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コダック、自前技術で「印刷の近未来」提示 - SONORA1.5倍に挑む

2019年1月1日

 完全無処理サーマルCTPプレート「SONORA」の拡販で昨年も大きな成果を挙げたコダックジャパン(藤原浩社長)。引き続き今年も、プロセスフリープレートの課題のひとつとして指摘されてきた「耐刷性」の向上を図る次世代バージョンの上市で、さらなるシェア獲得を狙う。さらに、SONORA、PROSPERインクジェット事業におけるパッケージ分野への水平展開も強化していく考えだ。今回、2019年の幕開けに際し、藤原社長にインタビューし、その具体的なソリューション展開について聞いた。

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藤原 浩 社長

──まず、現在の印刷業界を取り巻く環境について、どのように捉えているのか。

藤原 大きなトレンドが急速に変わっている感じはなく、印刷業界全体では、依然として市場規模の減少が続いていると感じている。そこに諸物価の高騰や人件費の負担(人材不足)といったコスト圧力が強まり、売上・コストの両面でコントロールが難しい状況にある。環境としては、必ずしも改善傾向にあるとは言いがたい。

 しかし一方で、印刷会社の決算発表などを個別に見てみると、大手をはじめ、堅調な業績をあげている会社もあり、決して「総じて悪い」という訳ではない。そういう意味では、印刷以外、あるいは周辺分野で付加価値を見出し、事業を拡大することで印刷需要を補っている。我々のお客様も千差万別であり、会社経営の舵の切り方によって差が出ているように感じる。

 私は、毎年100人以上の経営者に会う機会があるが、成長企業の特長は、5Sはもちろん、すべての面で基本に徹底していることだと思う。さらにビジネスモデルが明確であること。営業を排除した印刷通販などはそのひとつの例だろう。

 他にも「印刷はマーケティングのシナリオができたときのひとつのツール」だと割り切り、コンテンツ制作に軸足を置く。あるいは、地域のメディアセンターとしての機能に徹する。そんなビジネスモデルで利益を上げている会社も結構ある。

 あとは、人材も含めた先行投資を実践する会社。最新鋭の設備、IT投資、働き方改革など、様々なアプローチが想定されるが、やはり他よりも早く、ある程度のリスクを取っている会社は、それなりにリターンも多い。

──では、印刷の分野別動向は。

藤原 前述の話は、基本的にはオフセット印刷、商業印刷分野の状況だと思う。この分野では印刷物の需要の減少は止まらない。それを「付加価値」で如何に食い止め、価格に反映していくか、そのせめぎ合いが今後も続くだろう。

 一方で、フレキソ印刷分野は、印刷機の投資をはじめ、堅調に推移している。「環境」「安全」というキーワードで注目度は徐々に高まっている。パッケージ分野そのものが比較的堅調な分野。フレキソ印刷の成長余力はまだまだある。

 インクジェットにおいても、フレキソ同様、パッケージ分野で堅調な投資が続いている。イタリアのフレキシブルパッケージング業務用機器メーカーであるUteco社とともに昨年発表したラベル・軟包装向けデジタルプレス「Sapphire EVO」の日本1号機受注もそのひとつの動きだ。

 また、インクジェットはバリアブル印字の活用によって、さらにマーケティング的な要素で広がりを見せる余地がある。現在もタバコのパッケージへのバリアブルQRコードの印字で我々のインクジェットソリューション「PROSPER」が活躍しているが、既にお菓子のパッケージなどへの応用も始まっている。

 一方、drupa2016で発表したULTRASTREAMの開発が最終段階に入っており、いよいよラインヘッドの供給が開始される。

 これは、小さいサイズのドロップを均一に落とし、印刷されない部分に電荷をチャージして、それを抜き取るという技術。印刷部分は電荷に影響されずに落ちてイメージを形成する。この技術により、インクサイズはStreamのおよそ1/3になり、各種の用紙やフィルムに最高150m/分の速度で600×1,800dpiの高精細印刷が可能となる。

 現在約20社のOEMベンダーと覚書を締結。既に法的拘束力のある開発契約に同意したベンダーもあり、いよいよ製品開発がスタートする。

──昨年のIGAS展の感想や成果は。

藤原 展示会自体はまだまだ規模の縮小傾向が見られるが、昨年のIGAS展は少し違った熱気があったように感じた。「システム化」「ロボット化」「オートメーション化」といったキーワードが目立ち、厳しい経営環境の中にあって、「コスト低減」「付加価値向上」へ向けた印刷業界の熱意も感じられた。

 その中でも、様々なメーカーが連携しながらのソリューション展示を行っていたが、コダックは少しユニークな立場にあったかと思う。コダックの場合、自前の技術で機械、ワークフロー、消耗品を持つ強みを生かし、我々のブースだけでプリプレスのひとつの完結形、あるいは進むべき方向性を示せたのではないかと思う。スマートフォンやタブレット端末からCTPの出力と管理が可能になる「Mobile CTP Control App」や視認性を高めた次世代の完全無処理版などの展示で来場者から注目を集めたと自負している。

