社会貢献活動にも効果〜PO糊で環境配慮と効率化を実現
オフセットを主軸とした商業印刷・出版印刷、さらにはデジタルを活用したオンデマンド印刷など、あらゆる印刷サービスに対応する総合印刷会社として展開する(株)研文社(本社/東京都新宿区、網野勝彦社長)は、印刷品質だけでなく環境に配慮した印刷物提供を強みとしている。その同社では、さらなる環境配慮と労働環境改善を目的に既設の無線綴じ製本機で、パラシュート(株)が提供する無線綴じ製本専用ポリオレフィン糊(PO糊)を採用し、稼働を開始した。今回、同社・尼崎工場(兵庫県尼崎市)の河田和弘工場長、生産管理課の村上隼耶課長、そして西日本営業本部の曽我部秀機理事にPO糊を採用した背景や導入後の成果などについて聞いた。

同社は、1946年5月に創業し、本年5月1日に創業80周年を迎えた歴史と伝統を有する総合印刷会社。近年では、CO2排出量の見える化でカーボンニュートラルに対応する「環境配慮型プリント」、見やすさ・わかりやすさ・伝わりやすさを重視して円滑な情報伝達を手助けする「ユニバーサルコミュニケーションデザイン(UCD)」のサービスを積極的に展開し、印刷ビジネスを通じて持続可能な社会の実現に貢献している。
その同社の生産拠点である尼崎工場は、カタログ、ポスター、パンフレットなどの商業印刷物、そして取扱説明書、自動車などのメンテナンスノート等のマニュアルを中心に生産している。さらに2012年からデジタル印刷に取り組み、2023年にはデジタル印刷部門を強化し、ワンオペレーションによる「デジタル印刷機+製本加工(無線綴じ)ライン」を構築し、稼働を開始している。
また、「人にやさしく、地球にやさしく」をテーマに労働環境改善と環境配慮型印刷への取り組みにも積極的に取り組み、2023年には、(一社)日本印刷産業連合会主催の環境配慮への取り組みを評価・表彰する「第21回印刷産業環境優良工場表彰」において、最上位賞である「経済産業大臣賞」を受賞。2026年には、工場屋上に太陽光発電パネルを設置し、全国で最も人と地球にやさしい印刷工場の実現を目指している。

労働環境改善に向け資材を見直し
その環境に配慮した印刷を強みとする同社が、なぜPO糊を採用したのか。その点について、河田工場長は、「当社は、2017年に印刷産業環境優良工場表彰受賞に向け、環境配慮への取り組みと同時に、労働環境改善にも取り組むこととした。その取り組みとして、現場スタッフの労働環境が少しでも改善するようにVOC削減を進めるにあたり、無線綴じ製本機で使用しているEVA糊独特の臭気を改善したいと考えていた」と説明する。
同工場では、オフセット印刷機を設備する印刷工場とデジタル印刷機+製本加工ラインを設置するデジタル印刷ルームに、それぞれ無線綴じ製本機を設置しているが、とくに現場スタッフから改善要求があったのは、デジタル印刷ルームだ。

「オフセット印刷工場は面積も広く、また天井も高いため臭気が拡散し、それほど気ならない。しかし、デジタル印刷ルームは、コンパクトなエリアのため臭気がこもりやすい」(村上課長)
脱臭機を設置するなどの対策を講じてみたが、期待するほどの効果を得ることはできなかったという。EVA糊の代替資材を模索していた河田工場長だが、なかなか同社の要求を満たす糊に巡り合うことはなかった。そんな時に曽我部理事から、「EVA糊より若干のコスト高になるが、製本加工適正に優れ、またPUR糊ほど扱いづらくない糊がある」とパラシュートが提供するPO糊の紹介を受け、サンプル品を入手した。
PO糊は、EVA糊の設備で製本することが可能で、接着強度についてはEVA糊より大幅に強くなるため、製本した本を大幅に開くことが可能。また、現在使用している製本設備でも問題なく使用することができる。また、これまでは海外製品であったため、供給体制に若干の課題があったが、2026年3月から国内生産が開始されたため、その問題も解消している。

