マツモト、輪転インクジェットで卒業アルバム - SAMBAの写真再現性
富士フイルムの輪転IJプレス「Jet Press 2150CFG」前身機種導入事例
納期対応と利益率向上に寄与〜「小中ロットを連続で効率良く回す」
オフセットなら3日、輪転IJなら1時間
「輪転IJで卒業アルバム」。もちろん、そう簡単ではない。同社では定着、乾燥との戦いにおいて、インク、紙、ニスなど、多岐にわたる資材を検証。「試行錯誤の連続だった」(松本社長)と振り返る。
「アルバムの場合、レイフラット製本で紙を貼り合わせるため、印刷で定着が良くても、定着を促進させる特殊加工を施した紙だと、糊を弾いてしまい、製本で不具合が出るケースもある」(松本社長)
ただ、この苦労の先には、印刷ビジネスにおけるブルーオーシャンが広がっているようだ。
「とにかくクライアントには時間がない。我々が定義する小中ロットは100〜1,000部程度だが、自らの納期が迫ったクライアントは料金がオフセットより遥かに高くなっても5,000〜1万部を輪転IJで注文する。アルバムなら折りまで、商印なら無線綴じまでをインライン化している狙いはそこにある」(松本社長)
また、木下工場長も「近年、クライアントからの入稿が遅れがちで、納期が集中する傾向にある」とした上で、「卒業アルバムの場合、12月から3月が繁忙期。こうなると、それぞれの工程を経て3日がかりで完成するオフセットでは対応できない。印刷から折りまでがインライン化されている輪転IJでは、これを1時間でこなす」と説明する。
ちなみに同社の富士フイルムの輪転インクジェットプレスは、自社開発したニスコーターもインライン化されているというから驚きだ。
1,200×1,200dpiの高解像度を誇る富士フイルムの輪転インクジェットプレスの品質について「圧倒的に綺麗」と評価する松本社長。アルバムの写真表現についても「1,200dpiのJet Press720Sと比べても写真の再現性に大差はない。また異なった鮮やかさがある」との印象を語る。
この「異なった鮮やかさ」について木下工場長は、解像度の違いに言及した上で、「富士フイルムの輪転インクジェットプレスは、インクを滲ませて綺麗に表現する。一方、JetPress720Sはインクを凝集させて綺麗に表現する。AMとFMのようなイメージ。いずれもSAMBAヘッドによる微小インクドロップの滴量均一性と吐出方向の正確性がベースにある」と説明。さらに「通常は、後加工の糊の状態によって資材を選択し、印刷でそのバランスをコントロールしている。つまり品質に特化すれば、さらに高品位な印刷も可能である」と付け加えた。

AIなどを活用したフロント側の効率化も
「小中ロットは、どのように仕事を流すかがすべてだと言っても過言ではない。オフセットも進化しているが、これらを連続で流すという点では輪転IJが現在のところ最も優位だと考える」と松本社長。この「小中ロットを連続で効率良く回す」という同社の真骨頂とも言うべき部分をさらにブラッシュアップするための新たなプロジェクトとして、AI技術などを活用したフロントサイドの効率化や自動化、省人化にも着手し、現設備における生産キャパシティを拡げていく考えだ。
一方、輪転IJによる小中ロット印刷の料金設定については、「いまだ手探りの状態」と話す松本社長。「私自身、マーケットプライスとして『このくらいだろう』というイメージはあるものの、工程を積算していくとその金額にはならない。メンテナンス、紙、インク、とくに電気代などを料金に転嫁することで輪転IJの料金設定を改めて見直す必要性も感じている」
「数はあるが時期が集中、しかも納期がない」という卒業アルバムの世界で、品質を担保できる富士フイルムの輪転インクジェットプレスの存在がより効率を高め、少子化が進む中でも利益率を高められる仕組みを生み出している。「富士フイルムの輪転インクジェットプレスに卒業アルバムがハマった。今後はフォトブックなどの分野でも期待できる」(松本社長)
選ばれ、独占するビジネスモデルへ
人手が不足する中で、デジタル印刷は技術力の平均化が可能になることから、同社でも改めてスタッフそれぞれの適性に応じた人員配置を進める考えだ。また木下工場長も「オフセットの世界は職人感覚に依存する部分が多い。デジタル印刷は、これをスキルレス化によって非属人化でき、技術や品質の平滑化も実現できる」とし、今後はオフセットを集約しながら輪転IJの稼働率を高めていく考えだ。
「インクジェットを含めたデジタル印刷に対する考え方は変わりつつある。ただの『小ロット』ではなく、デジタル社会における人の考え方や行動が変わる中で、我々の提案次第ではデジタル印刷の立ち位置や存在意義は大きく変わる」と語る松本社長。価格競争には決して参加せず、常に選ばれ、独占する形でのビジネスモデルを追求していく。その企業価値や仕組みを生み出すための生産設備として、富士フイルムの輪転インクジェットプレスが機能していくことになるだろう。















































