PJweb news

印刷産業のトレンドを捉える印刷業界専門紙【印刷ジャーナル】のニュース配信サイト:PJ web news|印刷時報株式会社

トップ > 注目コンテンツ > ニヨド印刷、「紙エコファイル」で脱プラ紙化商材の拡販加速

注目コンテンツ

ニヨド印刷、「紙エコファイル」で脱プラ紙化商材の拡販加速

2022年6月30日

販促EXPOで来場者に製品サンプル配布


 高知県にある印刷会社が「SDGs配慮型企業」を目指して脱プラ紙化商材の拡販を加速させている。環境に配慮した素材を活用したオリジナルノートやメモなどの紙製品を中心に事業展開するニヨド印刷(株)(本社/高知県吾川郡いの町、御庄康隆社長)は、今年4月に「エコ.プレスバインダー(紙ファイル専用機)」を導入し、針金や接着剤などを一切使用することなく、脱プラに貢献する紙ファイル「紙エコファイル」の量産体制を構築した。現在、ベーシックなコート紙やマットコート紙だけでなく、国産竹やバナナの繊維、食べられなくなったお米などを使ったエコペーパーを活用した紙エコファイルの開発に取り組んでおり、7月6日〜8日に東京ビッグサイトで開催される販促EXPOでは来場者に製品サンプルを配布する。

niyodo20220629.jpg

御庄 社長


エコ.プレスバインダー導入で量産体制構築〜SDGs配慮型企業に挑戦


「展示会に出展するたびに、来場者のSDGs貢献につながる商材へのリクエストは強まる一方であることを感じている」(御庄社長)。

 同社はここ数年、販促EXPOやP・Iショーなどに出展し、オリジナルで作成できるノートやメモ、カレンダーなどを紹介してきたが、昨今はこのようなニーズに対応するため、杉の間伐材を表紙に使った「木の中綴じノート」や、ヒノキの間伐材を表紙に使った「木のリングノート」、「ペーパーリング卓上カレンダー」など、環境に配慮したエコアイテムのバリエーションを増やしている。

 御庄社長によると、SDGsへの関心の高まりは首都圏や関西などの大都市だけでなく、地方にもその波は確実に押し寄せているようで、「高知県でも『こうちSDGs推進企業登録制度』という制度が2021年4月からスタートしていることからも、地方レベルでもSDGsを意識した動きが鮮明に出てきている」(御庄社長)と話す。

 同社では、このような社会ニーズに対応するため、環境マネジメントシステム「エコアクション21」の取得に向けてキックオフしており、早ければ今年度中にも取得していきたい考えだ。

 御庄社長は「建設業界では、『エコアクション21』の取得は入札時に加点されるため、高知県の建設会社のほとんどが取得しているという。残念ながら印刷会社にはこのような直接的なメリットはないが、エコアクション21の取得により、数値目標をレポートにして公開しないといけないという義務や、廃棄物やミスを減らさなければならないという動機付けにもなる。そして何より公的な認証のため、SDGs配慮型企業として国からの『お墨付き』がもらえることになる」としており、取得企業に求められる条件をクリアすることで、SDGsに貢献する企業としての中身を充実させていきたいとしている。


環境負荷の少ない「紙」と共に歩む企業としての使命感がきっかけに


 オフィスや学校の必需品である「クリアファイル」は、文具用品として大きなジャンルの1つに成長している。ただ、その多くはプラスチック素材の1つであるPP(ポリプロピレン)から作られており、昨今の「脱プラ」の観点からは素材を見直していく必要性に迫られている。

 御庄社長は「このクリアファイルをプラスチック製から紙製に置きかえることができれば、環境への負荷を減らし、持続可能な社会づくりに貢献できるのではないかと考えた」と紙エコファイルに取り組んだ経緯について話す。

 また、「当社は新型コロナが流行り始めた2020年の春頃から使い捨ての不織布マスクや持ち帰りの容器など、プラスチックごみの急増に危機感を覚え、紙製マスクケースの取扱いを開始したが、ここからの連想により、紙ファイルにも取り組んでいくべきとの思いがあった」(御庄社長)とのことである。

