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双葉工芸印刷、新たな色管理体制が実現[CMS構築サポート事例]

2024年3月5日

高度な品質要求にも確実・効率的に〜損紙・損版などの無駄が激減


 双葉工芸印刷(株)(本社/千葉県市川市堀之内5-21-11、水野憲一社長)は、2019年から富士フイルムグラフィックソリューションズ(FFGS)のサポートのもと、Japan Colorを基準とした色管理体制の再構築を図り、品質の安定化、作業の効率化、さらには現場の意識改革など、さまざまな成果を挙げている。品質にシビアな仕事を数多く手がける同社が、どのような背景から色管理の見直しに着手し、どんな変革を遂げているのか。営業推進部・プリプレス課・CTP課課長の藤井健太郎氏に、今回の取り組みの経緯や現時点での効果について伺った。

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本社工場のPRIMOJET(左)とApeosPro C650。基準色の高精度なシミュレーションが可能に


一貫した共通基準がなく、色調整に苦労していた


 同社は、1958年創業の「有明印刷所」を前身とし、60年以上の歴史を持つ印刷会社。「工芸」の名が示す通り、仕上がりの美しさを追求したモノ創りに定評があり、長年培ってきた技術力を武器に、グループ内でも独自の地位を築いている。

 販促に関わる印刷物を幅広く手がけるが、なかでもユポやPETなどの特殊素材、厚紙への印刷を得意とする。また、印刷物のみならず、デジタルメディアの制作や、イベント・キャンペーンなどの企画運営も含め、企業のプロモーションをトータルにディレクションできることも大きな強みとなっている。

 印刷設備としては、厚紙対応の菊全6色UV機(0.9ミリ厚までの実績あり)と菊全4色の油性機が主力。色校正は、本社と東京事務所に1台ずつ設置された「PRIMOJET」をメインに運用するが、クライアントから本紙を要望される仕事も少なからずあり、その場合は本機校正や平台校正で対応する(平台校正は協力会社に外注)。また、社内確認用のカンプ出力や、厚紙を使った見本制作などには、トナー機の「ApeosPro C650」(2023年10月にDocuColor 1450GAから切り替え)を使用する。

 同社がCMSの再構築に着手したのは2019年。色校正用の新たなシステムとしてPRIMOJETを導入したのをきっかけに、色管理体制全体の見直しも進めることに。藤井課長は、それまで抱えていた課題について次のように語る。

 「従来は印刷部門とCTP部門それぞれ個別に色管理を行っており、両者の連携がとれていなかったため、社内共通の一貫した管理体制になっていなかった。さらに言えば、現場と営業、お客さまの間でも、色に対する許容範囲や考え方にバラつきがあった。当社はスポット的な仕事が多く、仕様も1件ごとにまちまちなので、拠り所となる共通基準がないと、なかなか『正解』にたどりつけない。したがって、お客さまの要望に応えるのに非常に苦労していた」

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藤井課長

 Japan Colorをターゲットとした色管理は行っていたものの、その効果が充分に発揮されない状況だったため、色調整には多大な時間と労力を費やした。

 「以前は刷版カーブが4~5本あり、用紙や印刷機などに応じて、いずれかのカーブを当てて、合わなければ部分的に調整するというケースが多かった。そうすると最終的にバランスが崩れてしまい、クレームになってしまうこともあった。お客さまの納得のいく色が、印刷機の調整で出せなければ刷版側で対応するしかないので、カーブを動かして無理やり合わせようとしていたため、版の再出力も多々あった」(藤井課長)


色合わせの効率・精度が大きく向上し、工程の後戻りが減少


 2019年にPRIMOJETを導入した段階で、色校正の色安定性は大きく向上し、藤井課長は「安定化のメリットは期待通りだった」と評価するが、色の維持管理方法は従来のままだったことから、徐々に印刷機とのズレが生じてきたため、「工程を跨いだ抜本的な対策が必要と感じた」という。

