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富士フイルム、「もっと自由にパッケージ・オンデマンド」

パッケージ製作に新風〜幅広いデジタル印刷技術で

 パッケージ分野でも即時性やニーズの多様化にともなう小ロット多品種化が進むなか、デジタル印刷の活用が注目されつつある。そこで富士フイルムグループでは、独自開発した幅広いラインアップのデジタル印刷技術を活かし、「パッケージ・オンデマンド」の可能性を訴求している。今回、富士フイルムグラフィックソリューションズ(株)特殊印刷統括部パッケージ営業部の玉井佑季氏に、その取り組みや具体的なソリューションについて聞いた。


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玉井氏

軟包装用水性インクジェットのマイルストーン

 幅広いデジタル印刷技術を誇る富士フイルムは、2015年頃からインクジェト技術による軟包装分野への参入を果たし、新規事業として取り組んできた。当時、その出力デバイスとして発表されたのが「Jet Press 540WV」。drupa2016でも実機展示されたUVインクジェットデジタルプレスだ。

 同機は、富士フイルム独自の画像形成技術「EUCON Technology」を搭載し、インクのにじみや臭気の残留を低減。CMYK+ホワイトの5色で毎分50メートルの生産性を実現している。安全性に配慮したシステム設計で、食品包装用途にも対応し、これまでの国内納入実績10台のうち、およそ半数が食品包装分野で活用されている。

 しかし一方で、玉井氏は当時の市場環境について「いくら食品包装への適合が公的に認められていても、UVインクを使用することによる『臭気』などを含めた衛生、環境面でのネガティブなイメージは根強かった」と振り返る。

 そこで富士フイルムは、水性インクジェットデジタルプレス「Jet Press FP790」のdrupa2024での発表を皮切りに、軟包装用水性インクジェットの展開を開始。現在、国内では丸東産業(株)(福岡県小郡市干潟)で食品用スタンドパウチの印刷などで活用されているほか、海外では欧州を中心に5社・7台で成約されている。

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Jet Press FP790

 国内市場について玉井氏は「グラビアコンバーターも興味がないわけではない。ただグラビア印刷機の8〜10色機に相当する設備投資額に対して、さらなる資材適性やスピードアップといったスペックのブラッシュアップが求められている。これと並行してブランドオーナーやエンドユーザーの環境に対する意識変革も必要だと感じる。昨年の『TOKYO PACK』展や今年の『JAPAN PACK』展でも、その訴求に注力してきた」と説明する。

 「Jet Press FP790」を2台導入している海外ユーザーはラミネートを手掛ける企業。外注していた印刷を内製化し、それぞれOPPとPETの専用機として運用しているという。「3,000〜4,000メートルのロットが多いことから、版替え作業を考えるとデジタルプレスの方が効率が良いというのが採用のポイント」(玉井氏)

 一方、国内ユーザーである丸東産業では、およそ9割が食品包装のジョブ。福岡という地域柄、海苔やお茶、サプリメントといった小ロット多品種のジョブで稼働している。「裏面の表示だけを変えるといった可変印刷のジョブでも機能している」(玉井氏)

 軟包装分野の小ロット化が進むなか、欧州でも食品包装は水性フレキソが主流なため、やはり水性インクジェットへの興味は高い。「今後、日本でもグラビア印刷のジョブの小ロット化がさらに進み、環境対応の必要性が高まれば、Jet Press FP790の需要は伸びていくと確信している」(玉井氏)

 「Jet Press FP790」の機械的な特徴は、フィルムが機械上で渦巻き状に巻かれる構造のため、熱乾燥ユニットが短く、省スペース設計となっている点が挙げられる。しかし、最大の特徴は、インクの開発をグループ内で行い、ユーザーの生の声を開発、製品に直結できる点にある。化学メーカーとして材料に強みを持ち、水性インクゆえにポイントとなる「乾燥」についてもインク側からアプローチできる。

 「丸東産業様には、国内メーカーとしての安心感、今後の開発力も含めて採用を決めていただいた。今後も軟包装用水性インクジェットのマイルストーンを明確に提示し、とくにボイルやレトルトといった熱処理にも強いインクおよびプライマーの開発、80メートル/分への高速化、原紙の幅広化に向けた開発を進めていく」(玉井氏)

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規格袋の印刷サンプル(FP790)