 御庄社長が紙ファイル専用の「エコ.プレスバインダー」の存在を知ったのは2021年の秋頃。四国で開催された印刷商社のフェアにおいて、卓上タイプが展示されていたという。

 「その時は触手が動かなかったのだが、社員に相談したところ思いがけず反応が良く、まずは卓上タイプを購入した。そして2021年秋のP・Iショーで紙エコファイルのサンプルを作成して展示したところ、来場者の反応が非常に良かった。そこで量産機を導入し、大量生産にも責任を持って受注できる体制を整えることにした」(御庄社長)

 そして今年4月、同社は紙ファイル専用のエコ.プレスバインダー、またこれと同時にロータリーダイカットシステムを導入した。これにより、小ロットの受注でも素早くクリアファイルの形状にカッティングし、紙エコファイルを生産できる体制を構築した。

niyodo20220629_2.jpg

紙エコファイルの量産機として導入した「エコ.プレスバインダー」

niyodo20220629_4.jpg

ロータリーダイカットシステムも同時に導入

用途によっては、クリアファイルにはない様々な優位性も


 「紙エコファイル」は上下2枚の特殊な歯型の間に紙を挟み、加圧することにより綴じる技術を応用した紙製ファイルで、針金や接着剤などを一切使用することなく、加熱もせず、紙のみが材料のエコなファイルとなっている。また、使い終わった後は、紙資源としてリサイクルできる。一度使ったファイルを古紙として循環させることで、新たに投入される木材の量を抑制し、森林資源の保存に貢献できる。

 このため、クリアファイルと比べて「環境」に良いことは当然なのだが、御庄社長は「クリアファイルと比べて破れや水濡れに弱い、価格が高い、中身が見えないなど、デメリットは多い。しかし、そこはしっかり説明し、納得してもらった上で購入していただけるようにしていきたい」としながらも、用途によっては、むしろクリアファイルよりも優れている点も少なからずあることを強調している。

 まず、紙製であるためプラスチック製と比べて丈夫さに欠けるというところだが、御庄社長は「クリアファイルを何年間も使い続けたいというニーズは意外と少なく、例えば営業先に資料を渡したいときなど、そのままでは渡せないため、一時的な収納物として使えれば良いという声も多い」と説明する。このような使い方なら、紙製ファイルで十分であろう。

 また、「絶対に突っ込まれるポイント」(御庄社長)という「中身が見えない」という特性であるが、これについては逆に「セキュリティ面」に優れているというメリットを強調する。プラスチック製のクリアファイルのように中身がみえないため、秘密情報や個人情報の保護に有効で、プレゼンテーション資料や見積書、契約書の手渡しなどにも安心という訳である。中身について、すぐに分かるようにしたいという場合は、鉛筆やボールペンなどで表紙に書き込みができることもクリアファイルにはない優位性である。また、付箋を貼っても取れにくいというのも嬉しいポイントと言えそうだ。さらに現在開発中の「白系のクラフト紙」を使用した半透明の紙エコファイルであれば、書き込みがなくても内容を確認することが可能になる。


様々なエコペーパーを使用したオリジナルな紙ファイルを開発


 環境保全活動やSDGsに積極的に取り組む企業が増える中、昨今は紙ファイルに取り組む印刷会社も増えてきている。そのような中、同社が他社製の紙ファイルと差別化を図っていきたいとしているポイントの1つは、「見た目」をクリアファイルと似せた紙ファイルにしていることだ。

 「消費者にとって、クリアファイルとは、下にギザギザの部分があって、指を入れる場所があるものだと認識されていると思う。これがないものは単なる『封筒』と認識されてしまう。そうではなく、消費者がクリアファイルと認識できる紙製のファイルを作っていくことが、紙ファイルの普及につながるものと考えている」(御庄社長)