 そこでまず、主力の菊全6色UV機について、色再現の状態を診断した上であらためてJapan Colorをターゲットとして安定化を図り、UV印刷用の標準カーブを設定。2台のPRIMOJETとDocuColor 1450GA(当時)の色をそれぞれマッチングさせた。

 「最近は短納期対応のためにUV機を使用するケースが多くなっているので、UV印刷のCMSを先行して整備することにした。油性印刷についても現在、同様のプロセスで進めている」(藤井課長)

 これにより、社内で完結するジョブに関しては、色の安定性・精度が大幅に向上。PRIMOJETの色が印刷現場にとっての「信頼できる基準」となったことで、オペレーターはより効率的かつ高精度に色を合わせ込めるようになり、工程の後戻りも減少。損紙・損版も大幅に削減できた。

 「お客さまからもPRIMOJETの色は非常に好評で、初校でOKをいただけるケースも少なくない。また、以前のように『校了の色が本刷りで出せない』ということもなくなり、印刷オペレーターも『色を合わせやすい』と効果を実感している」(藤井課長)

 また、印刷機の色のブレが抑えられたことで、本機校正の精度・効率も高まったという。

 「その効果を最初に実感したのは、年賀ハガキの仕事だった。毎年受注しているものでさまざまな絵柄があり、トータルではかなりの大部数。しかも、お年玉付き年賀ハガキはいわゆる金券なので失敗は許されない。以前は本機で初校を出すとかなりの赤字が入り、半数ぐらいの絵柄は本機で再校を出さなければならなかったが、CMSによってその修正がかなり減った。プリプレスの作業時間やコストも大幅に削減でき、納期の短縮にもつながっている」(藤井課長)


協力会社の平台校正でも「自社の基準色」の再現が可能に


 こうして自社完結のジョブにおいては生産効率が格段に向上した。しかし、色に関してはもうひとつ難題があった。それは、協力会社に外注する平台校正のマッチングだ。

 「以前から、平台校正の色が合わずに苦労することが多々あったが、今回その対策に踏み切るきっかけとなったのは、ある洋菓子メーカーさんの仕事。店舗のディスプレイツールを、3週間ほどで100アイテムほど制作するという超短納期の仕事だったが、本紙校正の要望があったため、すべて平台で対応。ただ、これだけの数を従来と同じ環境のまま進めたのでは、色調整に時間がかかり納期に間に合わない。そこでFFGSに相談したわけだ」(藤井課長)

 協議の結果、双葉工芸印刷の刷版カーブを協力会社のCTPに適用することで、「双葉工芸印刷の基準色を再現できる環境」の実現を目指すことになった。

 「この協力会社は校正専業の会社なので、本来は1社のためにカーブを動かすことはできないが、事情を話して、FFGSの協力のもと、新たにカーブを1本つくっていただいた。たまたまCTPセッターや刷版、RIPなどの使用機資材が当社と共通していたので、インキは当社から支給するなど、他の条件もできる限り整えた上でトライしてみようと」(藤井課長)

 両社にとって異例の策ではあったが、その効果はてきめんに表れた。

 「平台校正機は印圧が軽いので色が浅くなる傾向にあり、無理に濃度を乗せるとつぶれてしまうことがあったが、新しいカーブを当ててからは濃度感が向上して、中間のメリハリもしっかりと出るようになり、PRIMOJETの色にかなり近づいた」(藤井課長)

 実際、先述の洋菓子メーカーの仕事では、ほとんどのアイテムが「一発校了」だったという。

 「いままで、平台の初校でOKをいただくことは皆無だったので、正直、驚いた。PRIMOJETだけでなく平台校正でもお客さまから高い評価をいただけるようになったのは大きな成果。社内の印刷オペレーターも『格段に刷りやすくなった』と評価していた」(藤井課長)

 取材時点では、大手食品メーカーから受注したプロモーションツールの仕事が進行中で、これも平台校正をとる予定だという。藤井課長は「ここでも今回のCMSの成果が出るのではないか」と期待を込める。

