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ダックエンジニアリング、生産ラインを止めない「攻めの保守」

「リモートドクター」で迅速・正確にサポート

 検査機が壊れれば生産ラインは止まる―。印刷現場において、今や検査機は不可欠な存在。しかし、検査機の性能は外からは見えず、知らぬ間に精度が落ち、クレームにつながる危険を孕んでいるのも事実だ。このような中、ダックエンジニアリング(株)(本社/京都市南区)は、こうした見えないリスクを断ち切るため、「壊れてから直す」のではなく、「止めないために守る」攻めの保守でユーザーの安心を支えている。そのために同社が定期点検を受けることと同時に推奨しているのが、遠隔支援システム「リモートドクター」の活用だ。電話では伝わらない不具合も、同じ画面を共有して即座に対応できるなど、現場の生産を止めないシステムとしてユーザーに大きなメリットを提供している。

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氷上会長(左)と高橋課長


検査機は「見た目で劣化がわからない」。このため保守は「大前提」

 今や印刷生産ラインの「最後の砦」となっている検査機。しかし、誕生当初の評価は高いものではなく、同社の氷上好孝会長は「当社が検査機を始めた約36年前は、カメラの性能が人間の目より遅く、検査機は生産に寄与しないと考えられていた」と振り返る。

 そんな状況が変化したのは、検査速度が人間の目を超えた瞬間だ。カメラの性能とDACの画像処理技術の進歩により検査装置は不良を確実に見抜く「生産に欠かせない装置」となった。「検査機が止まると、何億円もする印刷機の生産ラインが止まってしまう。検査機は印刷機ほど高価ではないが、その停止は致命的なものとなる」と氷上会長は警鐘を鳴らす。

 しかし、検査装置は印刷機のように「見た目で劣化が分かる」ものではなく、外観上の変化がほとんどないため、正しく動いているかの判断が難しい。「電源が入っているから大丈夫などと思われがちだが、照明が劣化していたり、カメラの精度が落ちていたり、気づかぬうちに不良を見逃すことがある」と氷上会長は説明し、それを未然に防ぐには定期点検を受けることは大前提であることを強調する。「検査機に保守は不可欠」。氷上会長は取材中、この言葉を何回も繰り返した。

 印刷会社は通常、検査装置を導入した当初の性能を基準にクライアントとの品質契約を結んでいる。つまり「10年後も同じ精度の印刷物を納める」責任を負っているわけである。この「大前提」を支えるのが、定期的な保守・メンテナンスになる。検査機を導入したままの状態で放置すれば、やがて精度は低下し、品質トラブルの火種となる。氷上会長は「検査機に保守は絶対につきもの。保守なくして検査機はあり得ない」と強調する。

 品質管理責任者の高橋光直課長は、「検査装置の真価は、トラブルを未然に防ぎ、顧客の信頼を止めないことである」と強調している。新機能の追加や速度の向上も重要な要素であるが、導入後に得られる「安心感」こそが、同社の検査装置が長年にわたり信頼を集めてきた理由の1つであることは間違いない。

迅速なサポートを実現する「リモートドクター」で24時間以内に初動

 同社が掲げる「止めないための保守」は、故障を前提にした受け身の対応ではなく、トラブルの芽を事前に摘み取る攻めの保守と言える。そしてその象徴となるのが、数年前に開発した遠隔サポートシステム「リモートドクター」である。

 同システムは、検査装置の画面をダックエンジニアリング側でリアルタイムに共有し、ユーザー企業のオペレーターが見ているものと同じ画面を通じて原因を特定、場合によっては遠隔操作で対応できるものだ。

 「同じ画面を見ながら『そこではなく、ここです』など即座に示せるため、誤解や伝達ミスがなくなり、問題の切り分けが非常に早くなった」と高橋課長は説明する。以前は電話でのやり取りに頼るしかなく、聞き間違いや説明の齟齬が発生し、結果として訪問までに数時間から半日を要することもあったが、「リモートドクター」によって、こうしたロスはほぼ解消された。画面越しに操作ミスを確認し、その場で修正することで、訪問せずに数分で復旧するケースもあるという。

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導入から1年間は完全無料でリモートドクターを利用できる

 印刷現場で扱うデータの機密性を考慮し、LTE回線によるセキュアな通信網を採用しているため、機密情報の漏洩などのリスクも回避。一般的なインターネット回線とは完全に分離されているため、印刷物や生産データが外部に漏れる心配も不要だ。「印刷業界は発表前のデザインや情報を扱うため、通信の安全性が絶対条件である。しかしリモートドクターは閉域網にしているため、安心して使っていただくことができる」と氷上会長は説明する。

 導入から1年間は完全無料で、その後は通信費込みの有償サービスとして提供しているが、検査機停止による生産損失を考えれば、その価値は計り知れない。

 「お客様が我々と電話でやり取りしている間は、印刷機の生産は止まっている。その時間的ロスをいかに短縮できるかが重要である。リモートドクターなら即座に判断でき、場合によっては訪問せずに5分で解決できることもある。生産ラインの稼働を止めないという意味では、圧倒的なメリットがある」と高橋課長は強調する。

 保守・メンテナンスにおいては、スピードと確実性が要になることは言うまでもないが、同社では「連絡を受けてから24時間以内に返答する」ことをルールとして徹底している。平日の対応に加えて、土曜日も技術担当者を常駐させて電話を受け付け、月曜日の朝一で先方に連絡を入れるなど、迅速な初期対応を実施している。さらに24時間稼働の工場に対しては、予備パーツの保有を提案し、現地対応が必要な場合でも即時復旧を可能にしている。

 さらに「リモートドクター」を活用すれば、仮にその場での解決に至らなかった場合でも、初期診断で問題箇所を特定できるため、技術者が現地に向かう際も必要な部品を事前に準備でき、再訪問の手間を省ける。

 高橋課長は「一次対応で『どこが悪いか』をリモートドクターで絞り込める。このため、訪問時の準備が正確で、1回で確実にメンテナンスすることができる」と、効率的なメンテナンス対応が可能になることを強調している。

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