京都製本、「つなぐ」「変わる」をキーワードに変革
藤原智之新理事長インタビュー〜全組合員が行動する組織へ
2025年、創立100周年という大きな節目を迎えた京都府製本工業組合。今年5月、同組合の新理事長に就任した藤原智之氏(藤原製本(株)代表取締役)は、「つなぐ」と「変わる」を新体制のキーワードに掲げる。組合員各社の技術や仕事を次世代につなぐ一方、商品開発や異業種との連携など、従来の製本業の枠を越えた挑戦も加速させる。「組合に加入しているだけではメリットは生まれない。自ら参加し、行動することで新しいものが生まれる」。組合員28社の力を結集し、全組合員が行動する組織を目指す。

「100年という長い歴史を受け継いだ責任を感じている。それをさらに次へつないでいかなければならない」
藤原理事長は現在の心境をこのように語る。紙離れに加え、原材料費や人件費などの高騰が続き、製本業界を取り巻く経営環境は厳しさを増している。廃業する企業も増える中、組合員企業が事業を継続し、成長できる環境づくりを後押しすることが、組合の重要な役割だと考える。
そのために変えようとしているのが、組合と組合員との関係だ。「これまでは組合から情報を提供する形が中心だった。しかし、これからは組合員自身が情報を求め、自ら行動する組合に変えていきたい」
現在の仕事をどう変え、新たな収益につなげるかは各社が自ら考え、実行しなければならない。組合は、その一歩を踏み出すための「きっかけ」を提供する。セミナーに加え、特徴ある取り組みを進める企業の工場見学など、実際に見て学ぶ機会を増やしていく。
将来的には、組合員各社が製本技術を生かして開発した商品を持ち寄り、一般消費者へ販売するイベントも視野に入れる。
「京都には国内外から多くの観光客が訪れるので、その地域性を生かし観光客への販売を意識したイベントを考えていきたい」
今年度はこれまで縮小傾向にあった組合行事をできる限り維持・拡充する。9月には、ビアパーティーを開催する。11月には京都印刷関連7団体で「京都ものづくりフェア」に出展する。年内にはセミナーも予定しており、まずは組合員が顔を合わせ、交流する機会を増やしていく。
各社の得意技術を集約して「共同受注」目指す
組織増強については製本専業会社だけではなく、後加工や表面加工、折り加工などを手掛ける企業にも参加を呼び掛け、製本をコアとしながら組織の裾野を広げていく。
また、アンケートを通じて組合員各社の設備や得意分野、強み・弱みを調査し、データとして蓄積する。その先に見据えるのが、組合による「共同受注」である。
その必要性を実感したのが、全日本製本工業組合連合会「紙の未来プロジェクト」のJP2026・印刷DX展への出展である。会場では「天糊など手作業が必要な仕事を依頼できる会社が少なく、困っている」といった相談が数多く寄せられたという。
「製本会社が減少する一方、特殊な加工を必要とする仕事は残っている。しかし、発注者側からすれば、どこに頼めばいいのか分からないという状況が生まれている」
そこで、組合が相談窓口となり、加工内容に応じて、その技術を得意とする組合員企業を紹介する仕組みを構築していきたい考えだ。
「どこかの製本会社が廃業したときに、『知りません』ではいけない。その会社が持っていた仕事や技術をきちんと京都に残したい。京都で受けられなければ、大阪や東京へ流れてしまう」
昨年の創立100周年記念事業として開設した組合ホームページについても、共同受注の窓口として機能するよう、内容を充実させていく。
「紙の未来プロジェクト」での活動を京都独自でも推進
藤原理事長が「つなぐ」とともに重視しているのが「変わる」ということである。その具体策の一つが商品開発だ。
製本会社は高い加工技術があり、モノづくりには長けているが、自ら商品を企画・デザインし販売方法や戦略まで組み立てる「開発」という発想は、業界に十分根付いてこなかったという。
「今やっていることをそのまま続けているだけでは何も変わらない。もう一歩、先へ進まなければならない」
藤原理事長自身も委員を務めた「紙の未来プロジェクト」では、製本会社がデザイナーなど外部人材と連携し、これまで経験してこなかった商品づくりに挑戦してきた。こうした動きを京都でも広げていくため、これまで接点の少なかった異業種と連携し、製本会社の技術を新しい市場へ届ける。その橋渡し役を組合が担っていく。
また、京都印刷関連7団体との連携も強化する。藤原理事長は、京都府印刷工業組合の内藤一徳理事長とも以前から交流が深く、同氏が掲げる「京都の知恵と団結力で稼ぐ集団へ」という考えにも非常に共感できるという。
製本工組として製本をコアに専門性を磨きながら、印刷工組をはじめ関連団体が進める事業にも積極的に連携し、京都の印刷関連産業全体の競争力向上につなげていく。
生産改革とデジタル連携を自社で実践
組合で変革を呼び掛ける一方、藤原理事長自身も、自社で新たな取り組みを開始した。
同社では昨今、原材料費や人件費などの上昇によって収益率が悪化していることから、今年は生産効率の改善を重点テーマに掲げた。外部コンサルタントを導入して各設備の稼働率を計測し、工程に潜む無駄やロスを洗い出すことで、生産性の向上を図っている。
価格改定についても単純な値上げではなく、付加価値の提案とセットで進めている。例えば発送業務に課題を抱える顧客には、製本から発送までを請け負い、必要に応じて印刷工程から一括受注するなど、顧客の手間を削減する提案によって適正価格への理解を求めている。
新技術では、約2年前に導入したRFID関連設備の活用を推進。現在はNFCタグを朱印帳などに貼り込み、スマートフォンをかざすことで寺院のウェブサイトなどへ誘導する仕組みを提案している。サイトを通じて寺院の情報を発信したり、お守りなどの購入につなげたりすることも可能で、紙の朱印帳というアナログ商材をデジタルへつなぐ新たな試みである。
また、以前から手掛けるミュージアムショップ運営のノウハウを生かし、ノベルティ商品の展開も拡大している。京都で開催される各種イベントを見据え、地域の観光商材にも力を入れていく。
製本を「情報をまとめる仕事」へ
製本会社が長い歴史の中で培ってきた技術力を藤原理事長は「本を作る技術」だけに限定して捉えていない。
「本は情報伝達の一つのツール。我々は紙を綴じる仕事を生業としているが、製本を『情報をまとめる』仕事として捉え直し、そこから知恵を出し合っていきたい」
製本技術を次世代へ残し、そこから新しい商品を生み出していく。そして異業種と組み、新たな市場へ届ける。そのための場として、組合を積極的に活用してほしいと呼び掛ける。
「組合に加入しているだけではメリットは生まれない。自分から積極的に組合活動に参加し、自分の意見を出し、活動していく。その中で、新しいことや人脈が生まれていく。それを全組合員ができるようになれば、決して未来は暗くない。みんなが行動する組合になれば、製本業の未来は明るいと信じている」










