 「このお客さまの仕事は、タレントさんの写真を使うものも多く、品質にはかなりシビア。以前はお客さま立ち会いで校了をいただいても、印刷で微妙に色が合わず、納品後にクレームになることがあったが、今後はそれがなくなると思う」

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主力の菊全6色UV機。色のブレが抑えられたことで、作業効率が向上し、損紙の削減も図れた


定期診断を通じて数値管理の考え方が徐々に浸透


 社内のみならず協力会社も含めた「共通色基準に基づくCMS」の構築。その効果は、実際の仕事の中で明確に表れているが、「この環境をいかに維持していくか」も重要な課題だ。そのため同社では、FFGSによる「定期診断サービス」を活用し、年に2回、品質チェックを行っている。これは、印刷機やプルーファーの色再現の状態を測定し、その分析結果を現場にフィードバックするというもの。問題点が見つかれば、必要に応じてFFGSの技術スタッフが現場でフォローを行う。

 ただ、藤井課長によると、定期診断の意義が現場に理解されるまでには、しばらく時間がかかったという。

 「とくにベテランのスタッフは、自分たちが貫いてきたやり方に強い確信を持っており、新しい数値管理の考え方はなかなか受け入れられなかった。しかし、定期診断のブランクが空くと色の精度が落ち、診断実施後には再び色が合うようになるということが何度かあり、そんな結果を目の当たりにしたことで、定期診断・数値管理の重要性を肌で感じられるようになってきたようだ」

 定期診断は同社にとって、各デバイスの「色の状態」を数値で確認する場であるとともに、日常の色管理や改善の取り組みの効果を理論的に把握する機会にもなっており、これが現場の納得感につながっている。

 「刷版カーブ、ドットゲイン、インキ濃度、網点など、一つひとつ課題を潰していき、その結果を客観的なデータで見せていただくと、『なるほど』と腑に落ちる。その積み重ねで、現場の理解が少しずつ深まっていった」(藤井課長)

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数値管理を採り入れたことで作業の標準化が進み、若い人材が育ちやすい環境が整いつつある


印刷現場の意識も変化し、「カーブで直す」発想から脱却


 色基準の策定からデバイス間のマッチング、定期診断まで含め、約4年間にわたり色管理の変革に取り組んできた双葉工芸印刷。現在も継続中ではあるが、これまでの効果について、藤井課長はこう総括する。

 「まず、刷り直しや版の再出力といった無駄が大幅に減り、生産効率が上がったこと。そして、品質に厳しいお客さまからのクレームも激減し、当社の色をより高く評価していただけるようになったことが大きい。また、色が合わない場合でもその原因が特定しやすく、効率よく確実に修正が行えるようになった。これも生産性アップにつながっている」

 また、現場の意識の変化も重要な成果だと語る。

 「色を合わせ込む際、『印刷機側で何とかしてみよう』という意識が以前より強くなったと感じる。これまでは、『印刷ではここまでしか色が出ない』と限界を決めてしまって、その範囲を超えると刷版カーブで対応しようとしていたが、その考え方から脱却し、カーブに頼らずに合わせられるようになってきた。これは、印刷現場でチェックすべきポイントを今回あらためて学べたことも関係していると思う。インキの乳化など、日々のオペレーションの中で把握できる部分だけでなく、つねに網点を細かく見て、スラーやダブりなども判断できるようになってきたので、そうした印刷機コンディションの調整だけで色の問題が解決するケースも増えてきた」(藤井課長)

 こうしたさまざまな効果を踏まえた上で、藤井課長は今後の課題として「営業のさらなる知識向上が必要」と強調する。

 「お客さまの高度な要求に応え続けるには、現場だけでなく営業も、もっと知識やノウハウを身につける必要がある。今回のCMSの再構築によって現場環境は整ってきたが、たとえば、お客さまから色に関する指摘を受けた際に、原因や対策について根拠を示して営業が明確に説明できるかどうか。そのための教育が次の課題である。FFGSにはぜひ、定期診断とセットで営業向けサポートもお願いできればと思っている」(藤井課長)

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