアイ シス」を使いこなせるようになり、今年2月から実運用を開始している。

 実運用後は、刷り出し検査の20分と刷了検査の10分の検査時間がほぼ半分の時間になり、また全員が使えるという多能工化の効果もあって段取りの良さが大幅に向上。さらに朝一のベタ刷りを廃止するなど、これまで品質保証のために実施していた工程を多数見直すことができたようだ。

 結果、導入効果として同社では1時間あたりの稼働効率前年対比105%を目標にしていたが、2月〜6月の前年対比の平均値の結果では、稼働効率107.7%になり、また損紙や刷本のやり替えなどのロス率は目標の1%削減に対して2.3%削減を達成した。この結果は、同社としても予想を大きく上回る成果だったようで、槇野役員は「将来的にはコレクトアイ シスの導入を他の生産拠点にも推奨していくことを提案したい」というほど高く評価している。また、金口課長は「何をもってクライアントに対して製品保証をするのかという時に、コレクトアイ シスを導入したことにより、具体的な製品保証ができるようになった」としており、人の作業では発生してしまう検査品質に個人差がなく、品質保証としての安心感を持つことができるようになったこともメリットとして挙げている。

各生産拠点での取り組み情報の共有と水平展開

 同社では、グループ企業を含めたQMSのさらなる実践と継続的な見直しを行い、各生産拠点で情報を共有し水平展開するため、槇野役員や各拠点リーダーが相互に各拠点に出向き、稼働効率やコスト、品質などについて、全社的に同じベクトルを持って進んでいけるような交流を行っている。

 槇野役員は「高いレベルで全生産拠点が同一スキルに到達することを目指していきたい」としており、その実現のためには「コレクトアイ シス」のような検査システムの導入は不可欠と言えそうだ。さらなる品質向上と稼働効率アップに邁進する同社グループの今後の展開に注目したい。