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「工程改善」という視点 〜 富士フイルムのトータルカラーマネージメントソリューション

2017年3月15日

FFGS技術二部 大橋彰氏・安倍慎哉氏に聞く

 プルーフに対する市場要求は、「品質」から「品質+付加価値」、さらに「品質+効率+多様性」へとシフトしている。これら要求課題に対して広い守備範囲を誇る富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ(株)(真茅久則社長)では、適切なデバイスやCMS運用ノウハウの提供、さらに長年蓄積された印刷診断解析データに基づく印刷物評価技術による印刷工程全体の最適化を提案するなど、トータルカラーマネージメントソリューションを展開している。そこで今回、同社技術二部の大橋彰氏と安倍慎哉氏に、プルーフの動向と同社ソリューションについて話を聞いた。

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大橋氏(右)と安倍氏

二極化するプルーフへのニーズ

大橋 「カラーマネージメント」は、測色器の進歩やカラーマッチングソフトの精度向上によって幅広い層の印刷会社でも取り組める時代になった。ただ、コスト削減要求が高まる中で、投資効果が見えにくいこの分野への積極的な投資は、しづらいという面もある。大手の印刷会社でさえ測色器1台購入に稟議が通らないことも多いと聞く。Japan Color認証企業数の伸びが鈍化している背景にもこのような現状が見て取れる。

安倍 Japan Color認証が一段落したもうひとつの理由として、より色にこだわるクライアントがJapan Colorではなく、むしろ自社基準やJMPA、Kaleido認証など、よりニッチな基準に重きを置くようになっていることも推測される。
 また、プルーフ分野ではDDCPの時代が終焉を迎え、多くがインクジェットにシフトする中、クライアントの色へのこだわりやニーズの変化を反映し、二極化が進んでいる。より色にこだわるクライアントを持つ印刷会社は平台校正やDDCPの代替として、例えば「Jet Press」をデバイスとしてプルーフ用途で活用している。逆に、それほど色にこだわらないクライアントを持つ印刷会社は、サイズは限定されるが、より簡便なプルーフ運用を目指しPOD機、例えば「DocuColor1450GA」などを採用している。

カラーマッチングした状態を安定的に維持管理する

大橋 当社はカラーマネージメント分野において「モノ売り」だけではなく、「工程改善」という視点からトータルソリューションを展開している。
 印刷現場改善ソリューション「Eco&Fast Printing」は、印刷品質を安定化させて資材のムダを減らし、コスト削減を実現しようというもので、その先にあるものとして我々はカラーマネージメントを提案している。
 富士フイルムとしては、「i-ColorQC印刷診断」によって、色の標準化で印刷会社全体の効率化を図ろうとしてきた。印刷で無理なく再現できる基準を決め、各印刷機、プルーフ、プリンタで同じ色が再現できるように維持管理していこうというものである。

安倍 近年のカラーマネージメントでは機器やソフトの性能が向上したため、各社とも「一発勝負」であればかなり近いところまで色合わせが可能になった。ただし、そこで重要になるのは、カラーマネージメントをする「目的」である。
 市場で散見される「プルーフ至上主義」「上流工程至上主義」になると、上流の数値管理さえすれば、色が合うと誤解されている場合がある。あくまで色校正は最終成果物である印刷物を補助するためのツールであり、印刷の安定化の後、印刷から吸い上げた数値に合わせた上で、維持管理していくことが重要である。
 通常、「CMS」は、「カラーマネージメントシステム」、あるいは「カラーマッチングシステム」の略称とされるが、我々は新たな解釈として「カラーマネージメントソリューション」を提案している。これは印刷診断を元に工程管理や印刷品質全体の平準化、安定化を図るものだ。印刷工程全体で管理してこそ最大限の効果が得られる。そこが我々の考え方の原点である。
 また、我々は印刷診断において日本最大級の膨大な印刷物解析データを持っている。印刷診断は、1980年代から実施しており、延べ8,000件を超える印刷診断のデータが当社に蓄積されている。インキベタ濃度、ドットゲインなど、日本の印刷物について解析データをもとに、印刷物の評価技術も確立している。

大橋 この評価技術では、枚葉、輪転、水なしなど、多様な印刷方式において、世の中で好ましいと評価されている印刷物を平均化した基準をもっており、この基準により誰もが好ましいと考える印刷品質を導き出すことができる。
 当社の「カラーマネージメントソリューション」を支える軸として、この解析データベースと評価技術があり、印刷機の安定化や色基準の策定、それに付帯するプルーフシステムやクラウドを利用した工程全体の管理まで、ひとつひとつのソリューションが、すべて繋がって総合的かつ一元的に網羅されている。

