ページの先頭です

とうざわ印刷工芸(富山)、オフとデジタルで最適生産[Revoria Press PC1120導入]

個に刺さる、ワクワクする商品開発

他とはちょっと違うもの、捨てられない印刷物

 実際に設置導入されたのは2023年6月。すぐに商業ベースでの稼働を開始した。オペレーターをつとめる制作管理課の中村祥二氏は「とにかく安定性が際立った機械だ」と評価する。

 「従来機では数十枚単位で見当を微調整しながら出力していたが、PC1120は表裏見当の精度が高く、途中で機械を止めて確認することなく最後まで流せる。スペック上での印刷スピードは2倍になっているが、実際には3倍以上の生産効率向上を実感している。さらに、PC1120を稼働させながら、別の仕事をこなすことも可能になった」(中村氏)

 また、澤橋部長はPC1120のホワイトトナーにおける高い隠蔽性も評価する。「従来機では、ホワイトを5回通さないと隠蔽性が保たれなかったこともあり、明朝の文字が太りすぎてクレームになったことがある。しかし、PC1120ならワンパスで充分な隠蔽性を発揮し、生産効率も高い」(澤橋部長)

 一方、PC1120の導入は、社内のクリエイティビティに対する意識を高める原動力にもなったようだ。

 「以前からオリジナル商品の開発に取り組んできたが、PC1120の導入によって、その機運が一気に高まった。オペレーターの中村は、モノづくりが好きなこともあり、楽しみながら自主的に取り組んでいる。メタリックカラー、長尺、さらにはカッティングプロッターも駆使して立体物なども制作し、私が現場に足を運ぶたびに、新しいアイテムが増えている」(東澤社長)

 これら社内のクリエイティビティを引き出している要因のひとつが特殊トナーの活用だ。例えば、地元のサッカーチーム「カターレ富山」(J2)の選手カードの事例では、シルバーとクリアトナーを3回通して隆起させている。また、某自動車メーカーからの受注では、台数限定で即完した新車の予約者に対し、気持ちを高めてもらうためのパンフレットを作成。シルバー+プロセス4色+クリアトナー6回でプレミアム感を演出し、その深みのある仕様が顧客から喜ばれた。

 澤橋部長は、「メタリックとレザーカットを施した名刺は、顧客からも反応が良い。あとは、顧客と営業が如何にイメージを膨らませてものづくりできるか。『他とはちょっと違う』『捨てられない印刷物』がPC1120で我々が目指すところ」と語る。


touzawa_digital26_2.jpg
オリジナル商品開発の機運高まる

PC1120+AIの事例も

 基本的にオフセットとデジタルの振り分けは営業が行い、最終的には工務が稼働状況を見て判断を下している。同社では、2000枚をPC1120とオフセットの損益分岐点と考えており、PC1120でこなす平均ロットは400〜500枚程度だという。

 これらのジョブの多くはチラシやパンフレット類。オフセットからデジタルへと移行を進める同社の稼働状況はどのように変化しているのか。

 2024年9月に対し、2025年9月の生産機毎のジョブ件数を調べてみると、オフセット4色機の仕事が72%に減少しているのに対し、PC1120のジョブ件数は118%と増加。8色機も109%と増加しており、通し枚数もほぼ同様の傾向があることから、4色機からPC1120への移行が進んだと見て取れる。「今後、改めてビフォーアフターの検証を実施したい」(東澤社長)

 一方、同社では業務改善や制作工程でのAI活用も推進しており、PC1120+AIの事例も出始めている。そのひとつがPC1120の偽造防止機能を活用して商品化した「猫神籤」だ。文字通り猫をモチーフにしたおみくじで、それぞれの文章を猫の表情にあわせてAIで作成。同社が会場を提供する保護猫譲渡会でPRしたところ大きな反響があったという。

 また、昨年4月に入社した営業部の女性社員が中心となり、推し活キャラクターのイラストをAIでバリアブル生成。缶バッチやアクリルスタンドへの展開も想定し、現在サンプルを作成、PR中だ。

 同社は2025年から富士フイルムビジネスイノベーションジャパン主催の「Document Service Forum(DSF)」に参画している。これは全国のグラフィックアーツ業者が、新しい技術・市場・事業を研究し、事業の繁栄を図ることを目的として活動しているもの。PODの新たなデファクトスタンダードを作るためDXの実現を目指したユーザーコミュニティである。

 同社はその中で、弱視者向けの教材本を地元の盲学校に寄付する活動に参加しているほか、PC1120のサンプル本の作成にも協力。東澤社長は、「技術交流をはじめ、様々な活動の中で良い刺激を受けている」と説明する。

「小ロット化は『悪』ではない」

 同社は今後、このPC1120を加えた生産体制にさらに磨きをかけ、効率化と付加価値創出の両面で変革を推し進めていく考えだ。

 澤橋部長は、「かつて印刷のメインの機能であった情報伝達はデジタルメディアに置き換えられる。だとすると、紙の価値を高め、個でも刺さるもの、ワクワクするものを提案できなければ生き残れない。そこに自社の価値を見出すことが現在の我々の目標となっている」と語る。

 また、東澤社長は「『小ロット化=印刷会社の業績ダウン』とイメージがあるが、嗜好は多種多様で、そんな様々な考えや感性を持つ人に合った多彩な提案ができれば、単体では小さいが、積み上げれば大きなものになる。決して小ロット化は印刷会社にとって「悪」ではないと考える。そこにはデジタル機の機動力が必要であることは言うまでもない。商品・アイテム、加工を含め、多種多様な能力と引き出しをもつことが今後の印刷会社の経営基盤になると考える」とし、PC1120のさらなる活用の先に、自社の将来像を描き始めている。

注目コンテンツ