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価値協創で新たな潮流|エイエイピー、Jet Press 750Sが新たなステージへ

2024年11月5日

顧客の課題解決に貢献〜価値創出と働き方改革をその能力で実証


 「人と、地域と、共鳴する。」〜さまざまなメディアを駆使したプロモーション支援を手がける(株)エイエイピー(本社/静岡市駿河区森下町3-6、土屋康一代表)は、同社内に組織された幅広い事業領域のプロフェッショナルが有機的に交わることで、社会や顧客の課題解決に取り組んでいる。その取り組みに印刷の分野で貢献しているのが富士フイルム製の枚葉型インクジェットデジタルプレス「Jet Press 750S(以下、Jet Press)」だ。同社では、このJet Pressの能力を最大限に活かし、顧客の課題解決と新たな価値の提供を実践している。

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左から大房氏、土屋氏、狩野氏


 同社は、熱海の旅館で支配人をしていた初代社長が1953年に創業。旅館の集客には印刷物で首都圏をはじめ全国にPRすることが必要だと考えたが、当時、地元には高品質な印刷物を依頼できる印刷会社がなかったという。そこで、自ら印刷会社を立ち上げたのが始まりである。

 創業当初はパンフレットやDMなどの印刷物が中心だったが、次第に館内・客室の備品の販売やペーパーバッグ(紙袋)、箸袋、お膳紙などの消耗品類、旅館で開催される各種イベントなど、旅館の集客支援を行う「総合広告商社」へと業容を拡大。その中でショッピングセンターや交通関連、メーカーほか一般企業の広報宣伝、販売支援も手がけるようになっていった。近年では、印刷物以外にも、イベント開催を始め、HPや動画の制作、Web広告、ドローンでの撮影、顧客管理、営業支援システムの開発・販売など、デジタル事業も積極的に展開している。

 現在では、「企画部」「観光戦略部」「デジタル推進部」「映像事業部」「プリントメディア事業部」「SB事業部」「ロジスティック事業部」の7つの専門組織を社内に組織し、各部門が連携することで顧客の課題や要望への対応を図っている。

 同社・取締役本部長の大房徹氏は「7つの事業領域を有していることで、業種やジャンルを問わず、すべての顧客ニーズに対し、対応できる事業体制を構築している」と、各専門組織が複合的に連携して企画・提案ができる自社の強みと特長について説明する。


オフセット印刷機による本機校正をJet Pressに移行


 その同社がJet Pressを導入したのは、2020年3月。その導入理由についてプリントメディア事業部技術担当部長の狩野真司氏は、「当時使用していたデジタルプルーファーの生産中止への対応」と説明する。

 「当時は、オフセット印刷機による本機校正とデジタルプルーファーを使い分けて色校正を行っていた。そのためデジタルプルーファーが使えなくなると本機校正だけに頼ることになる。その状況を避けるため、代替機の模索を開始した」

 さまざまなメーカーの機種を見学した末にJet Pressの導入を決断した要因として狩野氏は、「属人化の排除によるオペレータの負荷低減」と述べた上で「Jet Pressは、他社メーカーの印刷機と比べ、メンテナンスが簡単なのでオペレータの作業負担を軽減できる。また、印刷品質についても色がブレることがないので安定稼働を行うことができる」と説明する。

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Jet Press 750S


 校正出力におけるJet Pressの導入効果について、SP事業本部プリントメディア事業部事業部長の土屋晃彦氏は「オフセット印刷機による本機校正では、作業が早いオペレータでも1ジョブに30分かかっていた。そのため午前中に最大でも7本しかできない。しかし導入後は、サイズ的に出力できないものを除いても7割以上の校正でJet Pressが対応できるようになった。これにより本機校正に要していた時間を本生産に回すことが可能となり、結果的に作業効率が向上し、生産能力も確保できるようになった」と期待以上の稼働をしていると評価する。


新たな価値を生み出す戦略機としての活用へ


 当初、あくまでもカラープルーフ用途の設備としての認識であったJet Press。しかし、その能力について調べていく中で狩野氏は、印刷品質も高く、またデジタル印刷機ならではの生産の効率化が期待できると感じ始めていた。

 このため同社では、既設の菊半裁オフセット印刷機で印刷しているジョブをJet Pressに移行する戦略を計画。具体的には、2年を目処に菊半裁機で印刷していたものをJet Pressへの切り替えを実行し、その最終的なゴールとしてバリアブルポスターなど、価値を創出する新たな受注獲得を視野に入れた。

 こうして生産機としての役割も併せて導入に至ると、実際には計画よりも早い1年後には、菊半裁機を工場から搬出し、その分の仕事をJet Pressでカバーできる生産体制を構築。一方で特色を使用する受注案件については、協力会社での委託生産に切り替えるなど、生産現場のスリム化・効率化を図っている。また、スキルレス効果も生産能力の向上に寄与していると大房氏は説明する。

