PJweb news

印刷産業のトレンドを捉える印刷業界専門紙【印刷ジャーナル】のニュース配信サイト:PJ web news|印刷時報株式会社

トップ > 注目コンテンツ > ユポ・コーポレーション、創業からの想いを「スーパーユポダブル」で実現

注目コンテンツ

ユポ・コーポレーション、創業からの想いを「スーパーユポダブル」で実現

2020年12月15日

長年の課題を克服〜紙と同様に印刷できる「ユポ」開発

 1969年5月、森林資源を守るため、木材に頼らない紙を開発することを目的に誕生した(株)ユポ・コーポレーション(本社/東京都千代田区、渡邉真士社長)。その同社が創業当初から取り組んできたのが、「すべての印刷会社で紙と同様に印刷できる合成紙の開発」だ。創業から51年の時を経た今年9月、その目標を実現した新製品「スーパーユポダブル」が完成した。今回、同社・営業本部の細川大介氏(営業部営業2グループマネジャー)と岡﨑源氏(営業2グループ)の両氏に、「スーパーユポダブル」が印刷会社にもたらす可能性などについて聞いた。

yupo_202015_1.jpg

細川氏(左)と岡﨑氏

 選挙用ポスターや各種メニュー表など、その耐水性や耐久性から広く社会で使用されている「ユポ」。しかし、印刷業界では、UV印刷を得意とする印刷会社が主に使用する資材として認識されている。一方、油性印刷を主軸としている印刷会社にとって「ユポ」は、「乾きにくい」「印刷しづらい」などの理由から使用を躊躇するケースが多いのも事実だ。

 しかし、その状況を一変する、ある新製品が2002年に同社から発売された。それは、片面対応であるが紙用油性インキで印刷できる「スーパーユポ」だ。この製品の登場により、市場における「ユポ」のシェアに大きなインパクトを与えることとなる。
 「その当時、ハンドリングが難しい『ユポ』は、限定された印刷会社様で使用されることが多く、そのシェアは確立されていなかった。しかし『スーパーユポ』の登場により、使いづらいといった印象を払拭することができた」(細川氏)

 今でこそ選挙ポスターに「ユポ」を使用することは、当たり前のような印象があるが「スーパーユポ」発売前は、他の機能性素材で印刷されていたケースもあったという。しかし、耐水性や耐久性に優れ、かつ紙用油性インキで問題なく印刷できるというメリットから、屋外で使用される選挙ポスターの印刷資材は、一気に「スーパーユポ」に移行していく。さらに、その機能性は業界内でも評価され、「ユポ」を使用する印刷会社も増加していった。

 また、この成功は同社内のモチベーションアップにもつながったと細川氏は振り返る。

 「それまで印刷会社様からは、厳しい意見が寄せられることが多かったが、『スーパーユポ』発売以降は、好意的な感想を頂けるようになった。これにより部署を問わず、全社的にその成功の喜びを分かち合うことができた」

両面対応という壁〜原点に戻り開発を継続

 「スーパーユポ」の発売により、同社が目指してきた一般の紙同等に扱うことができる合成紙の開発というゴールが目前に見えてきた。しかし、片面対応であること、用紙厚のバリエーションなど、その用途として考えると、まだまだ乗り越えなければならない壁が立ちはだかっていた。

 実は「スーパーユポ」は当初、両面対応として発売を予定していた。しかし、どうしてもクリアできない問題があり、苦渋の決断ではあったが片面対応として発売することとなった。

 市場からは、片面対応が可能となったことから、両面対応へのニーズも高まっていく。ユーザーからも「片面ができたのなら両面もすぐにできるはず」といった声も多く寄せられた。しかし、両面印刷で安定した印刷品質を担保する、という技術的なハードルは予想以上に高く険しいものであった。

 加えて同社内では、「片面対応だけで目的を果たせたと言えるのか」という意見があったという。

 「両面でも問題なく印刷できて、初めて一般の用紙と同じであると言える。それができて初めて市場から『ユポ』が紙として認められるはず」(細川氏)

