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サンエムカラー、8K印刷をJet Press 750Sで再現

2024年2月13日

IPA2023で最優秀賞受賞〜インクジェットの新たな領域へ


 豊富に蓄積した印刷技術を組み合わせながら夢と感動をクライアント、さらにはエンドユーザーに伝える「芸術の工業化」に取り組んでいる(株)サンエムカラー(本社/京都府京都市)は、2023年度の「Innovation Print Awards(以下、IPA)」において、最優秀賞を獲得した。最優秀賞に輝いた「"SUN BOOK"by YOSHIROTTEN」は、同社がオフセット印刷で築き上げた「高濃度でダイナミックレンジが広く、シャドー側の表情が豊かな印刷」を枚葉型インクジェットデジタルプレス「Jet Press 750S(以下、Jet Press)」で実現した作品となっている。

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表彰セレモニーで記念撮影

 日本屈指の印刷技術を誇るサンエムカラーは、1985年の創業以来、印刷を通して文化・芸術に貢献することを使命として、常に技術力を研鑽し、文化財のレプリカ、写真集、展覧会図録などの高品位な印刷を手がけてきた。そのモノづくりにとことんまでこだわる姿勢は、多くの写真家やデザイナーなどから評価され、これまでにその卓越した印刷技術で美術書や写真集などを制作している。さらに創業者である松井勝美会長は、印刷業界では「匠」として知られる存在で、その職人の技と心で感動の印刷物をつくりだしている。そして、そのDNAは、同社の従業員すべてに受け継がれている。
 
 その同社が、初エントリーで最優秀賞獲得の快挙を達成したIPAは、富士フイルムビジネスイノベーションアジアパシフィックが2008年からアジア・パシフィック地域で毎年開催しているデジタル印刷コンテストプログラムで、富士フイルムビジネスイノベーション(富士フイルムBI)のプロダクションプリンター「Revoria Press」シリーズやインクジェットデジタルプレス「Jet Press」シリーズ、ワイドフォーマットプリンター「Acuity」シリーズなどを使って制作された印刷物が作品として第三者の審査員によって評価される。

 通算で16回目の開催となる今回は、アジア・パシフィックの11の国と地域から275作品の応募があり、その中から39の入賞作品が選出された。日本からは、13社20作品がエントリーし、4作品が入賞。「芸術関連製品」部門で第1位を獲得したサンエムカラーの作品「"SUN BOOK"by YOSHIROTTEN」は、中でも傑出して優れた作品に贈られる最優秀賞「Best Innovation Award 2023」にも選出された。

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複数受賞を果たした「"SUN BOOK"by YOSHIROTTEN」

 1月12日には、同社において松井会長のほか、今回の入賞作品制作に携わった篠澤篤史氏(水道橋営業所 所長)や大畑政孝氏(CDC事業部 マネージャー)らが出席のもと表彰セレモニーが挙行され、富士フイルムBIの木田裕士執行役員から記念トロフィーと表彰状が手渡された。
 
 表彰セレモニーの席上、挨拶した木田執行役員は、「今回の最優秀賞作品は、アートの分野においてデジタル印刷の有用性を活かしてさらなる価値が付加された優れた作品に仕上がっている。サンエムカラー様がこれまで培ってきたオフセット印刷技術とデジタル印刷技術を融合させることで、今までにない表現を実現している」と今回の入賞作品を評価するとともに、今後も優れた作品制作を呼びかけた。

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木田執行役員(左)からトロフィーを受け取った松井会長

 続いて挨拶した松井会長は、「私は、70年にわたりオフセット印刷に携わってきた。その中で目指してきたのは、『虹』のような色の表現である。そのため当社では、高精細印刷を超えた超高精細印刷として1,000線による8K印刷技術を確立した。今回の受賞作品は、その技術をJet Pressに応用展開している」と今回の作品制作に込めた想いを語った。


Jet Pressで独自の高彩度印刷を実現


 最優秀賞を受賞した「"SUN BOOK"by YOSHIROTTEN」は、デザイナーであるYOSHIROTTEN氏による、アート作品365点からなる展示会用アートブック。表紙や裏表紙、小口はメタリックに統一にしたことで重厚感のある金属製のオブジェを連想させる。表紙と裏表紙は、アルミ蒸着紙を使用し、また、小口断裁面には、箔押し加工を施すことで高級感を演出。さらに約6cmもある背表紙は、糸かがり(コデックス装)というむき出しのような仕様を採用することで、手で押さえなくても開いたままの状態を保つことができるようになっている。

