PJweb news

印刷産業のトレンドを捉える印刷業界専門紙【印刷ジャーナル】のニュース配信サイト:PJ web news|印刷時報株式会社

トップ > 視点の行方 > 2018年度のパッケージ印刷市場規模は前年比0.9%増
視点の行方

2018年度のパッケージ印刷市場規模は前年比0.9%増

印刷ジャーナル 2019年10月15日

 (株)矢野経済研究所は、国内のパッケージ印刷市場の調査を実施し、各市場・各需要分野の動向や参入企業動向、将来展望を明らかにした。
 2017年度の国内パッケージ印刷市場規模は前年度比1.2%増の1兆3,704億5,700万円であった。食品・菓子分野の需要が堅調に推移し、市場を牽引した。日用品分野や化粧品分野もインバウンド(訪日外国人客)需要の回復により伸長した。化粧品分野は越境ECの拡大が加わり、比較的高い伸びとなった。医療・医薬品分野もジェネリック医薬品の拡大により増加、紙器では医療用医薬品パッケージのバーコード表示の改定需要もあった。
 2018年度に入り、インバウンド需要は落ち着いてきたものの、食品分野を中心に依然として各需要分野は堅調に推移しており、同年度の市場規模は前年度比0.9%増の1兆3,825億5,000万円を見込む。
 パッケージ業界の潮目を変える可能性があるトピックとして「脱プラスチック」の動きが挙げられる。2018年に入り、プラスチックごみによる海洋汚染問題(マイクロプラスチック問題)への関心が世界規模で急速に高まっており、こうした脱プラスチックの動きが、紙器需要を底上げする可能性もある。既に紙器コンバータ(加工事業者)各社のもとには、紙化を検討しているユーザー企業からの相談が多く寄せられている。
 もっとも、現状の紙素材では、バリア性や耐水性などの機能性が他の包装材に比べると弱く、これらの課題を解消すべく、製紙メーカーではバリア性を高めた紙素材を開発、上市している。既存の包装フィルムでは過剰仕様になっている用途などをターゲットに、紙器コンバータとともに一次包装としての需要も開拓しようとしている。
 しかし、こうした「脱プラスチック」の動きによって、国内のプラスチックユーザー企業が軟包装材(プラスチックフィルム包装材)の代替素材として紙素材を積極的に活用するかというとそこまでには至っていない現状がある。
 このような市場環境においては、軟包装材のほうが、他の包装材(容器)と比較しても、バリア性などある程度の機能を担保できる上、素材が薄肉・軽量であることから、素材使用量を減量することができ、また輸送に係るCO2低減などの面からも環境負荷を軽減できる。こうした従来からの優位性をユーザー企業に積極的に訴求することで、他の容器からの代替需要を拡大させる好機と捉えている軟包装コンバータ(加工事業者)も多く、環境負荷低減への関心度を高めている「脱プラスチック」が逆にプラスチックフィルム包装材を扱う軟包装コンバータの商機を生む可能性も現段階ではある。
 一方で、「脱プラスチック」の世界的な動きの中で、環境に配慮する世界的な基準(グローバルスタンダード)が日本国内にも浸透する可能性はあり、これを受け、大手ユーザー企業を中心に、さらなる環境負荷低減を軟包装材コンバータ(加工事業者)に求めるケースが増えてくると同研究所ではみている。こうした中、軟包装コンバータにおいても、今後は環境負荷を低減するプラスチックフィルム包装材以外の代替素材の開発などを視野に入れる必要があるものと考えているようだ。
 2019年度の国内パッケージ印刷市場規模は前年度比0.3%増の1兆3,869億円と、引き続き堅調な需要を背景に拡大すると予測している。しかし、紙器分野(市場)において、ユーザー企業のコストダウン要請が強まるとともに、省包装化の動きが活発化すると考えられることから、伸び率は小幅にとどまるとみる。
 10月に実施された消費税率引き上げの影響については、増税後の需要減はある程度予想されるものの、増税の影響を受けた2014年度と比較すると、実施の時期が10月(前回は4月)であることから、駆け込み需要と相殺される形で直接的な影響は軽微で済むものとみているという。