PJweb news

印刷産業のトレンドを捉える印刷業界専門紙【印刷ジャーナル】のニュース配信サイト:PJ web news|印刷時報株式会社

トップ > 注目コンテンツ > 国府印刷社、DM関連ビジネスに可能性見出す[ピツニーボウズ社インサーター導入]

注目コンテンツ

国府印刷社、DM関連ビジネスに可能性見出す[ピツニーボウズ社インサーター導入]

2023年1月25日

封入・封緘作業を自動化〜大量受注でも短納期対応が可能に


 越前和紙の紙ファイルや色こより綴じなど、高付加価値商材の開発で差別化経営を打ち出す(株)国府印刷社(本社/福井県越前市、有定耕平社長)は、発送・郵送ソリューションのマーケットリーダーとして知られるピツニーボウズ社のインサーターを2023年1月に導入した。高速ダイレクト宛名印字機も同時に導入したことにより、大量受注時でも宛名印字から封入・封緘、発送作業までを短納期で誤封入なく対応が可能になった。さらに、将来的には越前和紙やバナナペーパーなどを使用したオリジナル封筒の開発を視野に入れており、DM関連ビジネスに新たな可能性を見出している。

kokufu_dm_202301_1.jpg

有定 社長


高付加価値商材の専門サイト「バリュアブルプリント.com」開設へ


 同社は社内に「企画部」を有しており、日常的に新商品開発を進めている企業。アイデアを出し合い、世の中に役立ち、興味を持ってもらえる商品づくりに全社一丸で努力している。「印刷+αのサービス」を提供することが同社の方針だ。新商品開発に注力する理由について有定社長は「展示会などで当社の新商品を知っていただき、それにより同業の印刷会社を含め、様々な業界の方との『横のつながり』を作ることを大切にしている。それが、最終的にビジネスにもつながると確信している」と説明する。

 これまで、同社は独自性のある高付加価値な商材として、色こより綴じによる「ポケットパンフレット」や、デジタル加飾により、自由度の高いメタリック表現を実現する「きらめき箔」などを企画してきた。さらに昨秋には、エコ.プレスバインダーを活用した名刺サイズの紙ファイル「エコファイル.ミニ」を開発。プレミアム・インセンティブショーで紹介し、来場者の注目を集めた。

 そして、同社はこれらの高付加価値商材をオンラインで販売するECサイト「バリュアブルプリント.com」を今年4月までに開設する。有定社長は「当初の予定よりも開設が遅れたが、エコファイル.ミニ、色こより綴じによるポケットパンフレット、きらめき箔、越前和紙やバナナペーパーなどを活用した高付加価値商材を専門とした通販サイトにする。エコファイルについては、印刷前の白紙での販売も計画している」と話す。販促ツールに悩む印刷会社をサポートするサイトになりそうだ。

 「コロナ禍で紙とデジタルの連携はさらに加速している印象がある。紙の役割が変わり、消滅する印刷物も出てくる一方、必要とされる印刷物は形を変えて残っていくと考えている。社内でアイデアを出し合い、他社にはないオリジナル商品の開発で差別化を図っていきたい」(有定社長)

 そのような中、同社が新たな可能性を見出したのがDM関連ビジネスだ。2023年1月に封入・封緘機とダイレクト宛名印字機を同時に導入したことで体制を構築し、page2023のテーマでもある「創注」を実現するためのパートナーとして活用していく。


検品のストレスから解放。大量受注でも短納期対応が可能に


 同社ではプライバシーマークの認証を取得しており、一般企業や自治体などから、毎年一定量のDMの仕事は受注していた。しかし、これまではそれほどの大量受注はなかったようで、封入・封緘、検品作業は製本部の女性社員が手作業で行っていたようだ。

 しかし同社は昨年、取引先から1万5,000部のDMを受注。これまでになかった大ロットであることに加えて、封入毎に条件が指定されているため誤封入は許されない。他の仕事も行いながらであるため、4〜5人で1週間かけて作業を完了したようだが、「何よりも大変だったのは検品作業である。4〜5人で丸1日かけて完了したが、社員も大変なストレスだったようである。そこで今後のことを考え、インサーターの導入を検討した」(有定社長)

 そして、いろいろ調べている中でヒットしたのが、ピツニーボウズ社の製品であったという。有定社長は「アメリカの会社であるが、世界130ヵ国以上、200万人以上のユーザーが採用しているということで、その抱負な実績に信頼感を抱いて導入を決めた」と話す。

 その中で、同社が選択した機種は「Relay7000」というデスクトップタイプの小型ながら、迅速処理、高い安全性を可能にするインサーター。自動化・機械化により作業者の負担を軽減し、人為的ミスを防止するだけでなく、バーコード照合による宛先単位の正確な封入、作業ログで稼働状況などを把握することもできる。角2や洋形封筒(ヨコ入れ)に対応しており、封入枚数やサイズでスピードは異なるが、最大で毎時5,400枚の封入・封緘が可能だ。このインサーターを活用すれば、同社が昨年に受注した1万5,000枚の封入・封緘作業でも数時間で完了できた計算になる。