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小口断裁面に箔押し加工で高級感を演出

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製本は糸かがり(コデックス装)を採用

 中面は、YOSHIROTTEN氏のアート作品365点を日付とともに印刷している。この印刷では、同社がオフセット印刷で培ってきた「高濃度でダイナミックレンジが広く、シャドー側の表情が豊かな印刷」をJet Pressで再現。デフォルト設定を一切使わず印刷データとICCプロファイルを絵柄や仕様によって作り込みを行い、さらにJet Press側に用意されている出力パラメーターを動かすことで「最も濃度が上がる設定」を探るという作業を繰り返して印刷している。

 多くのアートブックや写真集を手掛けてきた色修正のノウハウと、機械の性能を最大化するカラーマネージメント技術によって、Jet Pressの持つ色表現を最大限に再現でき、色域を広げたことで、一般印刷用紙「しらおい」に対しても高輝度インクのような印字表現を実現している。

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Jet Pressで独自の高彩度印刷を実現


 
 当初、同社では、オフセット印刷による8K印刷も検討したが、篠澤氏は、「実際にオフセットとインクジェットで印刷テストを行ったが、365部限定で、かつ12色のバリエーションある表紙であることから、コスト面を考慮するとオフセット印刷では非常に厳しいと判断した。また、テストサンプルで印刷品質の比較検証を行い、Jet Pressで問題ないことを確認した」と振り返る。


サンエムカラーとしてのデジタル印刷機を


 同社がJet Pressを導入したのは、2022年5月。「仕事は、楽しむことが大切」と語る松井会長は、「楽しいからこそ仕事に対し、一生懸命に向き合うことができる。今回のJet Pressについても楽しみながら運用していくことで、新たな可能性が生まれてくるはず」と新たな感動を生み出す生産機としての稼働に期待をかけている。

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篠澤氏(左)と大畑氏


 
 その想いを受け継いでいる大畑氏は、Jet Pressの導入に際し、「誰が操作してもボタンを押して、すぐに印刷できるデジタル印刷機」ではなく、高精細印刷のサンエムカラーだからできるデジタル印刷機としての運用を目指した。

 「当社では、1,000線によるオフセット印刷技術を確立しているため、標準スペックのままのデジタル印刷機では、品質に差が生じてしまう。そのため会長とも相談し、サンエムカラーとしてのデジタル印刷機を確立するために様々なカスタマイズを施している」(大畑氏)

 大畑氏は、Jet Press設置後、すぐにICCプロファイル作成や出力設定に着手。テスト出力などを経て、約1ヵ月でサンエムカラーとしてのJet Pressに仕上げている。その結果、より広い色域での印刷を実現している。オフセットとのカラーマッチングも高精度に行い、使用する用紙によって異なるが、平均値でデルタE1以下を達成しているという。

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Jet Press 750S

 松井会長も「オフセット印刷は、変動要素が多いが、デジタル印刷機では、それがほとんどない。今回の作品でも色の再設定や再出力などにも迅速に対応できた。その点については、デジタル印刷機の優位性を発揮できたと感じている」と評価している。


IPAでの最優秀賞獲得はスタートライン


 「"SUN BOOK"by YOSHIROTTEN」はその後、IPAでの入賞作品が自動エントリーされる「2023 ASIAN PRINT AWARDS」においても「Book Printing Inkjet部門」の金賞を受賞し、二重の快挙を成し遂げた。シンガポールで開催されたその表彰式には、篠澤氏と大畑氏が出席。翌日には、シンガポールのアーティストとの面談やアートブックの市場調査をするなど、今後のビジネス発展の機会につなげている。

 「一般的には本を作る経験を持つ人が減っているのか、我々からすると仕上がり具合が想定できる範囲のオーダーが増えている。一方で国内外の著名なブックデザイナーは、印刷の概念を超えた、単なる情報伝達のための本ではなく、体験型の本を制作している。特殊な製本をできる現場と本を作る、今後はそういった要素も貪欲に取り込んでいくことで本の価値観をさらに高めたものづくりに挑戦していきたい」(篠澤氏)

 「尖った印刷」、つまり他にはない独自性をもった面白い印刷を得意とする同社には、自然と尖った印刷を好む顧客が集まってくる。篠澤氏と大畑氏は、JetPressについて、その「尖った印刷」をオフセット印刷とは別の次元で実現できる生産機であると断言する。実際に今回の2つのコンテストプログラムでの入賞に端を発して、すでに「尖った印刷」の企画が数多く寄せられているという。

 松井会長は、IPAで獲得した最優秀賞受賞を同社のJet Press運用におけるスタートラインと位置付けている。
 
 「そのくらいの気概をもって挑んでいけば、印刷業界も変わっていくはず。『印刷』ではなく、『美術』、つまり美意識をもって仕事に取り組んでいくことが大切である。だからこそ、今回の受賞を新たなスタートと捉え、Jet Pressの運用に励んでもらいたい」と、最優秀賞受賞に満足することなく、さらなる成長を目指し、従業員だけでなく会長自身も含め、研鑽に努めていくことの大切さを語った。

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