稼働効率107.7%アップ、ロス率2.3%削減
非接触スキャナー入力印刷物検査機「コレクトアイ シス」導入
刷り出し・刷了検査に活用、朝のベタ刷りを廃止
品質保証の実施項目見直しで成果
印刷直後の伸縮した紙でも、データと正確に比較検査が可能
綾川工場にはA輪のほか、四六全判/菊全判など全3台の枚葉印刷機も設備している。このため槇野役員は、「コレクトアイ シスの入力サイズは四六全判に対応しており、非接触のためインキが乾いていない状態での検査が可能であるため、枚葉印刷機の検査機としては何の問題もなかった」とする一方、ただ1点のみ気になることがあったという。オフ輪で印刷直後の刷了検査では紙が乾燥の熱で縮んでおり、さらに折り出しを広げてスキャンするとは言っても折りの分、データと比較すれば部位毎に複雑に伸縮が起きている。その様なサイズの違う状態で正確に検査できるのかという点だ。


槇野役員は「印刷直後の縮んだ紙も正確に検査できるのかをチェックするため、本紙サンプルとあえて大きさを変えたデータをショールームに持ち込んで確認したところ、絵柄の伸縮も問題なく正確に検査できていた。ジーティービー独自の検査エンジンであるという『アイマイン』により、人間の目でも捉えにくい、かなり際どい(欠点の)仕込みをした所も捉えてくれた」と、その検査精度の高さに驚いたようだ。
メーカーのジーティービー・橋本拓也氏に確認したところ、「小松印刷様にご導入いただいた頃に輪転折出しやグラビア印刷での軟包材など、複雑な伸縮に対応するための仕組み『スマートレイアウトマッチ』を開発し搭載していた。それが誤検出の低減や、検査精度の向上に高い効果を出している」と話している。
テストを成功裏に終え、まず綾川工場の輪転現場に「コレクトアイ シス」導入を決定。2018年11月に設備した。実運用前の設定などを担当した製造本部 生産技術部課長の金口茂昭氏が率先してオペレーターに操作方法などを指導した結果、今年1月には印刷オペレーター全員が「コレクトアイ シス」を使いこなせるようになり、今年2月から実運用を開始している。

実運用後は、刷り出し検査の20分と刷了検査の10分の検査時間がほぼ半分の時間になり、また全員が使えるという多能工化の効果もあって段取りの良さが大幅に向上。さらに朝一のベタ刷りを廃止するなど、これまで品質保証のために実施していた工程を多数見直すことができたようだ。
結果、導入効果として同社では1時間あたりの稼働効率前年対比105%を目標にしていたが、2月〜6月の前年対比の平均値の結果では、稼働効率107.7%になり、また損紙や刷本のやり替えなどのロス率は目標の1%削減に対して2.3%削減を達成した。この結果は、同社としても予想を大きく上回る成果だったようで、槇野役員は「将来的にはコレクトアイ シスの導入を他の生産拠点にも推奨していくことを提案したい」というほど高く評価している。また、金口課長は「何をもってクライアントに対して製品保証をするのかという時に、コレクトアイ シスを導入したことにより、具体的な製品保証ができるようになった」としており、人の作業では発生してしまう検査品質に個人差がなく、品質保証としての安心感を持つことができるようになったこともメリットとして挙げている。
各生産拠点での取り組み情報の共有と水平展開
同社では、グループ企業を含めたQMSのさらなる実践と継続的な見直しを行い、各生産拠点で情報を共有し水平展開するため、槇野役員や各拠点リーダーが相互に各拠点に出向き、稼働効率やコスト、品質などについて、全社的に同じベクトルを持って進んでいけるような交流を行っている。
槇野役員は「高いレベルで全生産拠点が同一スキルに到達することを目指していきたい」としており、その実現のためには「コレクトアイ シス」のような検査システムの導入は不可欠と言えそうだ。さらなる品質向上と稼働効率アップに邁進する同社グループの今後の展開に注目したい。