LEDによる運用開始 〜 より高度な色評価体制の確立へ
音楽や映像、ゲームなどのエンタテイメントパッケージのデザイン・制作・製造を手がけている(株)ソニー・ミュージックコミュニケーションズ(東京都港区)は一昨年の12月より(株)エムティサービス東日本(東京都江東区)が販売する超高演色性直管LED照明「Tino4000RA98P」を色評価用の光源として採用した。今回、同社の二之方敦氏(生産管理本部 DGS 部長)と小椋王祐氏(生産管理本部 DGS アシスタント・マネージャー 兼 品質管理部)の両氏に導入の経緯などについて聞いた。
二之方氏
小椋氏
同社は、ソニーミュージックグループとして、年間で数千タイトルにもおよぶエンタメパッケージを制作している。近年では、プロモーションプランニング、販促ツール制作、グッズの企画・制作・販売、イベントの企画・運営、店舗や展示会などの空間プロデュース、さらにはWebサイトやアプリ制作といったデジタルソリューションなど、エンタテインメントを軸に様々なソリューションビジネスを展開している。
パッケージ制作については、フィルム製版から始まり、現在では、CTP、DDCPへのデジタル化へとシフトしている。また、印刷については、協力会社への委託となるが、パッケージ印刷や一般商業印刷を含め、約20社の印刷会社とカラーマッチングによる「色」の情報共有化を行っている。
課題は異なる光源下での色確認
その同社では、最終的な色評価の光源としてAAA色評価蛍光灯を採用する一方、クライアントとの色に関する共通認識については、独自の運用も併用しているという。
「クライアントをはじめ、多くのオフィス環境下では、一般的に蛍光灯が使用されているケースが多い。そのためクライアントとの色に関する確認作業では、三波長昼白色の蛍光灯で行い、最終的な色の確認の手段としてAAA色評価蛍光灯を使用して調整を行っている」(二之方氏)
同社としても、この運用形態が必ずしもベストとはしていないが、しかし、クライアント、制作を行う同社、そして印刷会社の3社間で色の情報を共有するには、この運用しかなかったという。
そんな時、ある転機が訪れる。一昨年、同社は現在のオフィスに移転している。その際にAAA色評価蛍光灯が使用できるように改修を行っているが、二之方氏は、将来的に蛍光灯自体が生産中止になることが予測されていることから、蛍光灯に変わる色評価光源としてLED照明の採用を検討するようになったという。
さらに、色評価光源としてLED照明の採用を後押しするかのようにグループ本社ビルのオフィスが、省エネを目的に蛍光灯からLEDランプへの切替を実施していった。
この流れを受け、グループ本社に設置されたLED照明のスペックを収集し、平均演色が同等であることを確認。これであれば、同社も色評価光源としてLEDランプを採用できると確信したが実現には至らなかったと小椋氏は振り返る。
「実際にその光源下で印刷物を見ると色がかなり違って見えていた。つまり、LED照明といってもメーカーなどにより、大きく光源が異なっていることが分かった」
色評価光源のLED化を諦めかけたとき、エムティサービス東日本から提案を受けたのが超高演色性直管LED照明「Tino4000RA98P」だ。
高演色性と再補正機能を評価
専用ルームに設置されたTino4000RA98P
Tino4000RA98Pは、光源に白色LEDと別波長3光源を加えた独自の4光源方式を採用。各波長の光源を調整することで、柔軟な光のスペクトル(分光分布)を生成できるため高い演色性を実現する。また、これまでの色評価用蛍光灯は経年劣化により、理想的な分光分布の継続が困難であったのに対し、業界初の再補正機能を搭載することで波長の再調整を可能としている。点灯方式はラピッドスタート形、インバーター形、AC電源タイプなどを選べるマルチタイプ電源方式を採用し、蛍光灯からLEDに変更する際の電気工事を省略できる。これにより従来の蛍光灯に比べ、半分以下の消費電力と長寿命により、交換の手間やランニングコストの削減に貢献する。
検証の結果、これまでのAAA色評価蛍光灯と同等の機能を有していることを確認し、採用を決定。また、Tino4000RA98Pは、設置後でも調整ができるという点も採用の大きな理由となったという。
高度な品質が求められるエンタメパッケージ
Tino4000RA98Pは、現在、同社の色確認用の専用ルームに10本設置されている。
「従来使用していたAAA色評価蛍光灯と同等の光源で確認作業が行える。また、当社と印刷会社の間で色調に関する差異が生じた場合でも、双方がTino4000RA98Pを設置した、この部屋で確認することで色について共通認識が持てる」(小椋氏)
パッケージは、商品を包むという本来の役割に加え、消費者の購入意欲をかき立てる視覚的効果が求められる。その中でも同社が手がけるエンタメパッケージは、ファンにとってパッケージ自体が内包されている商品と同等の価値を持っている。そのため、品質については一切の妥協が許されない。
「最終的に色を判断する人は、必ずしも一定ではない。アーティストが確認することもあれば、そのアーティストが所属する事務所スタッフ、あるいはデザイナーやカメラマンなど多岐にわたっている。そのため当社としても柔軟かつシビアな色の確認作業が求められる。その点においてTino4000RA98Pは、効果を発揮していると思う」(二之方氏)
現在、同社では、より高度なクオリティが求められる印刷物については、色評価光源としてTino4000RA98Pを使用している。