 同社は、改めて原点に立ち返り、技術開発を継続。そして2002年の「スーパーユポ」発売から約18年の歳月を経て、遂に紙用油性インキで両面印刷が可能な合成紙「スーパーユポダブル」が完成する。

 「スーパーユポダブル」は、「ユポ」の持つ優れた耐久性、耐水性、印刷再現性といった基本特性をそのままに、専用の合成紙用インキを使用せずとも、紙用油性インキで両面印刷できる画期的な合成紙。また、同製品はバイオマス樹脂を一部配合したユポグリーンシリーズであり、CO2排出量削減にも貢献できる。

yupo_202015_2.jpg

印刷品質はコート紙とほぼ同等

印刷会社の味方「スーパーユポダブル」

 「スーパーユポダブル」が印刷会社にもたらすメリットについて岡﨑氏は、「紙用油性インキで印刷できるのでユポ専用インキが不要となり、インキ替え作業もなくなる」と、専用インキのコスト削減効果と作業負荷の低減を挙げる。

 また、岡﨑氏は、これまで扱いの難しさから「ユポ」への印刷を避けてきた印刷会社でも、紙に近い感覚で印刷できるので新たな受注拡大にもつながると説明する。

 これまで「乾きにくい」「印刷しづらい」などを「ユポ」に対して抱いていた印刷会社も多いはず。しかし、顧客側は、それでも「ユポ」を指定して発注する。つまり、顧客は、耐水性や耐久性といった「ユポ」の特性を理解・評価している証拠だ。印刷会社側も、そのニーズは把握していたが、技術的な問題から、やむなく受注を断念、あるいは「ユポ」への印刷実績が豊富な協力会社に委託生産していた。

 しかし、紙に近い感覚のハンドリングで印刷できる「スーパーユポダブル」であれば、従来の作業で印刷できるので「ユポ」指定案件以外でも「ユポ」の特性を生かせる案件に対し、積極的に「ユポ」を推奨することができるようになり、新規受注獲得につながりうる。そのため同社では、キャッチコピーに「印刷会社の味方」を掲げている。

yupo_202015_3.jpg

印刷会社の味方「スーパーユポダブル」

 また、速乾性、つまり従来の両面対応品と比較して乾燥時間が約半分になったことも、大きな特徴の1つだ。

 乾燥時間は、納期を左右する重要なポイントといえる。これまでは、乾燥時間の判断が難しく、納期に影響を及ぼす、また、乾燥状態を見誤ったことからトラブルが発生するなど、印刷会社にとって「ユポ」の乾燥時間は、未確定要素の大きいものであった。しかし、「スーパーユポダブル」では、この課題を大幅に改善している。

 「テストユーザー様では、重たい絵柄を表面印刷したあと、同日中には問題なく裏面印刷を行うことができた」(岡﨑氏)

UV乾燥装置がなくても簡単に印刷が可能に

 「ユポ」を上手く扱う印刷手法として、瞬時乾燥が可能な各種UV印刷が挙げられる。UV印刷であれば、乾燥時間もなく、また、パウダー散布などの必要がない。このため、「ユポ」の印刷に最適な設備といえる。しかし、UV印刷と油性印刷では、その印刷仕上がりに若干の相違がある。それはグロス感だ。油性印刷では、光沢感のある鮮やかな仕上がりとなり、一方のUV印刷では、油性印刷と比較すると、やや沈んだ印象に仕上がってしまう。実際に、生産性向上を目的に各種UV乾燥装置の導入が増加しているが、逆に油性印刷の仕上がり品質にこだわる印刷会社も少なくない。

yupo_202015_4.jpg

優れたインキ速乾性を実現

 油性印刷が可能な「スーパーユポダブル」は、グロス感を損なうことなく、鮮やかな印刷仕上がりを提供する。また、UV乾燥装置に関連する各種資材が不要のためコスト削減にも貢献できる。

