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K・Dサービス(神崎紙器グループ)、段ボール用IJ印刷機で新領域へ挑戦

2019年11月25日

マテリアルとしての優位性を活用 〜 段ボール素材の印刷物提供


 段ボールシート・ケースのトータル生産システムを開発し、各種段ボールの製造販売を行う神崎紙器工業(株)(本社/兵庫県尼崎市)のデジタル印刷事業会社であるK・Dサービス(株)(池田大樹社長)は、国内1号機として兵庫県丹波市の柏原工場に導入したHanway社(深セン市)の段ボール用インクジェット印刷機「GLORY1604」の2020年からの本格稼働に向けて最終調整を進めている。池田社長は「水性インキを使用するため、化粧品や食品業界向けにも使用できる。また、マテリアルとしての段ボールの優位性を活用し、箱にこだわることなく、段ボールを素材とした印刷物を幅広く提供していきたい」としており、同機を戦略機として活用し、新たな市場に事業領域を拡大していく考えだ。

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GLORY1604の前で池田社長(前列中央)と同社スタッフ


 神崎紙器工業は1961年、兵庫県尼崎市の地で創業。1976年に兵庫県丹波市に氷上工場を竣工し、第1号機となる1,650幅のコルゲートマシンを導入した。その後も1,800幅、2,200幅のコルゲートマシン、またフレキソ印刷機や各種後加工、物流までを含めた設備を拡充。そして現在は、8社のグループ企業によるワンストップサービスでコストを削減しながら短納期で段ボールを製造する体制を構築している。
 K・Dサービスは、そんな同社グループのデジタル印刷事業会社として2019年10月に稼働を開始した企業だ。池田社長は社名について「Kは神崎のK、Dはデジタル、デザイン、デベロップ、ドリームなど...、Sはサービスを意味している」と説明しており、段ボール箱という従来の枠にとらわれない戦略会社として、その成長に大きく期待している。

水性インキを使用することで、あらゆる業界に提案が可能に

 K・Dサービスが2019年10月に導入した段ボール用インクジェット印刷機「GLORY1604」は、シングルパス方式の採用により、最高速度150m/分の高速生産を実現する。また、従来のインクジェット印刷機は溶剤の臭いのあるUVインクが通例であったため、化粧品や食料品業界からは避けられる傾向があったが、同機は水性インキを使用するため、環境・安全性に優れており、あらゆる業界に提案が可能になっている。
 これについて、同社の中村竜也氏は「茶段、白段のほか、コート紙にも印刷が可能。通常はコート紙の場合、水性インキだと着弾したあとに流れてしまうためUVインキを使用するのだが、独自技術力で解決した。またマシンの筐体は中国製であるが、インクジェットヘッドは日本の京セラ製を搭載している。このインクジェットヘッドは非常に性能が良いため、着弾したときにアウトラインが乱れるようなこともなく、これにより美粧性を保ちながらも高速印刷を実現することが可能になる」と説明する。

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コート紙の出力見本を手に池田社長


 また、インクジェットヘッドはCMYK4色に48ヘッドを搭載し、幅広い色域をカバー。さらに同社ではこれに独自技術を融合させることにより、本来なら出すことができないゴールドやシルバーなどの特色も出すことが可能になっている。
 もちろん、デジタル印刷機であるため、多品種小ロット生産にもスピーディーに対応することが可能だ。中村氏は「従来は版の交換に5分以上かかっていたが、『GLORY1604』は、早いもので7秒、データの重いものでも5分以内にジョブ切り替えが可能となっており、すべてにおいてスピーディーな生産を実現する」と説明する。
 さらに、「GLORY1604」は世界でこれまでに40台が出荷されているが、特筆すべきは同社に出荷されたマシンは印刷ユニットに「デジタルユニットボックス」が施された特別仕様になっていることだ。これについて、中村氏は「インクジェットヘッドは非常に繊細である。このため湿度、温度、埃を非常に嫌う。これまでのマシンは印刷ユニットが外気にふれる外観になっていたが、当社に納入されたマシンは、印刷ユニットをボックスにより完全密封することで、空調、湿度環境を整え、最適な環境で印刷できる仕様となっている」と説明する。
 そして現在、Hanway社と京セラは、マシン本体とインクジェットヘッドの微妙なバランスを最終調整中とのことで、池田社長は「両社によると、まだまだ伸びしろはあるとのこと。このため本格稼働を開始する2020年までに、マシンスペックはさらにグレードアップしそうである」と期待を高めている。

短期間のイベントなどに安価な段ボール素材でのツール作成を提案

 柏原工場には、大型のサイネージ看板や観賞用印刷物など、「GLORY1604」で出力された多数のサンプルが展示されているが、その中で同社が今後、短期間のイベントツールなどに提案したいと考えている見本の1つがハロウィンのサイネージ看板だ。
 池田社長は、「長期間にわたって使用するものに段ボールというマテリアルは向かないかも知れないが、ハロウィンのような短期間使用するだけのイベントツールには、段ボールは最適なマテリアルといえる。段ボールというマテリアルの特性を活かし、短期間のイベントツールなどに、木材などの代替品として、軽くて安価、丈夫、回収も可能な段ボールを提案していきたい」と話す。

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スポットイベントのサイネージ看板にも効果的に活用できる


 そしてさらに、段ボールは安価なマテリアルながらも、「GLORY1604」を使用することで鑑賞目的の印刷物を作成することもできると池田社長は自信を示す。
 「コート紙はもちろん、印刷内容によっては茶段のほうがセピア系で良い雰囲気が出る場合もある。被写体によって自由に選んでいただければ、観賞用のきれいな印刷物に仕上げることができる」

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コート紙の出力見本を手に池田社長


 このほか、家具や3段ボックス、パーテーションなど、従来の素材から段ボールに代替できるものは、アイデア次第で無限に広がる可能性がある。そのため、同社は同業者であるボックスメーカーとも協業しながら、「GLORY1604」を活用できる場を広げていきたい考えだ。
 池田社長は「当社の現在の取引先の3割は、同業のボックスメーカーである。このため、『GLORY1604』を活用してエンドユーザーにどのような提案ができるのかを共に考えていけるパートナーとなっていただき、また、それにより当社のノウハウも蓄積していきたい」と話す。
 そして同社は2020年の夏頃に向けて、「GLORY1604」を活用する場をさらに広げるため、インターネット通販サービスの展開も計画しているとのことで、これらの取り組みが実現すれば、段ボール業界に新しい風が吹き込むことは間違いなさそうだ。
 池田社長は「神崎紙器グループとして100年企業を目指す」と今後の展望を語る。段ボール製造という従来の事業を大切にしながらも、そこだけに固執することなく、新たな領域への挑戦を続ける神崎紙器グループの今後の展開に注目したい。

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