ミマキ、UV-DTF市場に参入〜プリント形状の課題を解決
プリントビジネスで付加価値創出
産業⽤インクジェットプリンタ、カッティングプロッタ、3Dプリンタを手掛ける(株)ミマキエンジニアリング(本社/長野県東御市、池田和明社長)は今年4月、同社初のUV-DTF(UV硬化式Direct To Film)プリンタ「UJV300DTF-75」を発表。東京ビッグサイトで開催された「第8回販促EXPO」に世界初出展し、UV-DTFプリント方式によるオーダーグッズ制作の新たな可能性を提案するとともに、サイングラフィックス、インテリア、日用品のデコレーションなど幅広く高い付加価値を創出するプリント方式として来場者に提案。大きな話題を呼んだ。

UV-DTFは、専用のフィルムにプリントしたデザインを対象の素材に転写する加飾方式。従来のUVプリントでは難しかった凹凸や曲面のある素材の表面にも簡単に加飾できる。
UV-DTFの専用フィルムは、糊が付いたフィルムと転写シートの2点で構成されており、加飾手順は【図1】のようになる。

UV-DTFはフィルムにプリントしたデザインのみが対象物に転写されるため、ステッカーシートのようなカス取り(余白の除去)作業が不要で、また素材に直接プリントしないため、素材のセット位置のズレによるミスプリントのリスクが低く、高価なアイテムにも安心して加飾できる。オーダーグッズ制作の幅が広がる便利なプリント方式だ。
従来のロールtoロール型プリンタでは、フィルムをピンチローラーで押さえながら搬送することで、安定した搬送を実現していた。しかし、UV-DTF用のフィルムは印字面に糊が付いているため、ピンチローラーで押さえると糊が剥がれてしまうという課題があった。また、ピンチローラーを使わずフィルムの巻取りの力だけで搬送すると、フィルムが蛇行して印刷品質が低下したり、浮き上がったフィルムにヘッドがぶつかって故障したりするリスクが高まる。
そこで「UJV300DTF-75」は、同社独自開発のシリコン製ピンチローラーを搭載し、フィルムの糊の剥がれを抑え、安定した搬送を実現【図2】。さらに、薄くて扱いづらい転写シートも簡単にセットでき、初心者のオペレーターでも使いやすい設計となっている。

また、市場で高い評価を得ている同社のUVインクジェットプリンタ「UCJV300シリーズ」の高画質と安定性を実現する機能を受け継いでいる。
▽粒状感が少なく、美しいグラデーションを表現。小さな文字や細い線も正確に印刷可能
▽トラブルを最小限に抑えるサポート機能。自動ノズルチェックとノズルリカバリ機能を搭載し、装置のダウンタイムを減少
▽インク循環機能により、ホワイトインクの濃度を一定に保ち、ノズルの詰まりを防ぐ
▽衝突防止センサー搭載でヘッドとフィルムの衝突を防ぎ、操作ミスによる故障を未然に防止
さらに「UJV300DTF-75」には、同社が新開発したUVインクを搭載している。このインクは、欧州のSVHC規制で今後使用制限が予想される物質を含まない安全性の高い次世代インクで、GREENGUARD GOLD認証も取得予定。作業環境や使用者の健康も配慮されている。
同社では、「硬質インクと軟質インクを組み合わせることで加飾デザインの強度と柔軟性を両立し、業界トップクラスの耐久性を実現した。当社が長年培ったUVプリント技術、新開発のフィルム搬送システムおよび次世代インクの融合により、オーダーグッズビジネスの可能性を大きく広げる」とし、発売後3年間で400台(全世界合計)の販売を見込んでいる。
【主な仕様】
▽プリントヘッド...オンデマンドピエゾヘッド
▽最大プリント分解能...1,200dpi
▽インク...UV硬化柔軟インクELS-170(C・M・Y・K)/UV硬化硬質インクELH-100(白・クリア)
▽インク循環システム...ホワイトのみ搭載
▽最大作図範囲...640ミリ
▽メディア...最大幅650ミリ、ロール外径φ250ミリ以下、ロール重量45kg以下