クラウドベースのCMS

大橋 クラウドベースカラーマネージメントシステム「XMF ColorPath」は、オフセット・CTP・POD・インクジェットプルーフなど異なるデバイスの統一した色管理を実現するもの。本社・工場・営業所など複数拠点を持つ印刷会社の統一した色管理なども実現する。
 まず、プロファイルとCTPカーブ作成によるカラーマネージメントにより、各工程で色が合った状態にする。そこから経時変動によって変わる印刷状態を、数値で定常的に管理し、基準範囲内であるかチェックする。もし基準から外れていれば、その原因となる印刷機、プリンタの状態を確認。キャリブレーション、デバイスのメンテナンスによって元の状態に戻し、その色基準を維持する。これは「カラーマッチングした状態を安定的に維持管理する」という考え方。
 具体的な事例を紹介すると、フジカ様(愛知)では、LED-UV、水なし、油性の異なる3種の印刷方式において色再現に差が生じ、また同一印刷方式でも表裏で色再現に差があった。さらに同社では、「自社で色管理ができる体制を構築したい」と考えていた。
 そこでXMF ColorPathを導入。3種類の印刷方式でチャートを印刷してXMF ColorPathに読み込ませると、CTPのドットゲインカーブを自動で作成。3種の印刷方式間の色整合を実現し、刷り出し時間を2割短縮している。また、新たな資材を導入する際のカーブ設定も自社で対応可能になった。
 一方、丸正印刷様(沖縄)では、PODをプルーフ用途で使用するも、2台のPOD間の色差、安定性の差が大きくなり、そのなかで「印刷とPODプルーフのCMS精度を向上させたい」「POD複数台運用時の機器変動をなくしたい」という要望が生まれた。これに対し我々は、i-ColorQC印刷診断の実施とXMF ColorPathを提案。効果としては、印刷とのマッチング精度が向上し、刷り出し時間を半減、工場全体で延べ7時間/日に相当する大幅な削減のほか、グループ拠点間の色校送付の廃止、色管理に対する現場意識の向上、クライアントの信頼性向上(印刷立会いの回数減)などが挙げられる。

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安倍 XMF ColorPathの最大の効果は、数値で明確な合否判定が出るため、現場での判断とアクションがしやすくなったこと。トラブル時の復旧を早めるとともに自己復旧率も上がり、機会損失も少なくなる。
 また、XMF ColorPathには数値管理の結果をレポートとして書き出す機能がある。それを記録としてファイリングし、何か色調問題でトラブルがあった場合にそれを提示することで原因の所在を明確に示すことができる。

大橋 刷り出し短縮による損紙削減、時間短縮は、経営的観点から見ると大きなメリットで、システムの導入コストに見合うだけの印刷工程改善の有用性は明らか。この部分をこれからも訴求していきたい。

色見本スキャンで色合わせ

安倍 冒頭「プルーフの二極化」という話をしたが、我々のソリューションが「too much」なユーザーも存在する。そんなニーズに応えるため生まれたのが、色見本色合わせソフト「Real Match Assistant」だ。
 これは、従来のカラーマネージメントとは少し違う考え方。色見本の現物をスキャンするシンプルな操作で、簡単にPOD等の印刷物の色を色見本に近づけることができるソフト。原稿データ(CMYK)を「Real Match Assistant」に読み込み、POD機付属のスキャナで色見本をスキャンすると、自動でその色見本用のプロファイルが作成される。このプロファイルを適用して出力することで、色見本に近似した色の印刷物を安定的に出力することが可能になる。

大橋 「Real Match Assistant」が現在対応するプリンタは富士ゼロックスの4機種に限定されている。これは、富士ゼロックス製プリンタのコントローラーそのものが、カラーマネージメントを意識した構造になっているため。詳しくは言えないが、他のプリンタでは同様の結果は出ない。
 さらに、スキャナ付属の複合機プリンタが対象であるため、先日のpage2017でも「プロダクション向け上位機種への対応」について多くの問い合わせを頂戴した。現在、汎用スキャナで対応するバージョンを検討している。今後も市場ニーズを聞きながら開発を進めていく。

デファクトスタンダード「PRIMOJET」

安倍 「PRIMOJET SOFT/SOFT-XG」の新バージョンを発表した。
 「SOFT V7.0」は、ウインドウズ10に対応したほか、GUIの視認性や処理速度が向上している。また、新たにPRIMOJET PRINTER PJ8050/6050でJapan Colorプルーフ機器認証を取得した。さらに近日発売の「SOFT-XG V5.8」では、塗工紙ベース紙のインクコントロール性の向上のほか、Japan Color、JMPA、Kaleidoの3つの業界標準にいち早く対応している。
 さらに、今回はサポート面を強化。従来のサポート体制に、「ソフト不具合による出向費無償」「簡易CMSによるプロファイル提供」という2つのメニューを追加した「PRIMOJETフルサポートパック」を用意した。「サポートも品質のひとつ」と位置付け、訴求していきたい。

紙器や軟包装パッケージ分野へ

安倍 今後の方向性として、商業印刷から紙器や軟包装パッケージ分野へ事業領域を拡大しているユーザーが増える中、当社としてもこの分野における「色」のトータルソリューションを強化していく必要性を認識している。
 まずひとつは、現在ある軟包装用プルーフシステムのデバイスの拡張。また、page2017では、インクジェット適性を与えたPRIMOJET用コートボールを参考出品した。また、今後は「本紙校正」に対するニーズも高まると見ている。

大橋 その意味からも、Jet Pressは平台校正に変わる本紙校正デバイスとして、その安定性と瞬発力が高く評価され、新しい校正分野として認知されつつある。大きなトレンドとして今後も注目していただきたい。

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