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三光、エコ.プレスバインダー「紙製クリアファイル」専用機

2022年6月15日

環境に配慮したものづくりを応援〜SDGsを追い風に脚光
北陸印刷機材展で量産タイプを初披露


 昨今のSDGsを追い風に、環境に配慮した製本技術「エコ.プレスバインダー」がここにきて改めて脚光を浴びている。中綴じ機メーカーの(有)三光(本社/石川県河北郡津幡町字舟橋ろ75-1、本吉友和社長)が、この特許技術を共同開発したのは2010年。世界初の「針なし・糊なし・加熱なし」の画期的技術で業界の注目を集めたが、当時は紙を挟み込んで圧着で綴じた跡を「傷」という呼び方をするエンドユーザーも少なくなく、あと一歩、思うように導入は進まなかったという。しかしその後、コロナ禍を背景にマスクケースを同技術で綴じたいという声があり、それが発展して同社は2年前に「紙製クリアファイル」専用のエコ.プレスバインダーを開発。手軽に導入できる卓上タイプを中心に導入が進んでおり、「すでに今年は予約でいっぱい」と本吉社長。6月17・18日に石川県産業展示館で開催される「北陸印刷機材展2022」では、紙製クリアファイル専用エコ.プレスバインダーの量産タイプを初披露する。

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卓上型エコ.プレスバインダーの前で本吉社長

 同社の創立は2003年。当時、印刷業界では紙やインキにおいてはすでに環境に配慮した製品が数多く開発されていたが、加工分野においてはそのようなものはあまりなかった。そのような中、同社は中綴じ機メーカーとして「印刷業界の環境に配慮した製品づくりを応援したい」という思いを持ち続けていたという。

 そのような中、創立者である現・浅村奉眞相談役が数年の研究を経て開発したのが特許技術「エコ.プレスバインダー」である。本吉社長は「今でも工場には、研究開発に使用した紙が山のように積まれている」。世界にただ1つの技術開発の背景には、印刷業界に貢献したいというメーカーとしての熱い想いが込められている。

 「エコ.プレスバインダー」は、中綴じインライン式、カレンダー製本専用機などのラインアップを揃えているが、2年前に発表した「紙製クリアファイル」の注目の高まりにより、中綴じやカレンダーなど、その他のエコ.プレスバインダーにも改めて注目が集まっているようで、本吉社長は「相乗効果が生まれている」と、紙製クリアファイル専用機が引き金となり、今後、その他のエコ.プレスバインダーの導入も増えていくことを期待する。そして今では、エコ.プレスバインダーで綴じた跡を「傷」という呼び方をするエンドユーザーはいなくなったようだ。

 「コロナ禍と同時に見られ方も変化してきた。むしろ副資材を使わないなら、この方法で綴じて欲しいという認識が広がってきた」(本吉社長)


副資材を一切使用しない究極のエコ製本


 「針なし・糊なし・加熱なし」。エコ.プレスバインダーのキャッチフレーズである。これは副資材を一切使わないことを意味しており、いわば究極のエコ製本であると言っても過言ではないかも知れない。本吉社長は「紙を使うことが1つめのエコであるなら、糊を使わないことは2つめのエコ、加熱しないことは3つめのエコとなる。環境への関心がさらに高まる中、1つだけのエコではインパクトに欠ける。2つ、3つのエコをアピールすることで、印刷営業においても競争力が生まれてくる」と話す。

 このエコ.プレス(綴じ)の原理を改めて説明すると、特殊な上下2枚の歯型(特許技術)で紙を挟み込み、歯を噛み合わせて加圧することにより、紙の伸びの大きい部分と小さい部分を作り、伸びの大きい部分が小さい部分に浸透し、紙の繊維に絡み合う。同時に加圧することにより、圧着部にわずかに熱が発生し、原紙に含まれる塗工材から微量の糊の成分が溶け、紙同士が接着し、紙を綴じることができる。

 副資材を一切使用しないため、この綴じ方を知らない人からは「強度は大丈夫なのか」と心配されることもあるようだが、本吉社長は「中綴じインライン式では1tの圧力がかかっている。紙ファイル専用機の卓上タイプでも大人が両側から全体重をかけて押している以上の圧力がかかっているため、ファイルの機能としては十分な強度を有している」と説明する。

 エコ.プレスバインダーは、「いしかわエコデザイン賞2021」を受賞した。「脱プラ」への第一歩を応援するものであることが評価され、審査委員は「環境負荷低減の観点から、プラスチック製品の代替が求められる中、紙製の衛生グッズやノベルティを簡単に作成したいという要望に応えた企画商品であり、副資材不要とした環境意識の高さを評価する」とコメントしていた。

 さらに環境だけでなく、エコ.プレスバインダーは副資材を一切使わないため、電力以外のランニングコストは「ゼロ」である。本吉社長は「昨今の原材料高騰を印刷単価に反映できない現状を考えると、コスト面からもエコ.プレスバインダーを選択するユーザーは増えていくかも知れない」と話している。


商業印刷の需要拡大に大きく貢献


 同社の推定値によると、国内で1年間に製造されているPP製(ポリプロピレン)のクリアファイルの数は、年間枚数3億枚。PP原料は8,500t(約30億円)に達するという。

「もし、この半分でも紙製クリアファイルに置きかえることができれば、通常の油性オフセット印刷機やオンデマンドで印刷できるため、商業印刷分野の大きな需要創出につながる。先ほども話したように、エコ.プレスバインダーを使って紙製クリアファイルを作成すれば、1つではなく、2つ、3つのエコをアピールできるため、より紙製クリアファイルに置き換わる可能性を高めることができる」(本吉社長)

 そして現在、エコ.プレスバインダーは副資材を使用しないということが注目され、印刷業界だけでなく、医療・食品など、他業界からの問い合わせが増えているという。実際の納入はまだ先の話になるようだが、本吉社長は「紙製クリアファイルの需要があったとき、我々は中綴じでのエコ.プレスバインダーで培った技術があったからこそ、すぐに対応できた。他業界からの問い合わせについても、現実的に納入となればすぐに対応できるように開発を進めている」としており、将来的には印刷業界に止まらず、メーカーとして様々な産業界のSDGsに貢献できる企業を目指している。

 「次のターニングポイントになるのは2025年の大阪万博になると予測している。SDGsの達成に向けて、さらなる追い風が来ることを考えた場合、2024年までには注文が増加することが考えられる。現在は年間に5~6台ペースの完全受注生産になっているが、需要に応えられるように、生産体制も挙げていける努力を行っていきたい」(本吉社長)

 SDGsに貢献するだけでなく、印刷需要の創出にも貢献するエコ.プレスバインダー。印刷業界を「元気」にできる製品の1つと言えることは間違いなく、今後の動向に注目したい。

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