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躍進企業REPORT

スマート・パッケージング・ソリューション社:「ナビゲート印刷」で1.6ミリ厚のソリッドボードに印刷

印刷ジャーナル 2017年12月15日
スピードマスター162XL-5+L
ひとつ前のジョブからの「ナビゲート印刷」(自動運転)

 ハイデルベルグ社(ライナー・フンツドルファーCEO)は、11月8日の「Packaging Day」開催(ウィスロッホ工場)にともない、同社印刷機で「Push to Stop」コンセプトに基づく「ナビゲート印刷」を実践する紙器パッケージ製造会社2社を巡るプレスツアーを催行した。今回はその1社、ベルギーのスマート・パッケージング・ソリューション社の取り組みをレポートする。

 スマート・パッケージング・ソリューション社は1989年、紙、段ボール、段ボール包装、ソリッド・ボード・パッケージ、厚紙コア、紙管、エッジプロテクタを生産するVPKパッケージンググループのソリッドボード部門として設立された会社。過去10年間において堅調な成長を遂げており、2017年1月にはソリッドパック社を買収し、同事業を強化している。
 ソリッドボードは、段ボールと違い、湿気の多い環境で使用するためのパッケージの素材として優れており、新鮮な肉や果物、野菜、魚、花や、それらを冷凍したものを保護し、輸送するのに最適なソリューションである。密度や滑らかさ、限られた厚さ、高い剛性、印刷適性に優れ、100%リサイクル可能だ。同社で製造されたソリッド・ボード・パッケージは、クライアントを通じて、日本を含む18ヵ国に輸出されている。

堅牢性と紙搬送機構評価

 新たな投資として、ハイデルベルグ「スピードマスター162XL-5+L」を導入したのは2017年2月。11月9日現在で累計およそ1,700万シートのソリッドボードを印刷している。機種選択のポイントになったのは、厚さ1.6ミリで堅い素材のソリッドボードの印刷に絶えうる機械の堅牢性とスムースな紙搬送機構だったという。
 従来使用していた他メーカーの印刷機では、9,000枚/時の印刷速度が限界だったが、スピードマスター162XLでは1万5,000枚/時で印刷できるものもある。これは、シリンダー径が大きいため、紙の反発が少ないことと、フィーダーが従来機より短いため給紙が安定するという2点が作用している。
 以前は、この仕事をフレキソ印刷で行っていた時代もあったが、ロットが少なくなるにつれて、とくに製版コストが嵩むようになり、現在はオフセット印刷へと切り替えられている。
 同社のもうひとつのポイントはロジスティクスだ。ワンパレットに最大800枚程度しか積めないことからその物流面は非常に重要になってくる。
 またそれだけの重い厚紙を印刷して積み上げた際、裏移りすることが懸念されるが、スピードマスター162XLはUV仕様ではない。そこで裏移りしそうな場合は、水性ニスを引いて裏移りを防止しているという。
 同社のスピードマスター162XLは、オフセット印刷の完全自動化を実現する「Push to Stop」コンセプトに基づく自動運転機能が搭載されているが、そのコア技術である「インテリスタート」が旧バージョンであるため、ひとつ前のジョブからの「ナビゲート印刷」(自動運転)のみを実現している。ただ、VLF機のため、ワンマンオペレーションとまではいかず、助手3名が付いて計4人で1台のオペレーションを担っている。
 刷り出しからOKシートまでは5〜10枚程度。パッケージの性質上、それほど色や品質は要求されないこと、またソリッドボードの1枚当たりの単価が高いため、損紙をその程度に抑える必要があるということだ。