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NEW LEADERに聞く:「印刷+α」で価値創造へ - 大阪府印刷工業組合 髙本隆彦理事長

2024年7月25日

 5月23日に開催された大阪府印刷工業組合(以下「大印工組」)令和6年度通常総代会において15代目理事長に就任した髙本隆彦氏(大興印刷社長)。前・浦久保康裕理事長の意志を受け継ぎ、「次世代に対応する『印刷+α』の人づくり」を核とした組合運営を目指す。


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髙本隆彦 理事長


 髙本氏は、大阪青年印刷人協議会の議長もつとめ、その後は組合活動から少し離れていた時期もあったが、前・浦久保理事長就任を機に召集され、渉外特別委員長としてクリエイターと印刷会社の共作モノづくりフェス「ペーパーサミット」の立ち上げに尽力。自らを「浦久保チルドレン」と称し、前・浦久保理事長が掲げた「次の時代を力強く切り開く超越経営者の育成」という想いを継承しつつ、「ものづくりの印刷工業組合」から「印刷+α」へと、大印工組の提供事業・サービスを通じて新たな価値創造ができる改革に挑戦していく。

 「私の役割は、浦久保氏が描いた組合や業界の理想像とその思いを繋ぎ、後進に受け渡していくことだと認識している。基本的にプロデューサータイプではなく、ディレクタータイプなので、実務家としての力を発揮していきたい」

 今年度の大阪府印刷工業組合は、「業界の枠を超えた産業との協創で、『情報産業のハブになる』『産業の枠を拡げる』『組合員各社の可能性を拡げる』という3つの軸で活動・推進していく」という基本方針を打ち立てているが、髙本理事長は、その背景には受注産業という業界の構造的課題があり、「印刷会社は多くは自分達で値決めできる商品を持っていない。これを変える必要がある」と指摘する。

 ひとつの例として、髙本理事長のご子息のサッカー全国大会出場をきっかけに、「対戦相手とユニフォーム交換はできないがカード交換ならできるのでは」と考え、試しに子供たちの簡単な自己紹介と写真が入ったカードを作って渡したところ、これが好評だったことから、大興印刷でトレーディングカード事業を開始。当初日本では売れなかったが、フランスのジャパンエキスポ出展で大きな反響があったことから、オーストラリアやイタリアでも売れはじめ、現在では世界中に販路を構築。そうなるといろいろな商談が飛び込んでくるようになるという。

 「10年前にはじめた小さなビジネスが、いまでは会社を変えるくらいになっている。いかに自社商品・サービスが大事かを痛感した。このような感覚を組合員企業にも体験してほしい」


「文紙MESSE2024」に大印工組として出展


 「仕事とは、可能性を広げること。組合員企業および組合自身、さらに業界の可能性を広げることを意識しながら事業を組み立てていく」と語る髙本理事長。そこで重要になるのが、「自社をどう再定義するか」という視点。「この視点によって会社の未来は大きく変わってくる。当社では、『豊かなコミュニケーション活動を生むために自社の事業を推進する』という経営方針を定めた。すると社員の意識も変わる。我々の強みは、情報をカタチに変えることができること。これを販促と捉えると、市場は大きいがコンペティターも多い。身の丈に合ったマーケットを作っていくことも重要である」

 髙本理事長の「色」としては、とくに「事業開発」が挙げられる。とくに今回新設した協創特別委員会では、「中小企業組合等課題対応支援事業」などの補助金を活用し、共通の課題や目的を持つ組合員同士の共同事業を開発していく。その足掛かりとして、8月6・7日にマイドームおおさかで開催される「文紙MESSE2024」に大印工組として出展。ペーパーサミットで紹介した商品を出品し、その反応を探るという。

 また、髙本理事長は、海外の展示会への出展も視野に入れている。「印刷業は内需に頼っているが、人口減の中での成長は難しい。円安が進むいま、外需という大きな可能性も広がっている」


業界のプレゼンスをいかに高めるか


 大印工組の組合員数は2024年6月末現在で376社。組合員増強も急務だ。「突き詰めると組合に魅力があれば解決することかもしれない。実際、ペーパーサミットや印刷経営革新塾という事業をきっかけに入会した会社もある。しかし、『印刷業は増えない』という前提に立ったとき、その周辺産業である経営コンサルやIT企業を会員もしくはパートナーシップ会員として迎え入れることで、新しい風が吹くのではないか」

 一方で、「業界のプレゼンスをいかに高めるか」という課題もある。これについては基本方針にも謳っている「情報産業のハブになり、サステナブルな社会を牽引する」ということになる。

 「印刷産業は、GP認証制度やCSR、MUDなど、社会に先駆けて取り組むことで企業の社会的責任を果たしてきた。これをさらに啓発しながら、対外的に発信していくことができれば業界のプレゼンスも高まる」

 また、組合員企業間の仕事の取引や協業なども「組合のメリット」のひとつなりえると指摘。「属人的な付き合いに留まっているケースが多く、仲が良くてもその人の会社が何をやっているかを知らない。ここをプレゼンできるような交流会なども企画していきたい」

 最後に組合員に対するメッセージをお願いした。

 「とにかく組合に参加してほしい。1人で考えると悩みにしかならないが、誰かと対話するとそれが思考に変わる。組合には相談できる仲間がいるし、語り合える場もある。夜の飲み会1回、平日のゴルフ1回を組合活動に変えるだけで、絶対に何かが変わるはず。ぜひ自社の新しい可能性を見つけてほしい。」

【髙本隆彦氏】

 昭和45年10月15日生まれの54歳。趣味は読書やドライブ、休みの日はランニングを欠かさず、月100kmは走っているという。

 また、41歳からはじめ、現在はやめていたトライアスロンを再開する方向で検討中とか。「最初のきっかけは『人間は、体力が充実すると気力が充実し、仕事の生産性が格段にあがる』という知人の言葉。実際、走り始めてから会社の業績も良くなった」と振り返る。

 座右の銘は、作家の開高健氏が生前、色紙を頼まれた際などに好んで書いた言葉「明日、世界が滅びるとしても今日、あなたはリンゴの木を植える」。

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