太陽機械製作所、「水性後糊圧着はがき加工機」開発
操作性と効率性を凝縮〜ワンオペにも対応、生産現場の課題解決
独自機構で「スキルレス」を追求
TPMは、印刷・可変印字されたロール紙に水性エマルジョン疑似接着剤を表裏から塗工し、乾燥、加工、圧着までをインラインで行う。最大紙幅450ミリ、最大加工幅420ミリに対応しており、最高機械速度は毎分120メートル。常用生産速度でも毎分80~100メートル程度での生産を想定しており、V折、Z折の双方に対応する。機械全長も約11.5メートルとコンパクトで、操作性と効率性を凝縮することで、ワンオペレーションにも適している。
その中でも、同社が強みとして打ち出しているのが、圧着条件を簡単に調整できる独自の油圧機構である。
圧着はがきの加工では、単に一定の圧力を加えれば常に同じ仕上がりになるわけではない。気温や湿度によって水性糊に含まれる水分の揮発量などが変化するため、夏場に最適だった条件が冬場にはそのまま通用しないケースもある。さらに、完成品を開封する際の「剥離強度」についても、軽く剥がれる仕上がりを求めるユーザーもいれば、ある程度の強さを求めるユーザーもあり、要求する品質に応じた調整が必要になる。
従来、こうした条件出しにはオペレーターの経験やノウハウが求められ、条件が合わなければ機械をいったん停止し、圧力を物理的に調整するなどの作業が必要になるケースもあった。しかしTPMでは、この煩雑さを解消するため、運転中でも圧着圧力を調整できる油圧機構を採用。生産を止めることなく、その時々の条件や求める剥離強度に合わせて調整できるようにした。

この機構の確立に向け、同社では検証機による長期間のテストを重ねてきた。温湿度などの環境条件が変わった際に、圧力をどのように変更すれば仕上がりがどう変化するのか。その関係を一つひとつ検証し、安定生産につながる条件を蓄積してきたという。
中野課長は「以前と同じ条件で加工しても、季節が変われば同じ結果になるとは限らない。そのたびにオペレーターが一から条件を探り直すのではなく、『こう調整すれば、こう変わる』というところまで検証を重ねてきた」と説明する。
また、ユーザーごとに異なる剥離強度への対応についても、複雑な機械調整ではなく、容易な操作で変更できるよう配慮した。こうした機構によって、熟練オペレーターの勘や経験に依存していた条件出しを可能な限り簡素化し、誰が扱っても安定した加工品質を得られる環境を目指した。
「操作性と効率性を凝縮し、ワンオペレーションにも適した機械にしたことが、一番伝えたいところ」と中野課長。人手不足が深刻化する後加工工程に対し、TPMは「スキルレス」という明確な回答を提示している。
通常用紙を活用、ランニングコストを大幅低減
TPMがユーザーにもたらす大きなメリットの一つが、水性後糊方式によるランニングコストの低減である。同機では一般的な上質紙やマットコート紙を使用し、印刷後に水性エマルジョン疑似接着剤を塗工することで圧着DMを生産する。高価な専用紙を必要としないため、用紙コストを抑えられるほか、先糊用紙の在庫を抱える必要がなくなり、用紙管理の自由度も大きく高まる。
中野課長も「先糊用紙と比べると、コストはかなり抑えられる」とそのメリットを強調する。実際の削減幅は使用する用紙や仕事の条件などによって異なるものの、同社では水性後糊方式による低ランニングコストをTPMの重要な訴求ポイントに位置付けている。
さらに、使用するのはVOC(揮発性有機化合物)の排出が極めて少ない水性エマルジョン疑似接着剤。通常用紙を活用できることで、専用紙の使用期限に起因する廃棄ロスの削減も期待でき、コストと環境負荷の両面から生産現場の改善につなげる。
水性後糊方式は、圧着前の印刷工程にもメリットをもたらす。先糊用紙ではカラー印刷に制約が生じる場合があるのに対し、通常用紙にあらかじめ印刷してから糊を塗工する後糊方式では、印刷物に求める表現に応じた用紙を選択しやすい。例えば自動車や紳士服関連など、見栄えを重視するDMではニスコーティングによる圧着も使われているが、その分コストは上昇する。TPMは、そこまでの光沢感を必要としない案件に対し、仕上がりとコストのバランスを取った新たな選択肢を提示する。
さらに、多品種化するDMとの相性も抜群である。デジタル印刷機で一つのロール内に異なるデザインや内容のDMを連続して印刷し、そのままTPMで圧着加工することができるため、同じものを大量に作る仕事だけに限定されない。リフォーム、新築、各種販促など、送り手や訴求内容の異なる複数の案件を一つのロールに組み込み、連続して加工するといった生産にも対応できる。
つまり、TPMが提案するのは単なる用紙代の削減だけではない。通常用紙をベースに、デジタル印刷の多品種対応力と水性後糊加工を組み合わせることで、圧着はがきの仕事そのものをより柔軟にすることができる。
中野課長は「デジタル印刷機とセットで設備することで、仕事の幅も広がっていく」と説明しており、コスト削減と新たな仕事への対応力を併せ持つことが、TPMの大きな提案価値となっている。
ユーザーの「生の声」を反映しながら進化
同社では今後、山形工場に設置したTPMの実機を活用し、圧着はがきを手掛けるユーザーにその操作性や生産性、仕上がりを実際に確認してもらいながら、市場への浸透を図っていく考えだ。
今回の開発では、机上で機械の仕様を決めるのではなく、営業担当者が実際の生産現場へ足を運び、ユーザーがどこに負担を感じ、何に困っているのかを聞き取ることを重視してきた。その声をもとに前述の「スキルレス」「段取り・調整時間の短縮」「ストレスフリー」という3つのテーマを掲げ、検証機によるテストを積み重ねながら製品へと結実させた。
その姿勢は、製品化した現在も変わらない。中野課長は「お客様の本当の生の声を聞いて、われわれがやってきたことが正しかったのかも見極めていきたい」と話す。実際の生産現場で使われることで初めて見えてくるニーズや改善点を吸い上げながら、今後の提案や製品づくりにつなげていく考えだ。
その中でも、同社が期待するのが、デジタル印刷設備を持つユーザーへの提案である。「デジタル印刷によって多品種の印刷物を効率よく生産できる環境が広がる一方、その後工程をいかに省人化し、短納期で安定して処理するかが重要。そこにTPMを組み合わせることで、圧着DMという新たな仕事を取り込み、既存設備を生かしながら受注領域を広げることも可能になる」(中野課長)
多品種・短納期と人手不足が進む中、求められるのは単に速い機械ではない。少ない人員で、経験に左右されず、安定して仕事をこなせる生産設備である。それを実現するTPMを活用することで、圧着はがきの生産現場は大きく改善されることになりそうだ。










































