樋口印刷所(大阪)、下請け100%のJet Pressビジネスとは
[Jet Press導入事例]「短時間で稼げるマシン」〜品質重視の「推し活系」が8割
「刷り技術集団」として下請けに徹する(有)樋口印刷所(大阪市東住吉区桑津、樋口裕規社長)は、コロナ禍にあった2021年12月、富士フイルムの商業印刷向け枚葉インクジェットデジタルプレス「Jet Press 750S」(以下「Jet Press」)を導入。見積もり段階で取りこぼしていた小ロット案件をカバーするとともに、色再現の安定性をはじめとしたJet Pressの実力を明確に提示することで、多くの新たなパートナー関係を構築している。

機種選定はJet Press一択
樋口印刷所の創業は昭和45年。職人気質だった先代・樋口義一氏がハイデルベルグ社製印刷機「KORD」1台から起業した、下請けを専門とする商業印刷会社だ。現在、オフセット印刷機はすべて菊半サイズの油性機で、「スピードマスターXL75」(4色機)をはじめ、「スピードマスターCX75」(4色機)、「スピードマスターSX74」(2色機)、「スピードマスターPM74」(両面兼用2色機)、これら計4台すべてがハイデルベルグ社製で統一されている。
とくに「特色」を得意とし、創業当初からシビアな品質要求、しかも短納期といった「他社では嫌がられる仕事」を数多くこなすことで企業価値を高めてきた同社だが、およそ11年前からは「特殊原反」へのオフセット印刷においても「駆け込み寺」的存在として、その技術力は高い評価を得ている。
そんな同社が、自社の将来に向けた新たな成長エンジンとして着目したのがデジタル印刷技術だった。「自社の成長戦略として、水なし印刷やUV印刷という選択肢もあったが、マーケットを広げるという意味では、デジタル印刷が最有力候補だった」と樋口社長は振り返る。
デジタル印刷への投資は、コロナ禍で加速する小ロット化の流れに対し、見積もり段階で取りこぼしていたこれら小ロットの仕事をカバーする狙いが根底にあった。また、機種選択については、富士フイルムのインクジェットヘッド「SAMBA」の先進性と実績から、ほぼ一択だったようだ。同社初のデジタル印刷機への投資において、搬送部を含めたオフセットライクな機械構造にも親しみを感じたという。

口コミで広がるJet Pressの魅力
Jet Pressは、プリントヘッドにシングルパス方式の「SAMBA」、インクに広色域の水性顔料インク「VIVIDIA」を使用し、用紙上での打滴のにじみを抑える「RAPIC(ラピック)技術」により、多種の用紙にシャープで階調豊かな画像を形成するB2サイズ枚葉型インクジェットデジタル印刷機。同社の導入は2021年12月だが、その約4年弱でJet Pressの顧客は120社に及んでいる。樋口社長は、「当初はYouTubeやSNSを活用してアピールしていたが、現在はとくに営業活動は行っていない。現在の顧客はほとんどが口コミによるものだ」と説明する。
ここで特筆すべきポイントは、このJet Pressビジネスも下請け100%だということ。「下請け専業でJetPressを回す」。このユニークな立ち位置が良好な循環を生んでいる。
「当社はあくまで刷り屋であり、商品開発や販売促進は、正直苦手としている。ならばJet Pressの機能や技術を明確に提示することで、お客様に需要創出のアイデアを考えてもらう。そして、そのアイデアを具現化するための受け皿となる刷りの技術、製造に専念する。このようなパートナー関係で、ともにビジネスを成長させていきたい」(樋口社長)
取材時には、1%刻みで正確に色を再現できるJetPressの特性を活かしたカレンダーのサンプルを見せてくれた。これは、週毎に1日だけ色を数%変えたユニークなもので、「違う色の日を当てる」というゲーム性のある仕様になっている。同社のバーベキュー大会では、4色の内の1色の網を5%変えたカードを当てるというゲームを考案し、好評だったという。


