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岩倉印刷紙業、品質と生産効率を担保しながら「環境対応」[アダマス採用事例]

2024年3月25日

厚紙5万枚以上の耐刷性〜製造過程でのCO2排出量ゼロへ


 「大ロット・短納期対応特化型」のパッケージ印刷事業に強みを持つ岩倉印刷紙業(株)(本社/大阪市天王寺区東上町2-25、岩倉大介社長)は昨年末、品質と生産効率を担保しながら「環境対応」を実践できる刷版工程の構築を目指し、エコスリーの高耐刷性ガム処理プレート「Adamas(アダマス)」を採用。年始5日からの稼働というタイトなスケジュールの中で、エコスリーのサポートによって安定した生産で立ち上がり、耐刷性については従来使用していた現像ありプレートよりも向上しているという。

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年始5日からアダマスを全面採用


大ロットを高い瞬発力で


 1967年に竣工した同社主力工場の郡山工場(奈良県大和郡山市池沢町321-16)は、800種類を超えるパッケージ印刷製品を手掛ける「大ロット・短納期対応特化型」の一貫生産工場だ。パッケージ印刷分野においても多品種、短納期化の流れが加速するとともに高レベルでの品質安定性が求められており、とくに納品先となる製造メーカーでも生産機の高速化を進めていることから、納期対応はよりシビアな状況にあるという。この流れを背景に同社では、大量生産のリピートオーダーに対し、品質を担保した製品を「如何に素早く、如何に効率良く、如何に低コストで応えるか」を追求することで、自社の強みを明確に打ち出すとともに、大手印刷会社との差別化をはかってきた。

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800種類を超えるパッケージ印刷製品を手掛ける

 この同社最大の強みについて、工場統括兼業務推進部長の梅本政資氏は、「大量生産に対応できる印刷会社はある程度大手に限定される。そこで財力にともなう設備や生産キャパシティでは太刀打ちできない。その中で当社が優位性を発揮できる強みは『小回りが利く』、いわゆる『瞬発力』の高さだと考える。仕様変更に対しても当社では工場で決裁できる『現場力』があり、クライアントにはこの『使い勝手』が高く評価されている」と説明する。

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梅本部長

 さらにグローバル企業である大手製造メーカーに対しては「環境対応」という視点は、もはや避けては通れない。そのため郡山工場は、環境ISO認証取得をはじめ、VOC放出量の低減を目指して2020年にUV専用工場へとシフトするとともに、産業廃棄物の徹底した分別とリサイクルの推進、都市ガスの閉栓、再生可能エネルギーの導入計画などに取り組み、製造過程でのCO2排出量ゼロを目指しており、クライアントの一歩先を行くサステナブル経営を実践していることでも知られる。

 現在、郡山工場では2台の菊全判7色コーターUV印刷機「Rapida106」(最高1万8,000枚/時)と9色+5つの加工ユニットを備えたフレキソ印刷機が2交代制のシフトで生産を行っており、とくにRapida106は、その高速性能を活かして毎時15,000〜18,000枚/時で運用、2020年に更新した打ち抜き機は毎時7,000〜8,000回転、糊付け機は220〜230m/分で、時間当たり約4〜5万個のパッケージ生産を行っている。

 「当社では、品質の安定を求めるがゆえに生産スピードを落とすようなことはしない。やはり営利事業を行う上で、どのような条件であっても品質を維持しつつ生産スピードを上げていくという姿勢が大切である」(梅本部長)

 UV専用工場への移行、高速機の導入、そして品質を担保した効率生産を追求してきた同社。機械台数を減らしつつも生産量を年々増加させることで、エネルギー消費量およびCO2排出量の削減効果を弾き出している。

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郡山工場では2台の菊全判7色コーターUV印刷機「Rapida106」が稼働


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2020年に更新した打ち抜き機


機上現像での不安要素を払拭


 今回の取材対象である刷版工程の見直しについても、年間およそ1万7,000版を出力していた既設のCTPセッターの使用年数が17年と老朽化し、メンテナンス契約の更新も難しい状況にある中、「品質と生産速度を維持しながら環境対応をはかる」というコンセプトでプロジェクトがスタートした。

 「環境保全を考慮する」となれば、まず当然のことながら「刷版工程の無処理化」という発想になり、その方が外部へのインパクトも大きいだろう。同社でも無処理版への移行を前提として独自調査に入ったという。しかし、同社の受注ロットは1万〜5万シートであることから、厚紙・パッケージ印刷における無処理版の耐刷性に不安要素が残った。加えて梅本部長は「刷版上で網点サイズの測定や検版を行う当社にとって、インキング時に非画線部分の感光層をインキのタックで剝がし取るという機上現像の仕組みは、本機での工程が増えるとともに、色合わせで使用する損紙が増加するという懸念もある。さらに、機械への影響にともなうリスク、オペレータの精神的な負担も加味すると、環境対応としては非常に魅力的な技術ではあるが、その決断には戸惑いが生じていた」と当時を振り返る。