その提案を受け、河田工場長は、今年3月にテストを実施。テスト実施にあたり現場からは、資材変更に対する抵抗と不安があったと村上課長は振り返る。
「臭気はあるが作業上問題がないのに、なぜ替える必要があるのか。また、新たな資材を使うことで今までと同等の作業ができるのかなどの疑念があったと思う」
しかし、「チャレンジしてみなければ判断できない」と現場スタッフもテストを了承。まずEVA糊が装填されている糊窯を清掃し、改めてPO糊を充填してテストを開始。テスト当初は、糊窯のEVA糊の成分が完全に落としきれなかったため、品質に影響が生じていたが、続けていくうちに成果が出てくるようになった。
臭気改善のほか作業性向上やコストダウンに効果
テスト結果を踏まえ河田工場長は、「一番の魅力は、PUR製本に近い本の開きができること。無線綴じ冊子は、喉元が開きにくく片手で冊子が持てないことがデメリットであった。しかし、開き幅が広いPO糊は、このデメリットを改善してくれる」とPO糊を評価している。
また、当初、課題とされていたEVA糊とのコスト差もPO糊は、使用量を抑えて製本加工ができるため、トータルコストで遜色がないことを確認。とくに糊キレの良さは効果的で、機械停止の回数が減り、生産性が向上した。その結果、作業時間の大幅短縮にもつながっている。臭気もなく、加工品質にも優れていたPO糊は、現場からの評価も高く、すぐにでも入れ替えて欲しいとの意見が占めた。また、資材変更に伴う顧客の品質確認も問題がなかったことからPO糊の導入を決断。2026年5月から同工場で設備している2台の無線綴じ製本加工機でPO糊による製本加工を開始した。
導入後、メリットである「開きやすさ」が影響し、本の喉奥まで開いてしまい、ガリ目と呼ばれるミシン目が見える事象が発生した。品質上は問題ないが、担当営業より「見栄えが悪い」との指摘を受け、改善に着手した。最終的に糊を今まで以上に刷り込むことで、この問題を改善。刷り込み量が増えたが、背中に盛る糊量は大幅に削減できたため、トータル使用量は削減できたという。
社会貢献への取り組みにも寄与
村上課長は、社会貢献への取り組みにもPO糊は、役立っていると説明する。
「当社は、情報弱者の方々を取り残すことなく、情報を伝えるためにユニバーサルコミュニケーションデザイン(UCD)に積極的に取り組んでいる。この取り組みは印刷が主体だが、コストを抑えつつPUR製本同等にストレスなく、誰にでも開きやすい冊子を提供できるPO糊は、その製本版といえる」と労働環境改善、品質向上というメリットだけでなく、実際に成果物を使用する一般ユーザーともメリットを享受できることも大きな成果だと説明する。
国内生産による安定供給という強み
昨今の混迷する世界情勢下、印刷産業に留まらず、すべての産業で資材供給などに影響が生じている。国内生産のPO糊は、その資材供給対策の1つだという。

同社では、大手自動車メーカーのメンテナンスノート、つまり取扱説明書を受注している。この取扱説明書は、単なる冊子印刷物ではなく、自動車の部品として位置付けられており、欠損している場合は、欠陥品となり自動車を出荷することができない。つまり納期が間に合わなければ自動車の出荷が停止し、クライアントのビジネス自体をストップさせてしまう。それほど重要な印刷物だ。
環境配慮、労働環境改善と作業効率の向上、製本としてのUCD対応、そして資材の安定供給によるクライアントへの貢献など、PO糊の導入は、同社のビジネスの成長・発展、そしてクライアントや社会への貢献活動に想定以上の大きな成果をもたらしている。










































