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DXクラウドサービス事業会社「UniARTS」発足

2022年1月6日

AI、IoT技術でビッグデータ解析、結果をサブスクで提供
品質向上、コスト削減、効率化に活用可能


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シリウスビジョン本社にてUniARTSの河村社長(左)と重田COO

 今、あらゆる産業で「DX」が叫ばれ、印刷業界でも「印刷DX」という言葉が流行語のように使われている。しかし、DXは単にデジタル化すればいいという訳ではない。AIやIoT、最先端のデジタル技術を有効的に活用し、品質向上とコスト削減、効率化による納期短縮、そして最終的には企業の収益改善にまでつながってこそ、DXに取り組む「真」の意味があると言えるだろう。

 このような中、AIやIoT技術を組み込んだSIMが入ったデバイスを検査装置に設置し、その情報をセキュアな環境でクラウド上に吸い上げ、蓄積したビッグデータの解析結果を誰もが直感的に見やすく、分かりやすい形でサブスクリプションにて提供することでこれらを実現する画期的なサービスが誕生した。

 同サービスを提供するのは、2021年11月に発足した、DXクラウドサービス事業会社の(株)UniARTS(ユニアーツ)。画像検査のシリウスビジョン(株)(本社/横浜市港北区、辻谷潤一社長)90%出資のグループ企業となっており、代表取締役に同社取締役の河村拓海氏、COOに同取締役の重田篤史氏が就任。2022年1月1日より、サービスを開始している。


世の中に「検査」で貢献から「品質」で貢献へ


 「検査を通してお客様に届けることができる価値を俯瞰して考えたとき、検査機メーカーの垣根を越えて検査機のログを横断的に集めることで、世の中のより多くの印刷物の品質を良くできるのではないかと考えた」

 河村社長は、同社を設立した想いについてこのように語る。そしてもう1人、同じように熱い想いを持つのが、シリウスビジョンの社外取締役でもあり、UniARTSに10%出資している(株)アットウェア(本社/横浜市西区)の取締役でもある重田篤史氏だ。アットウェアは約17年前、大手電機メーカーのエンジニアをしていた重田氏が数人の仲間とともに起業。これまでに数々のクラウドサービスやAI関連の開発を手掛けてきた、まさにシステム開発のエキスパートで、河村社長も「重田COOとの出会いがなければ、UniARTSの設立は実現できなかった」というほどだ。重田氏自身も「システム開発については、競合他社に負けない知見がある」と自社の開発力に自信を示す。今回、UniARTSが提供するサービスのシステム開発を手掛けたのも、アットウェアによるものだ。

 UniARTSを設立したかった一番の想いは、世の中に「検査」だけで貢献するのではなく、「品質」で貢献したかったということ。このため、シリウスビジョンのグループ会社であるが、検査機を設置する印刷会社であれば、それがどこのメーカーのものであってもシステム提供していく。

 昨今、シリウスビジョンには、大手完成品メーカーからの問い合わせも多く、印刷物以外の最終製品の外観品質検査も手掛けているという。そうした大手完成品メーカーへもUniARTSでは検査機メーカーを問わずにシステムを提供していく。そして、それは逆に「ビッグデータ」を集めていく上でも、重要な要素になるようだ。

 「我々の一番の想いとしてあるのは、品質で世の中に貢献したいということ。そのためには、より大量のビッグデータを蓄積していく必要がある。このため、従来のシリウスビジョンのお客様だけでなく、他社の検査機メーカーをお使いの印刷会社にも広くこのサービスを紹介していきたい」と河村社長は話す。

 さらに、特筆すべきことは、同システムは「中立性」を高めたシステムとして開発されているということだ。

 「ビッグデータはどんどん蓄積されていくため、他メーカーの検査機による情報データも蓄積されれば、『この印刷物の場合は、○○○の検査機が適している』など、容赦なくレコメンドしてくる。当社はシリウスビジョンの100%子会社ではないので、当社の取り組みに賛同していただけるのであれば、ユーザーの方々はもちろん、メーカー、競合検査機メーカー問わず、出資していただきたいと考えている」(河村社長)


「見える化」では辿り着けない解析で、品質向上や効率化が可能に


 印刷業界ではこれまで、もしくは今でも、現場によっては職人の「勘」を頼りにした印刷が行われているケースは少なくない。これらの属人化の問題を解決するツールとして、印刷業界には様々なメーカーから、「見える化」により品質の安定化を図るための製品が開発されている。

 UniARTSが提供するサービスがこれらの製品と違う点は、AIの機能が組み込まれているため、「見える化」だけでは辿り着けない解析までも可能であるということだ。

 「情報を蓄積していく中で、この原紙にはこのインキが合うとか、このデザインを印刷するにはこの印刷機が適しているなど、現場の職人のみが知っている情報を蓄積して『見える化』するだけでなく、そこに計画的なアプローチとAIの機能を組み合わせ、さらなる効率化や品質向上のための解析をかけていくことができる」(河村社長)

 そして、検査長や作業時間、能率、稼働率、不良率などをもとにした解析結果は、取引先や品目ごとにランキングされて表示される。これらの解析結果は、効率化や品質向上だけでなく、売上向上など、収益の改善にもつなげることができるようだ。

 「様々な観点からの統計を解析することができる。例えば、8月のデータを見たときに、いつもビールの顧客が上位に来ているのに今年はいないとか、12月になると鍋の材料関係の顧客が増えているとか、営業支援ツールとして活用していただくことができる」(重田COO)

