高機能包装材料市場は微増で推移
(株)矢野経済研究所は、2018年の国内の高機能包装材料市場の動向を調査し、製品セグメント別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。
2018年の高機能包装材料の市場規模(国内出荷及び輸出量)は前年比101.0%の77万9,185t。シーラントフィルムが前年比102.6%、バリアフィルムが同101.7%と堅調であったのに対し、シュリンクフィルム(ラベル用)は同100.7%、基材フィルムは同99.6%となった。
軟包装は軽量で扱いやすく、使用後の廃棄もしやすいというメリットが評価され、食品缶詰からレトルトパウチに、トイレタリー用品のプラスチックボトルはパウチへと切り替わってきた。また、フードロス対応が進む中で、中身である食品の賞味期限延長、鮮度保持のためにパウチへのバリア機能付与のニーズもあり、シーラントフィルムやバリアフィルムの成長につながっている。一方で、基材フィルムやシュリンクフィルム(ラベル用)では薄肉化が進展していることから、重量ベースでの市場規模はほぼ横ばいでの推移となっている。
日本国内において、軟包装メーカー各社はこれまで、環境問題に対しては「小さくたたんで捨てられる=ゴミの容量削減」というメリットを前面に打ち出し、びんや缶、プラスチックボトルなどの成形容器よりも薄肉軽量で容器の減量化・減容化につながる環境配慮型の包材としてアピールする戦略を取ってきた。しかし、世界的規模で使い捨てプラスチック廃止への取組みが進む中、その戦略の転換が求められている。
強度やバリア性、易開封(イージーオープン)性など異なる性能のフィルムを複合化することで高機能化を実現してきた軟包装は、PETボトルや金属缶、食品トレーなど単一素材の容器とは異なりリサイクルが難しい。さらに、軟包装はこれまで使用後にプラスチックごみとして廃棄されており、廃棄のしやすさが利点でもあったことから回収・リサイクルルートも確立されていない。このことが、軟包装の環境配慮を難しくしていると考えられる。
近年、国内においてはフードロスや各業界における人手不足の深刻化といった問題が顕在化してきた。包装材料のユーザーである食品・飲料や日用品などの中身メーカーや流通小売業各社では、自社の製品・サービスでこれらの問題にどう対処していくのかが問われている。その点において、これまで中身の価値の訴求という役割を担ってきた包装材料が、調理や洗い物の手間の削減につながる包装など新たな解を提供できるかが重要なポイントとなる。
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