NEW LEADERに聞く：ニーズを聞き出し、声をカタチに - 愛知県印刷工業組合 酒井良輔理事長
2024年7月25日
「全組合員を訪問することから始めたい」。愛知県印刷工業組合の新理事長に就任した酒井良輔氏（知多印刷（株）代表取締役）は、その熱意と行動力で組合の明るい未来を目指す。コロナ禍の行動制限から解放された今、理事長自身が自らの足を使って「行動量」を増やしながらニーズを聞き出し、組合運営に反映させていく考えだ。
酒井良輔 理事長
12年間にわたり理事を務めてきた酒井理事長は、同工組の特徴について「組合運営に協力的な企業が非常に多く、また若い経営者が多いので活力もあり、仲も良い」と説明する。ほとんどの組合員が何らかの組合事業に参加しており、組合加入しているだけの"幽霊会員"はほとんどいないということだ。さらに「愛知県には業界団体だけでなく、業界で名の知れた印刷会社やメーカー、商社などの集いも多いため、自然と組合員が顔を合わせる機会も多くなる。それが絆を深め、団結を強めている一因になっているのではないか」（酒井理事長）。
酒井理事長による組合員企業の訪問は、ニーズを聞き出すとともに、関連団体の組合加入を促進していくという狙いもある。同工組では、印刷設備を保有していなくても、組合に加入できるよう定款を定めているため、「制作会社など、組合員企業の取引先などの情報も可能な限り提供してもらい、アドビライセンスプログラムなどの加入メリットを訴求しながら、関連業界の加入も促進していきたい」（酒井理事長）。
これは組合員との信頼関係があるからこそ、実現可能な取り組みであると言えるだろう。
新事業「ワクワクぷりんと博覧会」による組合活性化に期待
同工組は本年度、基本方針として「みらい印刷産業の創造」「産業の枠を創造」「組合各社の可能性の創造」の3つの創造を掲げる。そして、この実現のための活動の第一弾として5月に開催したのが、印刷関連企業×クリエイターのコラボイベント「ワクワクぷりんと博覧会」である。組合員とデザイナーのコラボレーションの場として多くの新しい発見とビジネスチャンスが生まれたようで、5月11日と12日の2日間で2,000〜3,000人の来場があったという。酒井理事長は「1ブースあたり10万円以上の売上があったと聞いている」と、大きな成果があったようだ。
そして、これが組合のさらなる活性化と組合に参加するモチベーション向上になることを期待し、同工組では14年間にわたり継続してきた「ポスターグランプリ」を第15回で終了し、来年度以降は「ワクワクぷりんと博覧会」に注力し、拡張して開催していく。
「当組合は、人材不足を解決するための取り組みとしてブランディング委員会を数年前に立ち上げたが、ここに『業態変革』の実現をからめて考えた場合、他業界と連携した取り組みは避けることはできない。3つの創造を実現していく上でも、他業界との連携した事業やイベントの開催に注力していきたい」（酒井理事長）
地域の他産業とコラボし、新しい価値協創の実践に先駆
酒井理事長が経営する知多印刷は、知多半島を拠点に、1929年の創業以来、長年にわたり地域に根ざした印刷会社として成長してきた。理念に「〜tsunag〜人をつなぎ、地域をつなぎ、時代をtsunag」を掲げ、FC運営会社向けに幅広いデジタルマーケティング支援を提供しているほか、知多半島の生活情報誌「Step」を20年間にわたって発行している。
また、新たな食文化と観光の創出を目指し、地元企業と協力してオリーブオイルの生産や搾油事業も開始するなど、地域経済の活性化と持続可能な社会の実現に貢献しており、自社においては印刷の関連業界に止まらず、地域の他産業との連携により新たな価値協創の実践に先駆している。
「フットワークが軽いことが私の強み」（酒井理事長）。行動力に溢れたニューリーダーの誕生により、愛印工組は大きな転換期を迎えることになるかも知れない。