kokufu_dm_202301_2.jpg

封入・封緘機「Relay 7000 inserting system」

 さらに、ペラの用紙をトレイにセットし、封入前に折り加工を行うことも可能である。二つ折り・四つ折り・内三つ折り・外三つ折りに対応している。トレイは全部で6つあり、最大で8枚まで封入できるという。有定社長は「上質紙やマット系の紙にも対応するので、マット系のチラシなども封入できる。返信ハガキなどの同封物を入れることもできるため、販促DMに活用できる」とその生産性の高さと幅広い用紙対応、そして同社の企画力と開発力を融合させ、DM関連ビジネスの受注を増やしていきたい考えである。

kokufu_dm_202301_4.jpg

折りユニット(右下)では二つ折り、四つ折り、内三つ折り、外三つ折りが可能


「パソコン、プリンターのような感覚」。簡易な操作性を評価


 ピツニーボウズ社のインサーターは、発送代行会社よりも、むしろ、自治体などに数多く導入されている。つまり、プロのオペレーターでなくても、一般人であっても簡単に操作できることを意味している。普段から印刷機や製本機の調整を行っているオペレーターであれば、操作は難なく行えそうだ。まさに、印刷会社が内製化するには最適なインサーターであると言えるだろう。

 カラーディスプレイのタッチパネルで簡単に操作することができ、有定社長は「パソコンやプリンターのような感覚で操作できる」と評価する。保存されたジョブを24件、ライブラリー内のジョブを18件、過去のジョブを8件まで自動設定できるという。

kokufu_dm_202301_3.jpg

タッチパネルによる簡単な操作性を評価

 さらに、有定社長が評価しているのは「PlanetPress」というバリアブルデータの作成ソフトである。同社はこれをオプションで導入することで、封入する内容や枚数が異なるジョブであっても自動でバリアブル封入することが可能になり、大量生産だけではなく、多品種少量の封入・封緘であっても作業の手間なく、容易に対応することができる。

 「バーコードで封入物のデータを読み取るため、万が一、封入漏れや2枚取りなどのミスが起きれば、自動で検知されて排出される仕組みになっている。このため、個人情報を含めたDMであっても、安心して当社に任せていただきたい」(有定社長)

kokufu_dm_202301_5.jpg

バリアブル封入が可能なシートフィーダー

 また、同社は高速ダイレクト宛名印字機も同時に導入したため、宛名印字から封入・封緘、発送までの一貫生産体制を構築したことになる。有定社長は「福井県は日本の真ん中にあるため、郵便も発送しやすい位置にあると考えている。このため、今回のインサーター導入を既存顧客にも周知し、PR・提案していきたい」としており、今後は同業の印刷会社からも、DM関連の仕事を積極的に受けていきたい考えだ。そして将来的には、越前和紙やバナナペーパーを素材とした封筒を自社開発し、それを提案することで独自性のあるDMビジネスを展開し、「創注」につなげていくという。


昨年にSBT認証を取得。環境に注力し、今夏にはFSC認証も取得へ


 同社は4月12〜14日に東京・池袋で開催される「プレミアム・インセンティブショー」に出展し、「色こより綴じ」や「きらめき箔」、「エコファイル.ミニ」など、昨年に開発した新商品を一堂に紹介する。また、「新たな新商品の紹介も考えている」と、有定社長にはさらに新しい構想があるようだ。

 同社は2022年末に、企業が環境問題に取り組んでいることを示す目標設定のひとつであるSBT(Science Based Targets)を取得しており、今夏にはFSCの認証も視野に入れているという。企業として環境にも積極的に取り組んでおり、環境にも配慮した高付加価値な新商品を見ることができるかも知れない。新たに開設する「バリュアブルプリント.com」も紹介する予定だ。また、同社の企画力とピツニーボウズ社のインサーターの機能の融合によるDM関連商材の開発にも期待したい。

特集
印刷×DX 2024
印刷×DX 2024

印刷業におけるDX戦略の最前線を特集。
(2024年7月15日)

パッケージ印刷ビジネス 2024
パッケージ印刷ビジネス 2024

パッケージ印刷の事業化に向けたソリューションや具体的な取り組み事例を紹介。
(2024年6月15日)

after drupa 2024
after drupa 2024

「drupa2024」出展企業の展示製品やソリューションについてシリーズで紹介。
(2024年6月25日〜)

AI・ロボット活用 2024
AI・ロボット活用 2024

印刷製造工程におけるAI(人工知能)およびロボット技術の活用について、その現状と可能性を探る。
(2024年6月15日)

印刷とサステナブル 2024
印刷とサステナブル 2024

印刷業界における持続可能な社会の実現に向けた取り組みにフォーカス。
(2024年4月25日)

drupa 2024 特集
drupa 2024 特集

世界最高峰の印刷・クロスメディアソリューション専門メッセ「drupa2024」の事前情報(見どころなど)を公開!
(2024年4月2日〜)

販促アイテム 2024
販促アイテム 2024

印刷会社が提案する「販促アイテム」
(2024年3月25日)

デジタル印刷特集 2024
デジタル印刷特集 2024

「生産工程の見直し」あるいは「創注」という印刷経営戦略としてのデジタル印刷ソリューションにフォーカス。
(2024年3月25日)

検査システムによる品質管理 2024
検査システムによる品質管理 2024

システマチックな検査工程で品質保証と効率化を目指す。
(2024年3月15日)

特集一覧へ
印刷関連のブログ
twitter|@PJnews_headline
twitter|@PJnews_headline

https://twitter.com/PJnews_headline

facebook|印刷ジャーナル
facebook|印刷ジャーナル

https://www.facebook.com/printingjournal