芳野YMマシナリー、「変革を楽しめる」風土へ〜新たな柱となる「太陽」生み出す
新社長インタビュー 髙橋 淳哉 氏
市場変化に応える省人・省力化
製本業界では人手不足や熟練技術者の減少をはじめ、多品種・小ロット化など、生産現場を取り巻く環境が大きく変化している。とりわけ大型無線綴じラインを主力とする同社にとって、設備の小型化という市場トレンドは避けて通れないテーマである。
一方、競合メーカーの廃業や事業撤退などを背景に、大型製本設備について芳野YMマシナリーに寄せられる相談は増えており、新たなユーザーの獲得にもつながっている。
しかし、髙橋社長はそれだけで市場全体の落ち込みをカバーできるものではないと冷静に分析しており、現在の市場に合わせた開発に力を注いでいく考えだ。
「省人化・省力化に貢献する装置や、小ロットに対応した機械の開発を進めている。すでにお客様に使用していただいているものもあれば、現在開発を進めているものもある」
その領域は、従来型の製本設備だけにとどまらない。同社が保有する技術を生かし、製本業界以外を対象とした装置開発も進めている。
その拠点として同社は群馬県前橋市に「Maebashi Technical Labo R&D事業部」を数年前に創設。ここでは、ユーザーごとのニーズに応じた専用機の開発を手掛けている。当初は一品一様の案件だったものが、リピート受注につながるケースも出始めた。
中でも近年、需要が伸びているのがトレーディングカード関連だ。カードフィーダーや袋詰め工程などの周辺設備で受注が増えており、今後も拡大を見込んでいる。
もう一つ、同社が新たな可能性を見いだしているのが検査装置である。
「製造現場には、今でも人が目で見て判断している検査工程が多く残っている。そこを装置に置き換えられないかという取り組みを進めており、多くのお客様から興味を持っていただいている」
省人・省力化はもちろん、人の目だけでは発見しにくい不具合を検出することで、検査精度そのものを高めることにもつながる。現在開発中の案件でも、実用化への手応えが見え始めているという。
「一番の強み」はカスタマイズとメンテナンス
こうした新しい装置開発で生きているのが、長年培ってきた「カスタマイズ力」だ。
「無線綴じ一つを取ってみても、お客様によって本も紙も違えば、求められる品質レベルも違う。当社はこれまでも、それぞれのお客様に合わせて機械をカスタマイズしてきた。その考え方は、新しい分野の製品でも同じである」
また、髙橋社長がカスタマイズ力とともに、同社の競争力を支えるもう一つの柱として挙げるのが「アフターサービス」である。国内では大阪と埼玉にサービス拠点を構えており、トラブルが発生すれば可能な限り現場へ駆けつける体制を整えている。
「例えば、お客様もクライアントに『少年ジャンプの発売日を月曜日から火曜日にしてください』とは言えない。お客様にとって製本設備が止まるということは、それだけ切迫した問題である。物理的にどうしようもないケースは別としても、何とか応急処置でも動かす。その姿勢で現場の社員は対応している」
このような姿勢がユーザーからの信頼につながり、同社の大きな強みになっている。
一方、海外市場の拡大にともない、国内と同様のサービスを海外でいかに実現していくかも課題となる。これには、現地代理店への技術教育を進めるとともに、リモートによるメンテナンスなどで取り組む。
「買っていただいたお客様に不便な思いをさせたくない。その思いは国内でも海外でも変わらない」
IGAS2027で「これまでとは違う芳野ブランド」を発信
そして、新体制となった芳野YMマシナリーにとって大きな節目となるのが、来年8月に開催される「IGAS2027」である。
現時点では、具体的な出展製品について明らかにしていないが、すでに複数の新商品開発が進行しているほか、他社とのアライアンスによる開発案件も動き始めているという。
「現在の市場に合った商品、省力化に貢献する機械を何かしら披露したい。従来の主力製品は大型設備が中心だが、IGAS2027では『これまでとは違う芳野ブランド』を発信できればと考えている」
開発テーマとしては検査装置のほか、無線綴じや丁合工程をサポートする装置、さらに従来機よりコンパクトな製本設備なども含まれているという。
「市場縮小を守りだけで乗り切るのでなく、市場が求める設備へと自らを変化させていく。その成果を示す舞台の一つをIGAS2027と位置付けている」
「星」に続く大きな「太陽」を
芳野YMマシナリーの製品には「VEGA」、「ALTAIR」、「DENEB」、「SIRIUS」など、星にちなんだ名前が数多く付けられている。
高橋社長は「当時、製品を開発した人間が現在はいないので、製品名の明確な由来は分からない」としながらも、大型無線綴じラインを中心に、これまで同社を支えてきた数々の「星」を大切に守り続けながら、現在取り組んでいる新製品・新事業を育て、将来はもう一つの大きな事業の柱へ成長させていきたいとの思いを語った。
「今あるいろいろな星が当社の一つの大きな柱になっている。それに加えて、今、取り組んでいる新しい製品や商品から、新たな柱となる『大きな太陽』を作りたい」
その先に描くのは、安定した売上と収益を確保し、社員が安心して働くことのできる会社。そしてユーザーに対して、これまで以上の価値を提供できる企業の姿だ。
「大型製本ラインという柱を守りながら、それに続く新たな大きな柱を作る。そして社員が安心して働ける会社にするとともに、お客様に対して業界ナンバーワンのサービス、ソリューションを提供できる会社にしていきたい」
100年を超えて受け継がれてきた「芳野ブランド」の技術と、顧客に寄り添う姿勢を守りつつ、同社は新しい市場、新しい製品、新しい仕事の進め方へ挑む。髙橋新体制のもと、芳野YMマシナリーは次代を照らす新たな「太陽」の創出へ歩みを進めていく。










































