CSR活動の推進力として機能
富士フイルム(株)(助野健児社長)では、カーボン・オフセット制度を利用した環境貢献活動「Green Graphic Project(GGP)」を展開している。GGPは、富士フイルムが開発途上国におけるCO2削減プロジェクトに出資することで得た排出権(クレジット)を活用し、完全無処理サーマルCTPプレート「SUPERIA ZP/ZD」を「カーボンゼロ・プレート」として提供する取り組みで、富士フイルムとユーザーが一体となった環境貢献活動として注目を集めている。そのGGPに、広島県の総合印刷会社である(株)ユニバーサルポスト(本社/広島市西区商工センター7-5-52、喜瀬清社長)が参加を表明した。
同社は長年、多角的な環境活動に取り組んでおり、昨年5月、生産工程の環境負荷削減の一環として「SUPERIA ZP」を導入している。
CSR活動で顧客満足度向上へ
ユニバーサルポストは、1947年に創業した朝日精版印刷(株)を母体とし、同じ広島市の印刷会社である中本総合印刷(株)、企画制作会社の(株)フロンティアおよびマーケティング会社の(株)エムラスをグループ化することで現在の(株)ユニバーサルポストとなった。マーケティングやプランニング、クリエイティブから印刷・加工まですべての機能を備えたワンストップ体制により、印刷物のみならず、各種メディアやイベントなどによる販促・広報サービスを企画・提供する。「お客さまが面倒だと思われている部分を一括して引き受け、業務の効率化・最適化のお手伝いをする」というのが、同社の基本姿勢だ。2年前には、BPO(業務代行)事業をさらに深化させた形で行う部門として「DPS(Data Processing Services)推進部」を新設し、クライアントの課題解決に幅広く取り組んでいる。
昨年の5月に「SUPERIA ZP」導入
また、同社はとくにCSRの活動に注力しており、品質はもちろん、環境・情報の管理を徹底することで、クライアントの満足度向上、地域社会への貢献を目指している。環境保全についても、「企業市民として地域社会で存続していくためには必要不可欠」と捉え、早い時期から取り組んできた。2007年にISO14001、2008年にはFSC CoCの認証を取得。2ヵ所ある工場はいずれもグリーンプリンティング認定を受けている。今年2月には、全印工連が推進するCSR認定のスリースターを取得した。
GGP参加で環境活動の幅が広がる
「印刷には、紙とインキ、水が欠かせないため、印刷業は環境に少なからず影響を及ぼす業種と言える。だからこそ、環境活動には以前から重点的に取り組んでいる」と語る専務取締役管理本部長の前田理氏。同社の環境への取り組みは徹底している。環境に配慮した原材料を使用し、環境の視点で生産工程を見直し、ゴミや廃液を減らすとともに、社内のみならず、地域と一体となった環境活動を積極的に行ってきた。そんな同社だからこそ、富士フイルムのGGPの取り組みにもいち早く賛同した。
前田専務
「環境面では、自社でできることは精一杯やってきたつもりだし、もちろんこれからも続けていく。しかし、自社の力だけではとても手の届かないところもある。その意味で、GGPの取り組みは、CO2の削減や開発途上国支援への貢献など、私たちの環境活動の幅をさらに広げる良い機会だと捉え、参加を決めた」(前田専務)
さらに前田専務は、GGPのコンセプトについて、「富士フイルムさんの『自社だけでなくユーザーとともに環境保全に取り組んでいく』という姿勢は素晴らしいと感じた」と評価する。
同社がGGPの対象製品である「SUPERIA ZP」を導入したのは、昨年の5月。環境面のメリットは、明確に実感できているという。
「もともと、廃液削減装置によって現像廃液は極限まで減らしていたが、SUPERIA ZPの導入によって、完全にゼロにすることができた。加えて、自現機の消費電力などもなくなり、完全無処理化は工場全体の環境負荷低減に大きく寄与している」(前田専務)
このように、生産現場などの環境負荷低減を積極的に推し進め、また社員1人ひとりが高い環境意識を持っているのは、会社の方針としてCSRの考え方と実践を徹底させているからに他ならない。そして今回のGGPへの参加によって、社員のCSRへの理解がさらに深まった。
「環境対策は単一的な取り組みではない。他のさまざまな改善活動と合わせて、総合的に考えて実践していくことが重要。そしてその根底にCSRがある。GGPへの参加は、この考え方をより深く社内に浸透させるきっかけにもなった」(前田専務)
GGP認定証
同社はCSR徹底のための活動のひとつとして、「CSR検定」の受験を社員に推奨している。まず入門編として3級の資格試験に社員全員がチャレンジし、グループ全体で約200名の社員のうち、現在までに118名が3級の資格を取得しているという。
「CSR検定は全国規模のもの。この実績は胸を張れるものではないか。また、会社としても今年、全印工連のCSR認定でスリースターを取得できた。今後もCSRの啓発に努め、社員が自ら考えて行動を起こせるよう意識向上を図っていきたい」(前田専務)
GGPの意義を社内で共有、顧客にもアピール
さらに同社では、CSR活動の一環として、社員5、6人がひとつのグループとなり、それぞれ活動目的を決めて実行する小集団活動を展開している。現在20のグループが活動しており、その中には環境をテーマとしているグループもある。
「リーダークラスの社員が中心となって活動している。取り組むテーマはそれぞれが決め、3ヵ月間実施して結果を検証し、改善を図りながら継続していく。環境関連では、工場の5Sの徹底を進めるグループや、社屋清掃、造園美化、社外ボランティアなどのグループがそれぞれ活動している」(前田専務)
一方、全社的に実施する環境活動では、大きなテーマとして、(1)省エネルギー活動の継続(2)クライアントと環境にやさしい製品の提供(3)ゼロエミッション活動の継続、の3項目を掲げている。今回、GGPに参加したことで、CO2削減、さらには間接的ではあるが開発途上国支援の取り組みもこの中に付加されることになる。
「当社では日頃から営業部門と生産部門の間でさまざまな知識や情報を共有するようにしているが、環境面でも同じように情報共有を図っている。GGP参加の意義やカーボン・オフセットの仕組みなどを全社員がしっかりと理解し、お客さまに話せるようにしたい。それが当社の環境に対する考え方、会社としての姿勢をアピールすることにつながる」(前田専務)