 同社の「紙エコファイル」では、紙を伸ばして絡み合わせるというエコ.プレスバインダーの綴じ方の性質上、下部には必然的にクリアファイルのような「ギザギザ」が出る。また、やぶれ防止のためのギザギザの上の「▽」の切り込みもある。当然、指を入れて開きやすくするための切り込みは、ロータリーダイカットシステムによりカッティングされている。

 また、触った感じもクリアファイルに似せたいというニーズには、光沢感のある「ミラーコート」を素材とすることで対応が可能だ。「これは本当に紙なのですかと驚かれることも多い」(御庄社長)という。コート紙やマット紙のほか、茶色や白のクラフト紙もお勧めだという。

 「FSC森林認証用紙などの『環境に優しい紙』を使えば、エコアイテムとしての価値をより強く認識してもらうことができる。竹紙やバナナペーパー、kome-kami(コメカミ)など、環境問題にとどまらず、貧困など他の社会的課題解決にまで貢献するエコペーパーを素材とした紙エコファイルも開発し、差別化を図っていきたい」(御庄社長)

 また、サイズについても定番のA4だけでなく、A5の開発にも取り組んでいく。さらに(株)山櫻の提供するエプソンのプリンターではノーコート紙のインクジェット出力が可能なため、無地ファイルを提供することもプリンターユーザーに提案していくという。

niyodo20220629_3.jpg

様々な環境配慮素材を活用した紙エコファイルの開発に取り組む


販促EXPOで「紙エコファイル」のサンプルを展示


 同社は、7月6日〜8日に東京ビッグサイトで開催される販促EXPOに出展し、「紙エコファイル」をメインに、SDGsに貢献する様々な紙製品のラインアップを紹介する。

 「当社は今後、環境配慮型のノベルティーに印刷を関連付けたものを商材として組み立てたいと思っているので、紙エコファイルは大きな柱となる。社会的にも「脱プラ」は一大テーマであり、将来性もあると思うので、本気で取り組んでいきたい。販促EXPOでは、ブース来場者全員に『紙エコファイル』をお渡しできるように、たくさんのサンプルを用意していくので、ぜひブースに立ち寄ってもらいたい」(御庄社長)

 SDGs配慮型企業への変革を目指し、果敢な挑戦を続ける同社の取り組みが注目される。

特集
drupa 2024 特集
drupa 2024 特集

世界最高峰の印刷・クロスメディアソリューション専門メッセ「drupa2024」の事前情報(見どころなど)を公開!
(2024年4月2日〜)

販促アイテム 2024
販促アイテム 2024

印刷会社が提案する「販促アイテム」
(2024年3月25日)

デジタル印刷特集 2024
デジタル印刷特集 2024

「生産工程の見直し」あるいは「創注」という印刷経営戦略としてのデジタル印刷ソリューションにフォーカス。
(2024年3月25日)

検査システムによる品質管理 2024
検査システムによる品質管理 2024

システマチックな検査工程で品質保証と効率化を目指す。
(2024年3月15日)

page2024特集
page2024特集

「page2024」の事前情報を配信。開催テーマは「連携」。
(2024年1月22日〜)

2024年 ここに注目!
2024年 ここに注目!

独自戦略でアフターコロナ時代を躍進する企業、新製品、注目技術を紹介。
(2024年1月1日)

ダイレクトメール特集 2023秋
ダイレクトメール特集 2023秋

成長市場を追う─DMを新たな事業領域に。
(2023年12月15日)

印刷会社の創注
印刷会社の創注

「注文が来ないなら、創り出さなくてはいけない」というストレートなテーマ「創注」にフォーカス。
(2023年11月25日)

インクジェット特集2023
インクジェット特集2023

インクジェットテクノロジーが印刷ビジネスにもたらす新たな事業領域とは。
(2023年9月5日)

特集一覧へ
印刷関連のブログ
twitter|@PJnews_headline
twitter|@PJnews_headline

https://twitter.com/PJnews_headline

facebook|印刷ジャーナル
facebook|印刷ジャーナル

https://www.facebook.com/printingjournal