芳野YMマシナリー、冊本の「折れ込み」検出する検査装置を開発
断裁面検査装置「surface I」--レーザーラインを断裁面に照射
製本工程でしばしば発生する「折れ込み」。主に折機や丁合の工程で生じるものだが、発覚すれば即NGとなるため、多くの製本現場では断裁後にオペレーターが目視で確認している。これを自動化するため、芳野YMマシナリー(株)(本社/埼玉県戸田市美女木、島崎啓一社長)は今年10月、断裁面検査装置「surface i(サーフェス アイ)」を開発した。カメラではなくレーザーラインを断裁面に照射することで、印刷済みの冊本でも柄や波打ちの影響を受けず、1枚の折れ込み0.14mmでも安定して検出する。従来になかった次世代検査装置として注目されそうだ。

製本現場で長年にわたり課題となってきた「折れ込み」。丁合や折りの工程で一部の紙が中に折れ込んでしまう現象であり、多くの現場では、三方断裁後にオペレーターが目視で確認しているのが実情である。
近年、カメラを使用して折れ込みの自動検査を行う装置も登場しているが、同社・取締役技術本部長の渡邉一海氏は「カメラだと、白紙の状態なら折れ込みが判別できるが、印刷された冊本、とくにコミックのように柄があるものでは、黒い柄と折れ込みの区別がつきにくい」と説明する。
さらに、カメラで正確に撮像するには、積まれた冊本をぴったりと揃える必要があるという。三方断裁後はどうしても冊本が崩れてしまうため、揃える機構のためのスペースが必要になり、装置レイアウトの変更が余儀なくされる。「このコストや手間を考えると、導入には結びつかない」と渡邉技術本部長は指摘する。
3Dデータで「高さ」を検出〜柄の影響を受けない新方式
同社が新開発した「surface i」は、従来の2Dカメラではなく、三次元で高さ情報を取得するレーザースキャン方式を採用している。冊本の天および地側に縦方向のレーザーラインを照射し、センサーが斜め上からその反射を撮影。レーザー光の変位をもとに、冊本表面の高さデータを三次元で生成する仕組みだ。

渡邉技術本部長は「センサーから本までの距離をスキャンして3Dデータを取得しており、その中で突出や凹みがある部分を『折れ込み』と判断する。距離情報を基準にしているため、柄の有無に関係なく検出できる」と説明する。
この高さ検出方式により、印刷済みの冊本でも黒や濃色の柄に影響されることなく、正確な判定が可能となった。視覚情報ではなく「高さ情報」としてデータ化することで、これまで識別が難しかった折れ込みを安定して捉えられるようになっている。
わずか0.14mmの1枚の「折れ込み」でも確実に検出
「surface i」の最大の強みは、極めて高い検出精度にある。光切断三次元プロファイルセンサを採用し、最大計測高さ140mm・解像度46ミクロン(0.046mm)という高精度スキャンを実現。これにより、わずか0.14mmの1枚の紙が折れ込んでいるだけでも、安定して検出できる性能を備える。
また、冊本が多少斜めに積まれていても誤検出せず、折れ込みのみを正確に抽出できるため、検査のために本を整え直す必要がない。渡邉技術本部長は「三方断裁後は本が崩れやすいが、そのままでも検査が通る。製本ラインの流れを止めることなく検査できるメリットは大きい」と話す。
さらに、セット替えも容易で「積まれた冊本それぞれの表面情報を基準に、突出したヘコミを折れ込みと検出するため、サイズや厚み、冊数が変わっても設定変更は基本的に不要」と渡邉技術本部長は説明する。紙グセなどによる波打ち隙間を抑制するため、「抑えコロユニット」を調整するだけでセット替えが行える。
NGのみをプッシャーで自動排出
「surface i」は、省スペース設計も大きな特長だ。センサーと制御装置のみで構成する基本ユニットの場合、設置スペースをほとんど必要とせず、既存ラインにも後付けできる。渡邉氏は「限られた現場スペースでも導入できるよう設計しており、排出装置を付けなくても検査だけならセンサー2台で対応できる」と説明する。
一方、検査後の不良冊本を確実に取り除くためには、自動排出ユニットとの組み合わせが有効だ。渡邉技術本部長は「折れ込みトラブルは意外に多い。ブザーで知らせるだけではNG本を取り逃がすこともある。排出装置を組み合わせることにより、確実に不良を排出できる」と強調する。

価格はセンサー+制御装置で約1,200万円、排出装置付きで約1,500万円。処理スピードは1分間に45冊と、実ラインでも十分な処理スピードを確保している。
人手不足を解決し、コスト削減、品質向上に貢献する検査装置
国内外の営業を統括する伊藤英一執行役員営業部長は「人手不足が深刻化する中、品質検査を人に頼るのには限界がある。コストを抑えて生産性を高めるには自動化が不可欠。『surface i』は、その現場ニーズに応える装置である」と今後の販売に自信を見せる。
初年度の国内販売目標は30台とのことで、すでに他メーカーの製本ラインユーザーからも引き合いが寄せられているようだ。今後は後付け導入や製本ラインとの連携提案なども進めていく。
品質要求が高まり続ける一方で、人材確保が難しくなる製本業界。そのような中、「surface i」は、現場の「目」を代替する新たな標準機として、存在感を高めていきそうだ。











































