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視点の行方

国内の環境価値市場~2050年度には4倍に成長へ

印刷ジャーナル 2024年10月25日

 (株)矢野経済研究所は、カーボンニュートラルに向けた国内の環境価値(炭素削減価値)市場の動向を調査した。多くの企業は地球温暖化対策が事業継続に不可欠と認識し、CO2排出削減や吸収の取り組みを強化している。しかし、企業によっては削減目標達成に過不足が生じる場合があるため、カーボン・クレジットや再エネ証書の取引を通じて排出量を相殺したり、排出枠を売買することがカーボンニュートラルに向けた重要な手段となっている。

 日本のカーボン・プライシング政策は、これらの環境価値取引をインセンティブとし、企業の省エネ投資や低炭素化への取り組みを促進する狙いがある。環境価値の市場取引が活性化することで、企業にとっての投資回収の予見性が高まり、経済と環境の好循環が期待されている。2050年のカーボンニュートラル達成に向けては、CO2排出削減だけでなく、吸収・除去プロジェクト(ネガティブ・エミッション)の拡大も不可欠となる。

 一方、再生可能エネルギーの普及に関しては、企業が再エネ電力を調達する手段としてPPA(電力購入契約)が広がっている。PPAでは、企業が発電事業者から長期契約で再エネ電力を安定的に購入でき、環境価値を含む太陽光などの再生可能エネルギーが利用される。近年では、FIT制度からFIP制度への移行が進んだことで、発電事業者は非FIT非化石証書を取引できるようになり、企業が再エネ証書を直接購入するバーチャルPPAも普及している。このような仕組みによって、企業は長期的に安定した再生可能エネルギー電力を確保することが可能となる。

 調査によれば、国内の環境価値市場は2023年度の442億円から、2050年度には1763億円に達し、約4倍に成長する見込み。特に再エネ証書の市場規模は、カーボン・クレジットを上回ると予想されているが、カーボン・クレジットはその発行量が限られるため、取引単価は再エネ証書よりも高額になると考えられる。環境価値の取引は、カーボンニュートラルを目指す移行期における最終手段と位置付けられている。つまり企業が自らの努力で排出削減を行った後でも、削減しきれないCO2排出量に対して活用されるものであり、第一次的な手段ではない。従って今後の市場拡大は見込まれるものの、CO2排出削減努力を補完する二次的な手段としての利用が主体となるため、抑制された拡大となる見通しである。