「挑戦」に向けた選択〜「アズーラ」で技術を磨く
[アズーラ採用事例]ユーザー間の横の繋がりに期待
100年企業を見据えた「新たな挑戦」としてブランディングに着手する(株)第一印刷(本社/福島県福島市岡島字古屋舘1-2 福島工業団地内、古川幸治社長)。そこに派生する生産改革の取り組みとして昨年4月、印刷現場の意識と技術の向上を目的に、エコスリーの現像レスプレート「アズーラ」を全面採用した。速乾印刷も視野に入れた運用を目指す一方で、これをきっかけに、ユーザー会や「工場長サミット」といったエコスリーのユニークな取り組みにも積極的に参画し、その「挑戦」に厚みを持たせていく考えだ。

強みは「お客様に寄り添える人材」
同社の創業は昭和26年。女性が会社を始めることが稀な時代に、達筆だった故・井場秋子氏が鉄筆を使い謄写印刷の個人事業を立ち上げたのが同社の原点である。現在では商業印刷分野を中心に、福島県を商圏とする地域貢献型の印刷ビジネスを展開し、売上のおよそ6割が官公需、その他が一般企業というバランスの取れた顧客層を持つ。
古川社長に「御社の強みは」と訪ねると、ずばり「人である」という答えが返ってきた。「様々な印刷商材を制作できることが強みではない。お客様の困り事や課題を解決できる能力、社員が自発的に考え、行動する企業風土こそが、当社最大の強みである」と語る。創造・挑戦・繁栄を社是とし、「地域貢献」や「地域おこし」という視点を常に意識してきた老舗の印刷事業が、クライアントにしっかりと寄り添える人材を育ててきたということだろう。
そして創業から73年を迎えた現在、同社では100年企業を見据えた取り組みとして、全社を挙げて新たな「ブランディング」に着手している。月に1度、製造工程のすべてを停止し、全社員が半日にわたって勉強会に参加するというから驚きだ。「『ブランディング』という言葉を使っているが、その本質は各自の独自性を養い、選ばれる存在になるためにはどうあるべきかを考え、議論し、学ぶ場である。選ばれる存在になれば、不当な価格競争に巻き込まれることもない」(古川社長)
そもそも、ブランディング強化の取り組みは、古川社長が(株)川俣町農業振興公社の取り扱う、福島の地鶏「川俣シャモ」に興味を持ったことから始まる。「顧客でもあった(株)川俣町農業振興公社は従業員20名程度の小さな会社だが、川俣シャモは東京の有名料亭にも卸しており凄いことだと思う。数あるブランド鶏の中から、なぜ採用されているのかを考えることで、ブランディングの重要性を再認識させられた」(古川社長)
そこでまず同社は「顧客を知ること」から始めた。常務執行役員の山根克英氏は「とくに印刷現場はお客様との接点がない分、自分が制作した印刷物をお客様がどのように使うかを知らない。その情報を印刷現場も共有し、製造側からお客様のニーズを考えることができれば、印刷物に現場の感性を付与することができる。それは品質だけではなく、機能や納期に至る様々なニーズを汲みとることで、差別化の大きな原動力になる」と語る。
いまでは印刷現場、営業、デザインなど各部門間でお客様を中心とした対話が増え、同社が定義するブランディングの考え方が全社に浸透しつつあるという。「印刷業においても製販一体がブランディングの第一歩ではないだろうか」(山根常務)
採用決定を後押ししたアズーラユーザーの見学会
ブランディングによる新たな「挑戦」に乗り出した同社だが、そこに派生する生産改革として「刷版工程の再構築」というプロジェクトを推進。老朽化にともなうCTPセッターの更新において、無処理版への移行を前提とした機種検討に入っていたが、ある出会いがその選択に大きな影響を与えたという。
「IGAS2018のエコスリーブース(当時はアグフア)を訪れた際、社長になる前の岡本勝弘氏が熱心に我々の話を聞いてくれた。『おもしろい会社だな』というその時の印象が記憶に残っていたことから、プレートメーカーとして選択肢のひとつにエコスリーを加えるよう指示した」(古川社長)
それまでの流れから、当然ながら現場は無処理版に傾いていたわけだが、その考えを引き戻したのが、アズーラユーザーの見学だった。山根常務は、営業、現場を含めた10名を引き連れて(株)吉田印刷所(新潟県五泉市、吉田泰造社長)を訪問。そこで「これは何かが違う」と感じたという。
「吉田印刷所様を見学して、まず『我々はこのままで良いのか』という疑問が生まれた。『挑戦』というキーワードを掲げる当社にとって、印刷技術向上に寄与するプレート『アズーラ』に大きな魅力を感じた」(山根常務)
また、プリプレス工程を管理する改革推進室の早坂陽一室長も「当初、老朽化にともなう設備更新において『プレート変更=挑戦』という感覚はなかった。当社の運用において、いずれのプレートも『大差はない』と考えていたため、スペースや資材のことを考慮すると無処理版が私の中で優位だったのは確か。ただ、エコスリーには担当営業の姿勢からも『顧客を見て、知ろうという思考』が非常に強いという印象を受けた。そして、速乾印刷という技術的なアプローチを知り、そこではじめてプレートを変更することにメリットがあることを知った」と当時を振り返る。
また、製造側から見学会にも参加した企画制作・製造グループの石坂建一郎リーダーは、「アズーラは水幅が狭いため、印刷機のメンテナンスをしっかり行わなければならない。これを逆に捉えると、強制的にメンテナンスが必須になることで、印刷技術の向上に繋がるのではないかと考えた。また、機上現像の課題のひとつである視認性についてもアズーラは従来の有処理版と同レベル。さらに、水を『綺麗に保つ』という観点でもガム処理タイプが有利。検討段階では確かに機上現像による印刷機への悪影響を懸念していた」と振り返っている。これら一連の検討作業を終えた同社の決断は「アズーラ」だった。CTPセッターを更新した昨年4月から全面採用している。