 そこでひとつの選択肢として浮上したのが、エコスリーの高耐刷性ガム処理プレート「アダマス」だ。

 「アダマス」は、サーマル対応プレートセッターで露光後、専用のクリーニングユニットでガム液を用いて不要な塗布膜を洗浄除去することで、画像コントラストに優れた高品質の刷版を得ることができるガム処理方式のCTPプレート。アルミベースの上に、フォトポリマー層+保護層の2層構造になっており、高感度サーマルフォトポリマー技術の採用によって、同じガム処理方式のアズーラと比較して、プレートセッターでの生産性、印刷時の耐刷性ともに上回る性能を持つ。

 露光後のプレートの処理に使用するガム液のpHは中性であり、強アルカリ性の現像液は使用しない。アダマスプレート専用に開発されたクリーニングユニットはエコスリー独自のデュアルガムコンセプトを採用し、洗浄用ガム液と仕上げ用ガム液を使い分けることで、クリーニングユニットのメンテナンス周期の長期化と、処理後のプレートの版面保護の強化を実現しているのも大きな特長である。

 「強アルカリ性の現像液は使用しない」「損紙が増加する心配がない」「刷版上で網点サイズが測定可能」「機械メンテも従来通りでオペレータのストレスにならない」というように、機上現像に対する不安要素をすべてクリアする「アダマス」という新たな選択肢に全社が大きく傾いた。

 早速、テスト運用を開始。トーンカーブ調整、色のマッチング調整を行い、数ヵ月にわたって実機での印刷テストを繰り返し行った結果、CTP「アバロンN8-30」とともに「アダマス」の採用が決まった。

 「我々が条件とした厚紙5万枚の耐刷性を確認するとともに、版が剥がれやすい金や、地汚れが起きやすい研磨剤の多いインキでのテストもクリア。『変化』を求めながら『環境対応』をカバーしつつ、想定するリスクを最低限に抑えた刷版環境が実現した」(梅本部長)


エコスリーのサポート体制にも満足


 しかし、一方では設置導入が年末の3日間だっただけに、若干の不安もあったという。

 「年始5日からの稼働というハードなスケジュールを計画していたため、外注によるバックアップも一応準備していたが、その分、入念に準備してもらったお陰でまったくトラブルもなくスムースに立ち上がり、年始から安定した生産が行えた。待ち構えていた分、ある意味『拍子抜け』の感もあった」(梅本部長)

 導入からおよそ3ヵ月。その運用期間を経て、アダマスの評価はどうか。

 「事前にトーンカーブ、色調調整も行っていたこともあり、以前使用していた刷版と同様の印刷設定で色調差もなく再現できている。また、印刷オペレータと品質管理課からは、以前の現像あり版より耐刷性は向上しているという報告を受けている。いまでは立ち上げ時にあった不安要素をすべて解消され、ガム処理方式のアダマスを選択したことに間違いがなかったと確信している」(梅本部長)

 さらに、今回初の取引となったエコスリーのサポートについて梅本部長は、「導入前の打ち合わせ、印刷テストはもちろん、導入後も頻繁に訪問いただき、機械のコンディションの確認やヒアリング、トレーニングを行っていただいたお陰で、不安なく作業できている。刷版だけでなく、印刷現場にも足を運び、オペレータとも良好な関係を築いていただき、知識の向上にも大きく貢献し、感謝している」とし、エコスリーの営業、企業姿勢を高く評価している。

 一方、今年2月の「page2024」会期初日に開催されたエコスリーユーザー会にも初めて参加した梅本部長。「非常に刺激になった」との感想を語る。

 「同業他社がどのように生き残りを掛けて経営しているのかを肌で感じることができた。早速、自社に帰って営業部長を招集し、その内容について議論した。『全社が一丸となって利益を追求していく』という議論の場が持てたのもユーザー会のお陰である」とし、エコスリーの横の繋がりを意識したユーザー会運営も高く評価している。

 「ものづくりの基本は、意識を高く持ち続けること。その意識がなければ目標の実現はない。当社の最大の強みである『生産』に見合った設備の選択、それを使いこなす人材育成が最も重要と考えており、設備と人馬が一体となってさらなる進化へと繋げていきたい」(梅本部長)

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