文唱堂印刷、想像力と特殊紙に印刷技術を融合〜価値共創でIPA2025に入賞
印刷技術で紙の魅力発信
新たな価値創造への挑戦
文唱堂印刷は1927年の創業で2026年に99周年を迎える老舗の総合印刷会社。戦時下の1941年には、東京大空襲により全工場が焼失するも翌年には本社工場を再建し、事業を再開。その後、事業の拡大を積極的に推し進め、1964年には、新本社工場が竣工するとともに、同年開催された東京オリンピックのプログラムを受注するなど市場の成長とともに信頼される印刷会社へと成長していった。現在では、オフセット輪転機から枚葉印刷機、デジタル印刷機をはじめとした各種印刷機、各種後加工機器を設置し、企画・制作、印刷・加工、納品・管理までのワンストップフルサービスに対応している。
その同社が今回、IPA2025 APJで入賞を果たした「ホログラムポスター」は、アルミ蒸着紙と出力機であるPC1120の特殊トナー印刷を組み合わせた虹色の輝きが特徴的な作品。オンデマンド印刷の特性を活かし、小ロットでの印刷と安定した品質を実現。推しグッズやアート複製などの多様な用途に応え、素材特性と印刷技術が融合した新たな表現を実現している。
それぞれの「良さ」を活かした作品制作
この作品の制作背景について越後氏は、次のように説明する。
「若い優れたデザイナーから自身の作品をカタチにして付加価値を高めたいという相談を受けた。同時期に製紙メーカーから新しいマテリアルとしてメタリック調特殊紙の提案を受けた。そこで斬新なアイデアを持つデザイナーの感性と新たな特殊紙による今までにない付加価値化、そして当社の印刷技術を融合することで新たな価値を創造できると確信した」

この企画は、すぐにスタートし、デザイナーによるプレゼン、使用する特殊紙の選択など順調に進んでいったという。しかし、実際に印刷を行ってみると苦戦の連続だったという。
使用する用紙は、五条製紙のメタリック調特殊紙「SPECIALITIES」の中からホログラム紙とアルミ蒸着転写紙を選択。2種の用紙は、ともにアルミ調の用紙のため、メーカーのエンジニアにも協力を仰いでプリンター本体に影響がでないよう細心の注意を払いながらテスト印刷を敢行。同社のオペレータとエンジニアの双方が確認を行いながら微細な調整を重ね、仕上げていったという。また、印刷にはCMYKに加え、特殊トナーのホワイトを使用している。
稲垣氏は「CMYKとの掛け合わせの表現としてホワイトを使用したほか、ホログラム調の用紙を使用していたので、ホワイトでホログラムを隠蔽するという逆転の発想のような演出も加えている」と用紙とプリンターの特性を最大限に活かす工夫を加えたことで、ホログラムによる視覚的効果を盛り込みながらもあえてその効果を隠し、デザインの持つ表現力を際立たせることができたと振り返る。

完成した作品についてデザイナーからは、自身の作品が特殊紙と最新の印刷技術を掛け合わせることで、今まで見たこともない感動を与えることのできる作品として仕上げてもらうことができたと評価する意見を得ている。
また、製紙メーカーからは「提供した用紙は、パッケージ用途はもちろん、今回のようなきらびやかなグラフィックポスターにも最適となっている。今回の入賞で当社の特殊紙の魅力とオンデマンド印刷の新たな可能性を改めて実感する機会となった」との好意的な意見が寄せられた。
新たな高付加価値印刷で世界に挑戦
IPAへのエントリーは、今回が初めてとなる同社。なぜエントリーを決断したのか。その点について越後氏は「弊社の代表からのトップダウンの方針として新規事業の模索、進出が我々のミッションとなっていた。そこで『推し活』を新たなビジネスとして確立できないかと検討を開始した。加えて誰もが持っている汎用的なものではなく、世界に1つしかない独自性のある高付加価値商品の提供を目指していくことが重要であると考えた。その取り組みを具現化した作品が今回のホログラムポスターである。その作品を国際的なアワードに出品し、どのような感想や評価がでてくるのかを試す意味もありエントリーを決断した」と説明。その上で越後氏は、「IPAへの出品は、印刷会社が制作した優れた作品を世界中の印刷会社に見てもらうことで、出品各社が相互に新たな価値表現を共有できる。その結果、業界全体の活性化につながり、さらには自社の成長にもつながっていくと思う。今回、入賞できたことは当社の財産であり、当社の進むべき方向性に間違いがないことを証明する機会にもなった」と改めてIPAに出品した意義について強調した。
また、稲垣氏は「推し活ビジネスに向けての自信になった。また、デザイナーなど多くのアーティストの方々に当社が提供する高付加価値印刷の取り組みを認識してもらうことで、さらに素晴らしい作品と出会うきっかけになる。その新たな出会いは、新たな価値創造につながっていくと思う」と、今回の入賞作品を通じた新たな出会い、新たな価値の創造に期待していることを明らかにした。
同社では、今回入賞したホログラムポスターを基軸とした新規ビジネスの創出と新規顧客の開拓に取り組んでいくという。さらに同社では、次回のIPAに向け、作品制作の協議を開始していく予定だ。
今後の取り組みについて越後氏は「IPA2025での入賞実績を積極的にPRすることで新規需要の獲得につなげていきたい。また、情報収集力を高め、新しいものがあれば試してみる、その上で顧客と協創することで付加価値を創出し、顧客のビジネスに貢献できればと考えている」と語る。
稲垣氏は、「クリエイティブ分野の専門知識を有していない若手スタッフから企画やアイデアを募り、新たなものづくりに挑戦していきたい。クリエーターでなくても、新しい価値を生み出すことができるということを若い世代のスタッフに実感してもらうことは、当社の成長に貢献し、顧客への新たな価値提供にもつながっていく」とチャレンジを継続していくことで自社の発展、そして顧客への価値提供につながっていくと述べている。
顧客から求められる企業へ
同社は、(一社)日本印刷産業連合会(日印産連)主催の「第15回印刷産業環境優良工場表彰」において、最上位賞である経済産業大臣賞を受賞。また同じく日印産連が制定する環境配慮印刷のステータスである「GPマーク」においても最上位ステータスである「スリースター」を認証取得している。加えて全日本印刷工業組合連合会(全印工連)が制定した「全印工連CSR認定制度」においても最上位ステータスである「スリースター」を認証取得するなど、環境保全だけでなくコンプライアンスや社会貢献などSDGsに準ずる取り組みを実践し、顧客をはじめとするステークホルダーとの良好な関係を構築してきた。
その経験を活かし同社では、企業のSDGsへの取り組みを支援するコンサルティング業務にも着手している。











































