新聞印刷/S-PLUS、印刷現場のナレッジ共有へ
JP2026で「Note PM」活用した情報共有システム提案
(株)新聞印刷(大阪市天王寺区、福山耕治社長)は、JP2026情報・印刷産業展に印刷現場のプロフェッショナルであるS-PLUS(大阪府八尾市、横山達也代表)と共同出展し、ナレッジマネジメントツール「NotePM」を活用した印刷現場向け情報共有システムを提案した。分散したファイルや個人管理に依存する従来の運用を見直し、言語化が難しい「暗黙知」の共有を図ることで、現場力の底上げを狙う。人材不足と高齢化が進む中、技術継承の新たな手段としても注目されそうだ。

印刷現場では、日々の業務の中で蓄積されてきたノウハウやトラブル対応の知見が、個人の経験に依存したまま埋もれているケースが少なくない。ファイルサーバーや個々のパソコンに分散して保存されたデータは、ファイル名だけでは内容が把握できず、必要な情報にたどり着くまでに多くの時間を要しているのが実情である。
こうした課題に対して同社が提案するのが、「NotePM」をベースにした情報共有の仕組みである。WordやPDF、PowerPointなど、形式の異なるデータを一元的に蓄積し、全文検索によって瞬時に必要な情報へアクセスできる環境を構築することで、現場の生産性向上を実現することができる。
同システムは、市販のNotePMを基盤としながら、印刷現場に即したナレッジが事前準備されている点が特徴である。福山社長は「単なる情報共有ではなく、現場で実際に直ぐに使えるナレッジとして機能させることが重要である」とし、オフセット印刷技能士1級・オフセット印刷アドバイザーであるS-PLUSの横山代表と連携しながら、印刷特有のノウハウを体系化していく考えを示す。
とくに、印刷機のトラブル対応や品質調整といった領域では、ベテランの経験に依存する「暗黙知」が多く存在する。これらを言語化し、組織全体で共有可能な形へと転換することが、このシステムの取り組みの中核となる。
「暗黙知」の可視化で現場力強化へ
印刷現場においては、長年の経験によって培われた技能や判断が、明文化されないまま個人の中に蓄積されているケースが多い。いわゆる「暗黙知」である。機械トラブルへの対応や微妙な色調整などは、その典型と言えるだろう。
横山代表は、「現場は高齢化と人材不足が進んでおり、新人が定着しにくい状況が続いている。その背景には、技術を十分に伝えきれない現場の構造がある」と指摘する。

ベテランにとって、自身の技術を言語化することは容易ではない。また、日々の業務に追われる中で、教育に十分な時間を割くことも難しいのが現実である。一方で新人側も、分からないことをその都度聞ける環境が整っているとは限らず、結果として習得の遅れや離職につながるケースも少なくない。
こうした状況に対して、NotePMを活用することで、知識を蓄積・共有する基盤を整備することが可能となる。横山代表は「ベテランの頭の中にある暗黙知を形式知に置き換えることで、次世代へとつなげることができる。新人も分からないことがあれば自ら調べて理解を深めることができる」とし、現場全体の底上げにつながる点を強調する。
印刷工場はチームで成り立つ現場である。個々の技能を組織全体の力へと昇華させるためには、知識の共有と標準化が不可欠であり、その基盤としてのナレッジマネジメントの重要性は今後さらに高まると見られる。
全文検索で「探す時間」を削減し、生産性向上
「NotePM」の大きな特長は、蓄積された情報を全文検索によって瞬時に引き出せる点にある。従来のようにファイル名を手がかりに探すのではなく、文書の中身まで横断的に検索できるため、必要な情報へ短時間で到達することが可能となる。
福山社長は、「これまで10分、15分とかかっていた情報検索が数十秒で完了するようになれば、それだけで大きな生産性向上につながる」と強調する。日々の業務の中で発生する「探す時間」の積み重ねは決して小さくなく、その削減は直接的に業務効率へと結び付く。

また、編集ユーザーと閲覧ユーザーを分けた料金体系も他のナレッジマネジメントシステムにはない特徴だ。これにより必要な人材のみが情報を更新し、その他の従業員は閲覧に専念するなど、現場に即した柔軟な運用が可能となる。
福山社長は「全員が編集する必要はなく、管理者やリーダー層が情報を蓄積し、現場全体で共有していく仕組みが現実的である」とし、運用面での実効性を強調する。
加えてクラウド上での運用により、拠点間の情報共有やBCP対策にも寄与する。社内サーバーに依存しないことで、災害時やトラブル発生時にもデータを保全できる環境を構築できる点は、企業にとって大きな安心材料となる。
スモールスタートでまずは「現場」から展開
今回のJP2026では、完成された製品としての販売ではなく、モニター企業の募集を主目的に出展した。まずは印刷現場に特化したナレッジ共有からスタートし、段階的に営業や管理部門へと展開していく「スモールスタート」の考え方を採る。
福山社長は、「まずは現場にフォーカスし、実際に使える仕組みとして定着させることが重要である。その上で、会社全体へと広げていく」としており、現実的な導入ステップを示す。
また、導入にあたっては単なるシステム提供にとどまらず、各社の実情に応じた立ち上げ支援や運用サポートも行う。基本となる技術情報やノウハウをベースとして提供しつつ、個々の企業に合わせたカスタマイズをサポートすることで、実効性の高い運用を実現する考えである。
一方でナレッジの蓄積を促進するためには、社内の評価制度や運用ルールの見直しも不可欠となる。福山社長は「ベテランが持つ技術を言語化し、NotePMに蓄積していくこと自体を評価する仕組みを整えなければ運用は定着しない」と指摘する。日常業務の中で自然に活用される環境づくりこそが、ナレッジマネジメント成功の鍵を握る。生成AI機能の充実しており、多言語対応にも効果を発揮しそうだ。
横山代表も、「現場全体が同じ知識を共有し、チームとして成長していくことが重要である。NotePMを通じて、次世代へと技術をつなげていく仕組みを構築していきたい」と展望する。
印刷業界において、技術継承と人材不足という課題は避けて通れないテーマである。「暗黙知」を組織の資産として可視化し、共有していく取り組みは、今後の現場力を左右する重要な要素となりそうだ。











































