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富士フイルム、Jet Pressの基幹部品を提供[Samba JPC]

2020年10月6日

短期間でIJ機開発 〜 高精細プリンタ開発の知見底上げへ

 富士フイルム(株)(助野健児社長)では、商業印刷やパッケージ印刷向け産業用シングルパスインクジェット印刷装置の製品化に必要な基幹部品やソフトウェアなどのインクジェットコンポーネントを「Samba JPC」として商品化し、印刷機メーカーやインクジェット印刷装置のインテグレーター向けに昨年11月から販売を開始している。これは同社インクジェットデジタルプレス「Jet Press750S」の基幹部品を提供するもので、ユーザーは高画質で信頼性の高いインクジェット印刷装置を短期間で開発できるようになる。

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ターゲットに合わせてプリントバー幅やスピード、インクを最適化


プリンタ開発に求められる「スピード感」

 インクジェット印刷技術の活用領域は、商業印刷、紙器、段ボール、ラベル印刷に加え、食品パッケージなどの軟包装にも広がりをみせ、インクジェットプリンタに対しては画質や生産性といった機能向上が求められている。これら要求に呼応する形でインクジェット印刷技術は著しい進化を遂げているが、そのプリンタ開発においては瞬発力やスピード感が求められる。

 しかし一方では、その中核を成すインクジェットヘッドをはじめとした印刷ユニットの開発には高レベルでの知見とノウハウの積み重ねが必要である。これら開発スケジュールにおける時間的な制約を解消し、高精細なシングルパスインクジェットプリンタを短期間で開発できる環境を提供するのが「Samba JPC」である。

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福井マネージャー(右)と赤木氏



 富士フイルムが世界で180台以上の稼働実績を誇るインクジェットデジタルプレス「Jet Press」の開発から得た技術や独自部品・ソフトウェアを切り出し、ユニットとして製品化したもの。事業化のきっかけについて、JetPressの開発に10年間携わり、現在、Samba JPCの商品化責任者をつとめる富士フイルム インクジェット事業部の福井隆史マネージャーは、「解像度が高ければ高いほど、開発項目数およびそのレベルのハードルは高まることをJetPressの開発で実感した。この知見とノウハウを『門外不出』にするのではなく、『インクジェット分野の普及に役立てるべきだ』と考えた」と説明する。

 インクジェット技術は、その用途が変わればインクや搬送、ソフトなど様々な部分で新規要素開発が必要になるが、印字ユニットに限っては設計の方向性が限定されているという。マーケティングを担当する同社インクジェット事業部の赤木耕平氏は、Samba JPC事業化の狙いについて、「設計の方向性が限られる印字ユニットは当製品を開発リソースとして活用することで各社重複する開発負担を軽減し、用途によって開発内容が大きく異なる他要素に資源を集中してもらうことで、インクジェット技術の用途展開を支援することにある」と説明している。

 Samba JPCで提供されるJet Pressの基幹部品は、産業用インクジェットヘッドのリーディングカンパニーである米国のFUJIFILM Dimatix社製の1,200dpi、MEMSによる高精細プリントヘッド「Samba」を組み込んだプリントバー、画像処理ソフトウェア、ヘッドクリーナーなど9つの主要コンポーネントから構成される。

 プリントバーは10インチ(約25センチ)と30インチ(約76センチ)の印刷幅2種類を用意し、さらに用途に合わせた印刷幅にカスタマイズも可能である。また、ユーザーの要望に応じて、Samba JPCを同社製インクと組み合わせて提供することや、9つのユニットを単品から提供することも可能である。

フレキシブルな設計が可能

 Samba JPCには、事業や環境に応じて、(1)コンポーネントのみの提供(2)コンポーネントを組み合わせてプリントシステムとして提供する─という2つのモデルがある。

 (1)は、高解像度プリンタの開発を検討するプリンタメーカー、インテグレータ、周辺装置メーカーが提案先となり、(2)は、自社設備に独自のインクジェットシステム導入を検討している印刷会社、コンバーター、ブランドオーナーなどがターゲットになる。同社ではマーケティングの結果、現在②の潜在需要に着目し、なかでも現有の生産ラインや設備へのインクジェットエンジンの組み込み(インライン対応)による追刷り用途の事例が多いという。

 例えば、ドイツのCadis Engineering社(インテグレーター)とBurda社(出版社)の協業による「雑誌向けインライン(後加工ライン)水性インクジェット追刷りシステム」がある。これは、グラビアで印刷する月間数百万部のフリーペーパーの裏表紙をバリアブル広告として付加価値化する取り組みから生まれたシステム。印字スピードや幅、前後のシステム連携において既存システムでは対応できなかったことからSamba JPCによるカスタマイズプリンタを後加工ラインに組み込み、前後設備との自動連携をはかりながら1万部/時で雑誌にバリアブルで追刷りする専用システムだ。

 一方、国内でテスト運用を開始した軟包装の事例「野菜包装向け白グラビア+水性インクジェット追刷りシステム」では、定型デザインや白地はグラビアで印刷し、野菜の生産者の顔写真やレシピなどの一部デザインをインクジェットでバリアブル追刷りする。この事例では、富士フイルムの食品安全対応インクジェットインクやにじみ防止特殊白インキを採用しているのが特徴である。

 さらに、まだ企画段階ではあるが、「食品・飲料パッケージ用 狭幅インクジェット追刷りシステム」の検証も進められているという。

 これらSamba JPCを活用したカスタマイズインクジェットシステムの特徴としては、まず、「高画質、シャープな文字再現」が挙げられる。とくに、600dpiでは滲んでしまうような4ポイントの文字も高解像度ヘッド「Samba」ならばその再現性の違いは明らかだ。

 次に「カスタマイズ性」。プリントバー長、スピード、インク種、色数など、フレキシブルな選択が可能で、とくにインク種については、富士フイルムオリジナル以外にも他社製インクの採用も可能で制約がない。

 最後は、やはり「Jet Press開発に基づく信頼性」、いわゆる「Sambaブランド」だ。Jet Press開発メンバーがシステム設計・開発を手掛け、サポートにおいても国内は富士フイルムインクジェット事業部とJetPress開発メンバーが担当。海外でのサポートはFUJIFILM Dimatix社のエンジニアが担当している。

情報提供サイトで開発者支援

 富士フイルムでは今年5月、高解像度インクジェット開発を支援する情報サイト「INKJET ACCELERATOR」(https://inkjet-accelerator.fujifilm.com)を立ち上げ、製品情報をはじめ、プリンタ開発のポイントやトラブル事例などのコンテンツを公開している。

 赤木氏は、「印字ユニットの開発の道のりは非常に困難を要する。しかし、それがあまり理解されていない現状がある。そんな開発者向けにコンテンツサイトを開設した。プリンタ開発の難しさにおける何らかの気付き、問題にぶち当たったときの解決の糸口を掴んでいただくなど、開発者の補助ツールとして活用いただき、結果としてSambaに興味を持つきっかけ、プロモーションになればと考えている」とし、活用を促している。

 また、福井氏は「プリンタ開発には、予想もしなかった問題が多々発生する。その現実を正しく理解してもらうとともに、高品質なシングルパスプリンタ開発の知見の底上げになれば幸い」と話す。

 今後は、コンテンツをさらに充実させていくとともに、インテグレーションに関する情報もアップしていく方針だ。

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