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デジタル印刷特集 2022

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矢野経済研究所、DPS市場が拡大 - デジタル印刷市場2021年度は4%増と予測

 (株)矢野経済研究所(水越孝社長)は、国内のデジタル印刷市場を調査し、各カテゴリの動向や参入企業動向、将来展望を明らかにした。

 2020年度の国内デジタル印刷市場は、新型コロナウイルス感染症拡大にともなう外出自粛の影響により、フォトブック市場やオフィスコンビニ市場が大幅減少、それらを除くPOD市場も販促需要が減少したことで市場規模が減少している。

 一方、コロナ禍で実施された様々な経済対策やワクチン接種券などに関するアウトソーシング需要を取り込んだDPS(データプリントサービス)市場が拡大。その結果、2020年度のデジタル印刷市場(事業者売上高ベース)は3,097億3,100万円(前年度比0.3%減)とほぼ横ばいで推移し、コロナ禍でも市場規模を維持している。

 2021年度は経済活動が再開される中で、POD市場が回復基調となっており、またDPS市場も拡大が見込まれるため、2021年度のデジタル印刷市場は3,214億6,000万円(前年度比3.8%増)と増加する見込みとなっている。


出版印刷分野は企業間で格差広がる

 出版印刷におけるデジタル印刷市場では、重版時において少部数生産による在庫管理コストの削減を実現する提案と、重版未定タイトルや絶版本、電子書籍との同時刊行本(新刊)を中心に注文に応じて1部から印刷、発送するBOD(ブックオンデマンド)の提案の2つの方向性で、デジタル印刷の活用が推進されている。

 出版業界では、大手出版社を中心にデジタル印刷の活用に取り組む出版社が増えており、またネット書店におけるストア型PODも確立されつつある。その中で、印刷企業も提案を推進しているが、いくつかの課題が障壁となり、長年、市場は黎明期を脱していない。

 その障壁のひとつである印刷コストについては、コスト引き下げに進展が見られない現状の中で、印刷企業ではオフセット印刷による従来のビジネスモデルとの比較シミュレーションを行うことで、在庫管理コストを含めたトータルコストの削減という考え方を提示してきたが、在庫データを開示してもらえないため、その効果を担保にするのが難しく、これまで思うように提案が進んでいなかった。

 しかしここ1〜2年、一部の印刷企業では取次・書店への過剰発注を防ぎ、返品率を下げることを目的とした出版社とのEDI(Electronic Data Interchange)連携を進める中で、在庫データを把握できるようになってきており、コストダウン効果の提示が以前より容易となってきている。そのため、こうした一部の印刷企業においてショートランの実績が拡大しており、提案が進まない印刷企業との間で実績の差が広がり始めている。

 本格的な経済回復が見込まれる2022年度は、POD市場が再び回復基調で推移し、またDPS市場もワクチン接種券や消費喚起施策などのアウトソーシング需要を取り込み、さらに拡大する見込みであることから、同レポートではデジタル印刷市場が再び増加すると予測している。