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視点の行方

再成長期に入ったデジタルサイネージ

印刷ジャーナル 2024年1月15日

 (株)シード・プランニング(東京都文京区)の子会社である(株)デジタルインファクト(東京都文京区)は(株)CARTA HOLDING(東京都港区)と共同でデジタルサイネージ広告市場に関する調査を実施し、その調査結果を公表した。

 同調査によると2023年のデジタルサイネージ広告市場規模は801億円の見通し(前年比119%)となり、2027年予測は、2023年比174%増の1,396億円となった。

 デジタルサイネージ広告市場は、過去数年にわたり、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出および移動規制などの影響を大きく受けたが、市場全体としては、すでに十分な回復を遂げており、2023年の市場規模は同ウイルス流行前となる2019年時を超える見通し。とりわけ渋谷、原宿、新宿といった人気地区の屋外や駅構内に設置したデジタルサイネージ広告の需要が集中的に高まっており、これらの成功事例の横展開を企図した他地区での新規媒体開発を望む声が出ている。

 また、リテールメディア化への取り組みの一環として小売店舗に設置されたデジタルサイネージ広告商品開発の検討が重ねられている。大手コンビニチェーンが発表した大規模な設置計画が象徴するように小売店舗における広告配信面数の伸び代はまだ大きく残されている。さらに総合スーパー(GMS)に代表される店舗形態においては、来店者の導線設計や通信環境の整備上などの観点から、商品棚前に設置されるタブレット型の端末への広告配信が高く評価されている。

 これまで市場を牽引してきた鉄道やタクシーの車両内広告については、首都圏内の主な場所への設置作業がほぼ完了し、デジタルサイネージの標準装備化が実現。成長の鈍化を回避するために、消費者の生活様式や広告主の要望を踏まえた広告商品設計や販売方法の見直しを求める機運が高まりつつある。なお、プロクグラマティック広告取引への関心の高まりを受けて、デジタルサイネージ広告媒体の取引に特化した新規マーケットプレイスの立ち上げやヘッダービディング技術の採用などの動きが見られる。また、大阪万博の開催をひかえる関西地域や居住用マンションのロビーやエレベーターへの新規媒体の設置に期待を示す声も挙がっている。

 これらの要因から市場関係者の間では、デジタルサイネージ広告市場全体としてはコロナ禍を脱却し、再び成長期に入ったとの共通認識が生まれつつある。