サン印刷、新たな表現手法に挑戦〜印刷と紙の風合いで南国・沖縄を演出
帯を用いた紙箱パッケージでIPA2025に入賞
クライアントの要望に応えるために生まれたパッケージ
総合印刷会社として様々な印刷物を手掛ける同社であるが、インバウンドをはじめ観光立国・沖縄という立地を背景に、近年ではパッケージ印刷分野に注力している。そのパッケージ印刷ビジネスへの展開で同社が強みとして力を注いでいるのがデザインだ。
宮城社長は「パッケージには、購入意欲を高める効果が求められる。デザイナーの自己満足ではなく、クライアントとの綿密な打ち合わせを経て、魅力ある商品としてのパッケージデザインが重要となる。つまり、優れたデザイン性だけでなく、アイキャッチ性の高いデザインの制作がカギとなる」とパッケージ印刷におけるデザインの重要性について説明する。
今回の入賞作品では、全体を包み込むパッケージではなく、部分包装となる帯を制作している。これはクライアントからの要望に対し、同社がカタチとして創造して実現したものだ。
「クライアントからパッケージの製造コストを抑えたいという要望に対し、当社は最適な方法として帯による梱包を提案した」(宮城社長)
これまでクライアント側では、フレーバーの異なるフィナンシェを組み合わせた数種の商品ごとに箱を作ってきたが、コストと在庫の面が問題視されていた。これに対して提案したのが、箱自体は共通で使用して、帯で商品を区別するというものだった。
この提案はクライアントから予想以上の評価を受け、すぐに採用されることとなった。クライアント側では、大幅なコスト削減効果だけでなく、箱自体を共通して使用できることで在庫や作業の効率の面からもメリットを感じたようだ。加えて、過剰在庫をなくすことはクライアントと同社の双方がSDGsに対応した経済活動を実践していくことにもつながる。
デジタル印刷機の強みを最大限に活用
帯の生産機には、PC1120を選択。その理由について島工場長は「このフィナンシェは大量生産している商品ではないが、フレーバーの種類による組み合わせが多岐にわたる。そのため、オフセット印刷で各商品用の帯を印刷すると時間とコストがかかる。しかし、PC1120であれば、刷版などの前工程が一切必要ないので試し刷りから本印刷まで、時間をかけることなく一気に印刷することができる」と、柔軟性と機動力を有するデジタル印刷機による印刷が最も効果的であったと説明する。
さらにクラインアントからは、印刷デザインについても「南国らしさをイメージできるもの」という要望を受けていた。そのため同社では、印刷表現だけでなく、用紙も含めた印刷物全体で「南国らしさ」を再現するため、用紙にエンボス紙を採用。エンボス紙については、5種類の用紙で印刷テストを行い、デザインと用紙の風合いが最適なものを選定した。

仲間氏は「観光立県として、沖縄を訪れる観光客に手に取ってもらえるよう、沖縄らしいデザインを念頭に制作した」と、デザインでこだわった点について説明する。
エンボス紙などの凹凸のある用紙にも印刷が可能なPC1120ではあるが、完成までは試行錯誤の連続だったとオペレーターの宮平氏は説明する。
「デザインと用紙の風合いを活かすため、定着温度など様々な設定値を微調整しながら印刷を行った。また、その際にはメーカーのサポートセンターも積極的に活用させてもらった」
また、エンボス紙への印刷には、特殊トナーの一種であるテクスチャード紙トナーを使用しているものの、ゴールドやシルバー、ピンクなどの特殊トナーは使用していないという。
「CMYK4色による色彩表現とエンボス紙の紋様や風合いを組み合わせて活用することで、印刷物全体で南国をイメージした作品として仕上げることができた」(仲間氏)
IPA入賞で見えてきた新たな可能性
初めてのIPAへの参加で入賞を果たした同社であるが、宮城社長は「自社の印刷技術や表現力、創造力などが世界でどのように評価されるのか不安もあったが非常に楽しみでもあった」と振り返る。
仲間氏は「デザインが第三者の視点から評価される機会はなかなかないため、今回の入賞は制作に携わった当社スタッフすべての努力の賜物だと喜びを共有している。また今回の入賞でデザインへの自信も強くなり、今後の制作活動の励みになる」と今回の入賞を契機に新たな制作活動に注力していくと述べた。また、宮平氏は「用紙の選別や微細な印刷調整など、多くのこだわりを結集した印刷物なので、オペレーターとしてはこうして仕事が評価されたことは率直に嬉しい。また、リピートオーダーもあることから、一般消費者にも魅力がある商品のパッケージとして認めてもらったはず」と、同社の企画・提案がIPA入賞に留まらず、市場でも商品パッケージとして成功を納めていることに二重の喜びを感じていると述べた。
同社ではこの成功を足がかりに、他の様々な商品やクライアントに対しても水平展開で提案活動を行っていく方針だ。そのためにはPC1120の能力を再認識し、さらに引き出すことが必要だと島工場長は説明する。
「当社では、枚葉オフセット印刷機で擬似エンボスなどを印刷し、クライアントからも評価を得てきた。しかし現在は、この表現方法自体が一般化して、当初のような感動を与えることができなくなった。今回の入賞作品は、エンボス紙と印刷技術を融合した、今までにない、新たな表現手法と言える」

最後に宮城社長は、次回のIPAへの参加について「クライアントのパッケージに対するニーズには、一般的なものと斬新なものが存在する。今後のビジネスにおいて、今回のような特徴や個性のあるパッケージの制作を手掛けさせてもらえる機会があれば、次回以降もIPAにエントリーしてみたい」と前向きに考えていることを明らかにした。














































