上六印刷、紙器パッケージ印刷の「検版体制の完成形」実現
プリプレスから印刷までの検査を連携
Package Compare KIT×CorrectEye SIS
そして、その連携を裏側で支えたのが、CorrectEye SISと同時に導入した自動化ソリューション「Switch」である。同社では、月間千数百点に及ぶジョブを扱っており、検査に必要なデータを一つひとつ人手で投入すれば膨大な時間を要し、作業ミスも起こり得る。そこでSwitchによってデータ処理を自動化。2台導入しているCorrectEye SISのどちらからでも必要なデータを呼び出し、検査できる環境を構築した。
現場では操作性も高く評価している。CorrectEye SISを扱うオペレーターは「数字を入れればデータが来て、そのまま検査できる。複雑な操作がなく、簡単で迅速なのがいい」と話す。
Package Compare KITでは、紙器特有の多面付けデータの検版でも効果を発揮する。一丁と多面付けされたデータを比較する際、従来は位置合わせに手間を要していたが、これを自動化。さらにRIP後の1bit TIFFまで比較できるため、刷版を出力する前の段階で異常を発見できるようになった。
そして、その効果は熟練オペレーターの代替ともなっている。従来の目視検版では、版のどこを見るべきかを熟知したベテランの経験やノウハウが不可欠だった。これに対して、Package Compare KITによるデジタル検版では、決められたルールと手順さえ習得すれば、経験の浅い担当者でも検版できる。実際に担当するオペレーターは「目視検版はノウハウがなければできなかったが、Package Compare KITなら製版部署に入って4ヵ月程度でも手順通りに進めれば検版できる。誰でも早く使えるようになることが最大の強みである」と評価する。
ヤレ版を560版から60版に削減
この検版システム導入による効果は、明確な数字として表れている。刷版出力後に不具合が判明するなどして廃棄となった「ヤレ版」は、2024年には年間約560版に達していた。それが2025年には約300版まで減少し、2026年は9月までで約60版。刷版を出力してから異常を見つけるのではなく、その前のデータ段階で食い止める仕組みが機能し、刷版にかかわるロスを大幅に圧縮した。
さらに人員面での効果も大きい。従来、刷版の目視検版には基本的に2人を配置し、それぞれ半日程度を費やしていた。この作業そのものが不要となり、人手不足が深刻化する中で、貴重な人材を別の業務へ振り向けられるようになった。

一方、CorrectEye SISは、データ段階では防ぎ切れない印刷工程での不良を捉える。従来の刷り出し検査では、大きなベタ面の汚れなどは比較的発見しやすいものの、文字の中に入り込んだ汚れや微細な文字欠けは見落とす可能性があった。実際に担当するオペレーターは「文字の中の汚れや文字欠けもすぐに見つけてくれる。人がやるより正確で、しかも速い」と効果を話す。
そして、この「早く見つける」ことは、高級紙器パッケージを主力とする同社にとって大きな意味を持つ。高価な用紙を多く使用し、多品種・小ロットを中心とするだけに、不良に気付かないまま印刷を続ければ、それは大きなロスにつながる。同社ではここ数年、ヤレ紙を極力抑えながら色合わせを行い、印刷途中の不良も早期発見することで、「ロス」と「不良」の比率を引き下げる取り組みを進めてきた。新たに構築した検査体制は、その取り組みにも大きく寄与している。
不良削減は「納期厳守」に直結
さらに、その先にあるのが「クレームを限りなくゼロに近づける」という目標だ。高級パッケージを扱う以上、顧客が求める品質水準は高い。そんな中、同社では数ある製造工程の中でも、とくに印刷に起因するクレームを重要な課題と捉えてきた。問題が発生してから対処するのでなく、各工程で異常を検出し、次工程へ流さない仕組みを構築することを目指してきた。
そして、不良の未然防止は納期にも影響を与える。同社の大田治夫副社長は「オフセット印刷の弱点の一つは『版』にある」と指摘する。版の微細なキズや間違いを見逃せば、場合によっては10万枚の印刷物すべてに影響を及ぼすと警鐘を鳴らす。
「1,000枚や2,000枚ならカバーできても、数万枚となれば1日仕事になる。それが納期遅れにつながれば、お客様からの信用をなくすことにもなりかねない」(大田副社長)
同社が約20年にわたって最重要目標の一つとして掲げてきたのが「納期厳守」である。品質やコストは顧客にとって当然の要求であり、その上で、どこよりも早く製品を提供するには、やり直しによる時間のロスを極力なくさなければならない。大田副社長は、コロナ禍以降に進めてきた省人化への取り組みを振り返りながら、今回の検査システム導入について「省人化と納期厳守、品質保証を実現した成功事例である」として高く評価する。
さらに同社では、顧客の印刷立ち会いや工場見学でも、この検版体制を品質保証の仕組みとして紹介している。「当社では、このような仕組みで品質を保証しています」と実際の工程を示すことで、他社にはない取り組みとして評価を得ている。
CorrectEye SISを刷り出し検版から抜き取り検査へ
同社は現在、CorrectEye SISを主に印刷開始時の「刷り出し検版」として活用している。しかし、印刷は開始時点では問題がなくても、その後、版に埃などが付着すれば、文字欠けをはじめとする不良が途中から発生する可能性がある。
そこで同社が次のステップとして見据えているのが、印刷途中で印刷物を抜き取り、CorrectEye SISで確認する「抜き取り検査」への展開である。
すでに現場では、オフセット印刷だけでなく、シルクスクリーン印刷などでも現物同士を比較し、人の目では捉えにくい微細な文字の異常などを検出。不良を早期に発見したことで、廃棄枚数を最小限に抑えられたケースも出ているという。
現在、同社では2台のCorrectEye SISを運用しているが、現場からは「印刷機1台につき1台欲しいくらい」との声が上がるほど活用への期待は大きい。一方、抜き取り検査をさらに定着させるには、高速で稼働する印刷機に対し、どのタイミングで抜き取り検査を行えば生産性を損なわず、不良品の流出を最小限に抑えられるかという運用面での検討も必要となる。
工場長は「刷り出しだけでなく、途中の抜き取り検査にもどのように役立てていくか。どのタイミングで検査すれば、不良の流出を最も抑えられるのかを確立していきたい」と今後の展開を展望する。
版下、面付け、RIP、そして実際の印刷物へ―。人の目と経験に依存していた検版を自動化し、プリプレスから印刷までを一つの流れとしてつないだ上六印刷。今後はさらに抜き取り検査へと守備範囲を広げ、「不良をつくらない、不良を流さない」品質保証体制を一段と進化させていく考えだ。










































