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【寄稿】いけうち、「環境管理」こそが自動化のラストワンマイル

人手不足時代に選ばれる、濡れない霧による「攻め」の加湿戦略

はじめに:自動化を阻む「見えない壁」

 印刷業界を取り巻く環境は、かつてないほどの激流の中にある。原材料費の高騰、慢性的な人手不足、そして働き方改革への対応。これらの課題を解決するため、多くの現場で印刷機の自動化や省力化への投資が加速している。最新の検査装置やロボットの導入は確かに生産性を向上させるが、それだけでは埋められない「ラストワンマイル」が存在する。それが「湿度環境」という見えない変数である。

 高価な自動機を導入しても、用紙が静電気で張り付いて二枚送りになったり、乾燥による紙の伸縮で見当ズレが起きたりすれば、結局は熟練オペレータが機械につきっきりで微調整を行わなければならない。これでは本末転倒である。本稿では、自動化の効果を最大化し、かつエネルギーコストを劇的に削減する「産業空調としての加湿」について、最新のトレンドを交えて解説する。

なぜ冬場の工場は「乾燥」するのか----絶対湿度の罠

 「湿度計は50%を指しているのに、静電気が収まらない」。冬場の現場からよく聞かれる声だ。日本の冬は外気の水分量が極端に少ない。この乾燥した外気を工場内に取り込み、暖房で温度を上げると、空気中に含むことができる水分の最大量(飽和水蒸気量)が増えるため、相対湿度は劇的に低下する。

 ここで重要になるのが「絶対湿度(空気1kgあたりに含まれる水分の重量)」という指標だ。例えば、気温10℃で湿度50%の空気を、暖房で24℃まで温めると、相対湿度は20%程度まで下がってしまう。品質管理において重要なのは、この低下した相対湿度を補うために、不足している水分量(絶対湿度)を正確に計算し、物理的に供給すること、つまり「加湿」である。

 静電気によるトラブル(フィーダー部での二枚送り、デリバリ部での紙揃え不良)や、用紙の「反り」による廃棄ロスは、この物理的な水分不足が主因だ。特に平判用紙は、低湿度環境で開封した瞬間に環境になじもうとして水分を放出し、反りが発生する。一度反ってしまった紙を修正しながら裏面を刷る手間は、現場にとって甚大なロスとなる。

「脱蒸気」の課題と、濡れない「ドライフォグ」という回答

 これまで、品質に厳しい印刷現場の多くでは、ボイラー蒸気による加湿が採用されてきた。蒸気は気体であるため、機械や用紙を濡らすリスクがなく、その点においては非常に優れた方式であったからだ。しかし昨今、エネルギーコスト(重油やガス代)の高騰や、企業としての脱炭素(CO2削減)への社会的要請を受け、多くの現場が「蒸気ボイラーからの脱却」を迫られている。

 コスト削減のために蒸気から「水加湿」への切り替えを検討する際、最大の懸念事項となるのが「水濡れ」である。一般的なスプレーノズルでは粒子が粗く、機械の錆や製品の汚れを引き起こしてしまうため、印刷現場では使い物にならなかった。この「蒸気を止めたいが、濡れるのは困る」というジレンマを解決するのが、当社が約40年にわたり改良を重ねてきた「ドライフォグ」技術である。

 当社の二流体加湿システムから噴霧される霧は、水でありながら極めて微細で、空気中ですばやく気化する特性を持つ。そのため、蒸気加湿と同様に「濡れない」環境を維持したまま、エネルギー源を水とエア(または水のみ)に切り替えることが可能だ。現在はコンプレッサーエアさえも使用しない「セミドライフォグ(一流体加湿)」もラインナップしており、現場のレイアウトや天井高さに応じてこれらを組み合わせる「ハイブリッド加湿」によって、濡れリスクを排除しつつ、ランニングコストと環境負荷を劇的に低減させる提案を行っている。

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一流体加湿

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二流体加湿

脱炭素とコスト削減の両立----蒸気式からの転換

 経営視点で見た際、加湿方式の選定はランニングコストと環境負荷に直結する重大事項である。従来、ボイラー蒸気による加湿が多く採用されてきたが、燃料費高騰とCO2排出削減(SDGs)の観点から、その見直しが急務となっている。

 当社が実施した試算(年間3,000時間稼働)によると、従来の蒸気加湿にかかるランニングコストと比較して、水を直接微細霧にする当社の「水加湿」方式は圧倒的な低コストを実現する。

 具体的には、蒸気加湿のランニングコストが約347万円かかる条件において、二流体加湿(ドライフォグ)であれば約162万円と半減以下に、さらにコンプレッサーエアを使わない一流体加湿(セミドライフォグ)であれば約35万円と、約10分の1までコストを圧縮できる可能性がある。蒸気ボイラーの使用を減らすことは、そのまま工場のCO2排出量削減(Scope1)に直結するため、環境経営の指標としても非常に効果的だ。

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「健康経営」という新たな付加価値

 最後に、湿度管理が見過ごされがちなもう一つのメリットに触れたい。「従業員の健康管理」だ。適度な湿度(50%RH前後)を保つことは、インフルエンザウイルス等の浮遊を抑制し、冬場の風邪蔓延を防ぐ効果がある。熟練オペレータや作業員が体調不良で欠勤することは、人手不足の現場において生産計画を狂わせる最大のリスクである。製品品質のために導入した加湿システムが、結果として働く人の健康を守り、安定稼働に寄与する----これこそが現代の工場に求められる「健康経営」の在り方ではないだろうか。

結びにかえて

 (株)いけうちは、単にノズルを売るのではなく、現場ごとの「最適な霧」を設計・提案するエンジニアリング企業である。百聞は一見に如かず。現在、全国6都市(山形、仙台、東京、名古屋、大阪、福岡)にて、実際にこの「濡れない霧」を体感いただける「デモ体験会」を開催している。次回は2026年2月の実施を予定している。

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空調デモ体験会

 紙の伸縮、静電気トラブル、そして蒸気ボイラー停止によるコスト削減にお悩みの皆様は、ぜひ一度お問い合わせいただきたい。

 問い合わせ・申し込みは、webもしくは
電話0120-997-084(お客さま窓口)にて。