 「一般的には、UV印刷が、『ユポ』に向いていると思われているが、実際には『ユポ』の特性を知った上での調整など、難しい作業が必要となる。しかし、油性印刷であれば、従来作業の延長なので紙に近い感覚で『スーパーユポダブル』を扱えるはず。そのため油性印刷を主軸としている印刷会社の皆様には、ぜひ、印刷テストを試して頂きたい」(岡﨑氏)

 各種UV乾燥装置を設備していない印刷会社でも、自信をもって「ユポ」を印刷することができる。加えて、印刷の網点太りがほとんどなく、コート紙と同様の優れた色再現性を実現する。これも「スーパーユポダブル」の特徴だ。

「使いづらい」から「使いやすい」資材に

 同社では、今後の販売戦略の1つとして、油性印刷を主軸としている印刷会社に「スーパーユポダブル」を提案していく。また、そのための施策として「スーパーユポダブル」による印刷テストも随時受け付けている。

 「印刷会社様で『ユポ』の仕事を受注した営業の方が現場から怒られた。これは嘘のような本当の話。そのため、お客様とのご商談時に、既に『ユポ』は、資材の検討対象から外されるといったことも現実にある。当社は、この状況を『スーパーユポダブル』で払拭していきたい。そのため印刷適性だけでなく、可能な限りの用紙厚もラインアップしている」(細川氏)

 同社では、「スーパーユポダブル」の使用用途について、とくに言及していない。それは「スーパーユポダブル」は、すべての印刷会社が使用できる資材であるからだ。

 「それぞれの印刷会社様が既存の印刷物に、あるいは新規受注案件の資材として『スーパーユポダブル』を活用できるので、アイデア次第で新たな付加価値創出にもつながっていくと思っている」(細川氏)

 現時点までに約200社で印刷テストが実施されているが、そのほとんどで「スーパーユポダブル」の性能が高く評価されている。

「環境経営」の方針を発表

 2020年10月に行われたWeb発表会において同社は、「ユポ・コーポレーションが果たす『環境経営』」として「温室効果ガス(二酸化炭素)排出量の削減に貢献する製品の拡充」「リデュース(減プラ)製品の提供および用途開発」「独自のユポリサイクルシステムサービスの提供」と3つの方針を打ち出している。これは、環境負荷低減に取り組み、顧客に製品、サービスを提供することで脱炭素社会、循環型社会の実現を目指していくもの。今回、発表した「スーパーユポダブル」は、バイオマス樹脂を一部配合したユポグリーンシリーズであり、CO2排出量削減にも貢献できる製品となっている。

特集
page2024特集
page2024特集

「page2024」の事前情報を配信。開催テーマは「連携」。
(2024年1月22日〜)

2024年 ここに注目!
2024年 ここに注目!

独自戦略でアフターコロナ時代を躍進する企業、新製品、注目技術を紹介。
(2024年1月1日)

ダイレクトメール特集 2023秋
ダイレクトメール特集 2023秋

成長市場を追う─DMを新たな事業領域に。
(2023年12月15日)

印刷会社の創注
印刷会社の創注

「注文が来ないなら、創り出さなくてはいけない」というストレートなテーマ「創注」にフォーカス。
(2023年11月25日)

インクジェット特集2023
インクジェット特集2023

インクジェットテクノロジーが印刷ビジネスにもたらす新たな事業領域とは。
(2023年9月5日)

印刷通販ビジネス2023
印刷通販ビジネス2023

印刷通販ビジネスの最前線を特集。
(2023年8月25日)

印刷×DX 2023
印刷×DX 2023

印刷業におけるDX戦略やメーカー・ベンダーによるDX構想・ソリューションなどを特集。
(2023年8月5日)

印刷×SDGs 2023
印刷×SDGs 2023

「SDGs」(Sustainable Development Goals)を印刷経営における重要な視点として、事例やソリューションを紹介。
(2023年7月25日)

特集一覧へ
印刷関連のブログ
twitter|@PJnews_headline
twitter|@PJnews_headline

https://twitter.com/PJnews_headline

facebook|印刷ジャーナル
facebook|印刷ジャーナル

https://www.facebook.com/printingjournal