販売機会ロスの是正へ[ミューラー・マルティニジャパン 五反田隆社長に聞く]
「読みたい時に、すぐに手に入る」
ミューラー・マルティニジャパン(株)の五反田隆社長は、出版分野について「本の作り手側の都合で、自らの販売機会を逃している」と指摘。「多読家」としてもデジタル印刷製本による柔軟な本づくりの実践を求めている。今回、ミューラー・マルティニが2023年12月に買収したスイス・フンケラー社の製品ソリューションを含め、出版分野のデジタル印刷製本活用に対する五反田社長の考えを語ってもらった。

出版社と読書家の認識の乖離
今回はまず出版分野について、製本機メーカーの代表ではなく、月に少なくとも10冊以上の本を読む「多読家」としての考えを述べたい。
読書家にとって、やはり「読みたい時に、すぐに手に入る」、これがベストである。新刊の売り切れや入荷待ちは別として、例えばシリーズ物の場合、「1巻から10巻まである内の3巻だけがない」、これが非常に残念で困るわけだ。私がこのような場面に出くわした場合、性格的なものもあるが、他の書店で見つけるまで書店で取り寄せ注文はしない。同様の考えを持つ読者も多いのではないだろうか。つまり、出版社は「販売機会」を逃していることになる。
おそらく出版社には、「シリーズ物は、同一の印刷・製本仕上がりでなければならない」という固定概念がある。当然、前述の3巻を他と同仕様で作るとなると2,000〜3,000冊単位での発注が必要で、ヒット作を除けば現実的ではない。しかし、我々読者は多少の仕様が違っても、その場で手に入るならば読みたいと考えている。これは出版社側の思い違いではないだろうか。
一方、絶版本をオリジナルとは異なる仕様で100冊から作ってくれるサービスも出始めている。さらに書店が1冊から注文できるサービスも不可能ではないと思う。「読みたい」という意欲は多少の仕様が違っても勝る、私はそんな気がする。
また、自費出版などはデジタル活用でさらにハードルが下がるはず。出版社が行う自費出版サービスは、そこそこの料金がかかる。印刷や製本、出版側が「こうでないといけない」と決めつけた枠組みの中で行われている場合が多いからだ。ここに著者や読者との認識の乖離があり、この差を埋めるひとつの手段がデジタル活用であることは言うまでもない。
もうひとつ、デジタルによる書籍制作のメリットとして、サイズなどの融通が利くという点がある。例えば、従来の出版だと「B5判、A5判、四六判、A6判、どれにしますか?」となるが、デジタルなので印刷面の自由が拡がる。250×250ミリの本も作れる。このメリットについてはまだあまり認知されていない。
一方、デジタルが進まない理由としてよく聞くのが「品質」「生産性」「インキが高額」など。さらに最近では「自動処理」や「無人化」などに対する不安や抵抗、あるいはデジタル機側では基本的に人による品質検査を行わないことへの不安などがデジタルに踏み切れない理由として挙げられている。しかし、これは読者や自費出版をしたい人から見ると、デジタルの優位性を無視していると思われる。
フンケラーの2つのソリューション
ミューラー・マルティニは2023年12月にスイス・フンケラー社を買収。ジャパンでもフンケラー製品の販売・サービス体制が整っており、製本分野のソリューションとして、2つの機械をラインアップしている。
まず、ひとつが巻き取り紙から本を作る「Web to Book Block」。これは、オフセットからデジタルへの置き換えを想定し、オフセットの生産性に近づけるために巻き取りから生産するもの。最大2000部/時の生産が可能で、オフセットに比べて人員を削減でき、無人化も可能なため、トータルコストを抑えることができる。これが人件費の高い欧米でデジタルの自動化が進んでいるひとつの理由でもある。

もうひとつは、シートから本を作る「Sheet to Book Block」。フンケラー社はdrupa2024で同ソリューションを発表し、以来、引き合いが増えている。
日本市場における同ソリューションの最大のメリットは、すでに普及が進んでいるプロダクションプリンタを活用して、ブックブロックの加工ができる点。自費出版や同人誌などに対しても有効なソリューションである。近々、当社のショールームで出版向けデジタル製作の内覧会を企画したいと考えている。

この2つのソリューションで小ロット多品種化が進む出版のかなりの領域をカバーできると考えている。
デジタル印刷製本は、従来型生産のギャップを保管するものではあるが、ビジネスとして成立させるだけの生産性、そして人員削減などの合理性を持たせなければいけない。「デジタル=少部数」だけではビジネス性に欠け、普及しない。前述の「作りたい、読みたい」というニーズをデジタル技術でビジネスに変えていくことも、今後の出版業界に必要なのではないだろうか。

















