 「オフセット印刷機は、操作技術を有する2人のオペレータが必要となる。当社を含め多くの印刷現場では、オペレータの高齢化が問題となっている。そのためJet Press導入時は、新人のオペレータを担当させ、稼働を開始した。オフセット印刷機と比較して、Jet Pressはスキルレスな操作ができ、新人オペレータでも問題なく稼働させている」

 これは社内的にもJet Press導入が評価されるきっかけとなったという。

 同社における会社全体の売上比率では、約15%をプリントメディア事業部が占めている。生産設備では、オフセット印刷機2台を有しているが、1台あたりの生産性は、Jet Pressの方が上回る状況になってきているという。稼働基準としては、印刷サイズなどを踏まえ、オフセット印刷機とのコスト比率を考慮した結果、2,000通しまでのジョブに対し、Jet Pressでの生産を行っている。


Jet Pressで顧客の課題解決を実践した作品をIPAに応募


 その同社では、2023年度の「Innovation Print Awards(以下、IPA)」にJet Pressの能力を活かした作品で応募。IPAは、富士フイルムビジネスイノベーションアジアパシフィックが2008年から毎年開催しているデジタル印刷コンテストプログラムで、印刷物が作品として第三者の審査員によって評価されるプログラム。同社が出品した作品は残念ながら入賞には至らなかったが、同社の技術力を世界に向けて発信することができたという。

 IPAにエントリーした理由について狩野氏は、「当社の実力を広く知ってもらうこと、そしてIPAを通じて新たな顧客や企業との接点が生まれ、将来的には協力して価値を高め合うパートナーとして成長できればと考え、応募した」と説明する。

 同社が応募したのは、「かんなみ仏の里美術館『桑原薬師堂の仏像』図録」と「写真集 加藤 健:その生きた証」の2作品。「かんなみ仏の里美術館『桑原薬師堂の仏像』図録」は、平安時代から伝わる24体の仏像の写真を収めたA4判120ページの図録。初版時は、オフセット印刷で制作していたが、仏像の荘厳なイメージを表現したグレー背景の色調のバラツキが大きく、現物と画像データの比較や幾度にもわたる色調整や刷り直しなど、非常に多くの時間と工数、コストがかかっていた。この問題を一気に解消するために同社は、クライアントに対してJet Pressに切り替えた印刷を提案し、制作した。

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かんなみ仏の里美術館「桑原薬師堂の仏像」図録


 「オフセット印刷では、仏像の微妙な茶色のバランスなど、ブレが生じることがあった。しかし、Jet Pressでは、その現象もなく、安定した品質で提供できるようになった」(狩野氏)

 Jet Pressの導入を機に「高い印刷品質」のみならず「印刷工程の効率化」と「印刷コスト削減」を実現でき、重版の受注に至った。

 「Jet Pressでは、製本加工用の予備紙だけで済み、また微細な色表現が必要となることから、今までのオフセット印刷では刷り増しが生じ、本来やるべき仕事に支障をきたしていた。そのようなことが一切なくなったことはJet Press導入の大きな効果だと実感している」(土屋氏)

 「写真集 加藤 健:その生きた証」は、2022年に95歳で亡くなった写真家の加藤健氏の写真集。同作品の制作にあたって、加藤氏の奥様でクリエーターの博子氏から、過去の写真集(オフセット印刷)同等の印刷品質、300冊での納得感あるコスト、制作期間1か月という短納期での制作要望を受け、同社では印刷にJet Pressを採用。安定出力による準備時間の大幅削減、余剰用紙の削減、デザイン校了まで短納期対応が図れ、オフセット印刷と比較して約50%の工数とコスト削減を実現し、クライアントからも高評価を得られる作品に仕上げている。

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写真集 加藤 健:その生きた証


 両作品とも従来、オフセット印刷で制作していたものをJet Pressに切り替えたかたちだが、コスト削減や作業効率の圧倒的な向上、そしてクライアントの要望を完全に満たすなど、新たな価値と効果をもたらしている。


協創による新たな価値提供へ


 社内に7つのプロ集団を組織し、複合的な提案力で顧客支援を展開している同社であるが、近年では、内部のリソースや外部のリソースを含め、パートナーシップをもって顧客に価値を提供することも実践しているという。それは、一社単独ではなく、JV(共同企業体)型の活動だ。これまで競合が当たり前であった受注活動から、それぞれの強みを活かし合い、また苦手な分野を補うことでクライアントに新たな価値を提供する潮流が生まれていると大房氏は説明する。

 また、「協創」の流れは、対外的なものだけでなく、社内にも浸透してきている。これまで同社では、担当者が一人で仕事をこなすことが一般的であったが、現在では、チームで仕事に取り組むことを実践している。

 「一人で仕事を抱え込むことで負担が重なり、精神的にも肉体的にも疲弊してしまう。しかし、チームで仕事にあたれば、個人の負担は分散され、余裕が生まれる。その余裕を顧客への企画・提案活動に使うことができるようになる。これにより従業員に働きやすい環境を提供することができ、離職率の低減にもつながる」

 同社では、自社の苦手な分野を他社と協力して価値を創出する、このJV型の受注活動による「価値協創」で、顧客の課題解決支援に取り組んでいく方針だ。

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