──コダックとして近未来の印刷現場をどのように捉えているのか。

藤原 「近未来」という意味では、人の手を介さない「オートメーション化」に向かうことは間違いない。しかし、その中間的な段階では、働き方改革にともなう女性や外国人といったマンパワーによる「生産効率の向上」へと向かうだろう。

 工場の近代化、未来形を考えた時、そこで鍵を握るのは間違いなくIT技術だ。開発が進み、完成度が高いハードウェアの情報をIT技術が如何に結びつけていくか。今後の印刷工場の設計においてもここが肝となる。この部分に対してコダックは、PRINERGYの機能をはじめ、協力会社との連携による共同ソリューション、あるいは海外事例を日本に持ち込むことでサポートできる体制が整っている。

──ここ数年、コダックが注力する完全無処理プレート「SONORA」の販促状況は。

藤原 SONORAは、従来のプレートと同様のハンドリングで大きなメリットもたらすソリューションとして市場に受け入れられ、昨年はスケールの大きなユーザーにも採用されはじめた。導入後にこれほど多くの前向きなフィードバックを頂ける製品はなかなかない。

 その理由を突き詰めると、実際お客様がオペレーションする中で、人件費削減に大きく貢献することが分かり始めてきた。規模が大きくなればなるほど、そのコスト削減効果は大きく、現像にかかわるトラブルによる調整や再出力など、細かなロスまで含めると、消耗品よりも人件費のコストセービング効果の方が大きいということが、ひとつの顧客満足に繋がっている。

 今後の開発の方向性としては、基本的に「全スペックで競合に負けない」ということ。視認性については現在でもかなり優位な立場にあると自負しており、耐刷性についても追従があるものの、我々はその先も見据えて開発を進めている。SONORAは、省電力UVに対応する世界初の完全無処理版として日本でいち早くリリースされた製品。「耐刷性」や「視認性」に関しては市場のニーズに応えるべく継続して開発・改良を進めており、年内にはさらに性能を強化した製品を上市する予定。期待していただきたい。海外市場を含め、無処理版におけるコダックのリーダーシップには揺るぎないものがあると自負している。

 昨年の1月、SONORAの販売について、前年比1.5倍という目標を掲げて挑んだ。結果、2倍を超える実績をあげることができた。当初は、事業規模が拡大したSONORAの販促において、1.5倍という数字は我々にとってチャレンジだったと思う。我々がなぜSONORAを強力に推進するのか。それは、お客様の利益向上はもちろんだが、労働環境や地球環境保全といった社会的なミッションも感じながら拡販しているからだ。2倍という実績は、その意図が市場に伝わった証だと思っている。

 私は昨年、「オリンピックイヤーとなる2020年までに当社が出荷する全プレートの3割がSONORAに置き換わる」と予測したが、この勢いだと半分近い出荷がSONORAになるかもしれない。

──昨年11月、イーストマン・コダック社がフレキソ部門の売却を発表したが、今後のオペレーションはどうなるのか。

藤原 フレキソグラフィックパッケージング事業部(以下「FPD」)を大手プライベート・エクイティ会社のMontagu Private Equity LLPへ売却する。すでに正式契約を締結しており、クロージング後FPDは、パッケージング印刷セグメントに対してKODAK FLEXCEL NXシステムをはじめとするフレキソグラフィック製品の開発、製造、および販売を行う新しい独立企業として運営される。

 FPDは新たな所有者のもと、近年コダックにおいてこの事業を支えてきた同じ組織体系、経営チーム、成長文化を維持。過去3年間、FPDのプレジデントを務めてきたChris Payne氏がCEOとして新会社の舵取りを行う。

 つまり、オーナーシップは英国の会社に変わるが、社長を含めた基本的なオペレーションは、各国そのまま維持されるということ。また、コダックのポートフォリオからは切り離されるが、コダックブランドは継続される。お客様にとっては、会社は変わるものの製品、サービスは何ら変わらないという移管の仕方になっている。

──最後に、2019年の抱負を。

藤原 印刷物は「五感に訴えるメディア」であることをもっと訴求すべきだ。コダックがそこに貢献できるような立ち位置でビジネスができればと考えている。紙メディアからWebメディアへの需要の流出は止まっていない。それは、Webメディアが身近で手軽にアクセスしやすい媒体であるからだ。印刷物ももっと身近で手軽に利用でき、アクセスできるメディアであることを業界としてアピールし、「人間の五感を使って情報をやり取りする」という「価値」「気付き」を訴求する一助となる仕事ができればと強く思う。

 また、数値目標を挙げるならば、さらにSONORAの拡販を図り前年比1.5倍に再度挑戦したいと考えている。ボリュームが増えたいまでは、かなり挑戦的な数字目標である。

 一方、オフセットもインクジェットも、パッケージ印刷分野に向けたビジネスを強化していきたい。唯一成長が見込まれるセグメントであるとともに、我々の主力とも言えるSONORA、インクジェットの実力がパッケージ分野でも生かせる体制が整いつつある。市場的にはそこに注力したい。

 また、総合力という意味では、自前の技術でプリプレスのトータルソリューションを提案できる「コダックのユニークさ」を訴求し、それを上手くお客様に活用いただきたい。我々が提案するシステム、ワークフローをフル活用いただくことで、印刷工場の近代化に貢献できればと考えている。

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