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解析結果はリアルタイムで表示される

 また、すべての印刷物は検査機を通る際に写真を撮っているため、欠陥Mapにより、どの辺にどのような不良があるかがドットで示されており、濃いところは不良が集中していることが一目で分かるようになっている。例えるなら、地震の震源マップのようなものだ。

 「デザインデータのPDFをクラウドに上げず、ローカルの状態でPDFを照らし合わせることで、デザインのここの部分に不良が出ているなどの傾向が分かるため、デザイナーが今後、どのようなデザインを作っていけば良いのかを考えていくためのデータとしても活用できる」(河村社長)

 デザイナーは通常、印刷機の状態など、ある程度の「制約」がかかった上でデザインすることが多い。この解析結果を活用すれば、今後、避けた方が良いデザインを事前に「先回り」して知ることができ、逆に、ここはここまで大丈夫など、デザインの制約の幅を広げられる範囲についても事前に知ることができるため、無駄な時間とコスト、デザイナーの表現の幅を広げることができるようになる。まさに至れり尽くせりのメリットのあるシステムなのである。

 そしてさらに、重田COOは独自技術で開発した「測色技術」のシステムのメリットについてもアピールする。

 「当社のシステムでは、色差がどのように出ているのかを、RGB、CMYK、⊿Eで表示するのだが、一般的には⊿Eが乱れはじめても人の目には分からず、それが続いた後、RGBやCMYKが乱れてようやく気がつく。その点、当社のシステムは、⊿Eが乱れはじめた時点でアラート、レコメンドするため、印刷不良が起こる前の段階で予知し、これを防ぐことができる」


「品質プラットフォーム」を目指して--。充実したアフターフォロー


 現在、UniARTSのシステム活用に向けて話が進んでいるのは、上場企業や世界規模で展開する印刷会社が中心だという。「AI機能によりどんどん賢くなる」(河村社長)というシステムのため、ビッグデータを蓄積していくためにも、第一フェーズでは大企業を中心に推奨しているようだが、「印刷業界の品質プラットフォームを目指しているため、早い段階で20人以下規模の印刷会社にも活用していただけるようにシステム開発を進めていきたい」(河村社長)としている。

 しかし世の中の多くの中小印刷会社にとっては、有益な解析結果が提供されても、「活用の方法が分からない」という印刷会社も少なくないだろう。そこでUniARTSでは、そのような印刷会社を支援するため、できる限りの範囲内で無償でのアフターフォローのコンサルテーションを行っていく。また、オプションサービスとして「品質スクラム」と呼ばれるコンサルテーションも用意している。

 「論理的な数値をもとに、PDCAサイクルを継続的に行い、品質向上と収益改善を行えるようになるまで支援を行っていく。せっかく利用していただいたユーザーの皆様方には、埋もれることなくメリットを享受していただきたい」(重田COO)

 そして気になる価格については、本サービスは初期費用として1拠点あたり30万円。これはエンジニアがIoTデバイスを設置してデータを解析できる環境をつくるための費用となる。また、サブスクリプションの月額費用は、接続している検査装置の台数×10万円。重田COOは「お申し込みから約1週間で利用できる環境を作ることができる。月額のため、いつでもサービスは停止できる。また、クラウドサービスのため、会計品目上は資産計上する必要はなく、コストで落とすことができる」と説明しており、AI、IoT技術を駆使した最先端のサービスでありながらも、手軽に利用できるサービスであることを強調する。

 「ガス、水道、UniARTSという感覚で使ってもらいたい。業界の社会インフラを目指していく」(重田COO)

 なお、オプションの「品質スクラム」についての価格は未定だが、要相談で、数ヵ月サービスなどの対応も行っていくということだ。


1月19日にウェビナーで事業内容を紹介


 UniARTSのコンセプトは「ウェルビーイング〜品質で人々を幸せに」。河村社長は「ただのハッピーネスではなく、共存、継続が可能な幸せを世界中のお客様に届けていきたいという想いを込めている」と話す。

 河村社長は、大手印刷会社で10年間勤務した後、シリウスビジョンに転職。毎年のように海外で仕事をする中、アメリカやヨーロッパで言われ続けてきた言葉は「日本人は品質クレイジーである」だそうだ。しかし一方、河村社長が2021年6月にドイツを単身訪問し、現地の顧客経営者とのやり取りを通して肌身で感じたことは「ヨーロッパ市場でも印刷物によっては日本と同等、場合によってはそれ以上に厳しい水準の外観品質が求められる製品がある」ということだ。日本の印刷品質の高さがヨーロッパ市場でも広まり、それが品質ニーズの高まりの一因になっているのかも知れない。

 「品質に厳しいことは日本人特有の感覚。外国人にとって時に『クレイジー』と揶揄されるほどの品質への貢献で世界と戦っていく意気込みでいきたい。このサービスで世界中のモノづくり現場で日々闘っておられる方々に貢献をさせていただきたいという想いを込めて、当社のロゴマークは富士山をイメージしている」(河村社長)

           ◇                  ◇

 UniARTSは1月19日 午前10時〜11時30分まで、今回、紙面で紹介したサービス内容をウェビナーにて紹介する。ウェビナーでは、「さらに踏み込んだ内容を紹介していきたい」と河村社長は話す。

 検査装置を設備する印刷会社はもちろん、将来的に検査装置の導入を考えている印刷会社にとって、今後の経営の糧になる内容であることは間違いなさそうだ。

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