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大成、紙パッケージ印刷の「圧倒的生産性」で差別化[Rapida106X導入事例]

2024年3月15日

自動化で準備時間短縮〜少ないメンテポイントで負荷低減


 「印刷業界のパイオニアであれ」─パッケージ印刷の(株)大成(本社/東京都新宿区西新宿8-14-24 西新宿KFビル2F、大野敏社長)は、「脱プラ」の潮流を背景に、紙パッケージ事業を強化すべく昨年11月、Koenig&Bauer社製菊全6色+ニスコーターUV機「Rapida106X」を導入。「紙パッケージ印刷の圧倒的な生産性」で差別化を狙う同社では、2万枚/時という印刷機の高速性能に加え、ダイレクトドライブ機構に基づく印刷準備の並行処理によって生産効率を飛躍的に高め、新たな事業領域としてカード印刷の需要獲得にも乗り出している。


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Koenig&Bauer社製 菊全6色+ニスコーターUV機「Rapida106X」

主力は自動販売機で使用されるダミー


 1981年の創業以来、パッケージ印刷分野において受注から印刷、加工、納品に至るすべてのプロセスを内製化するとともに、様々な特殊印刷技術に挑戦し、その「技」に磨きを掛けてきた大成。現在では、パッケージ(紙および化成品)や食品ラベル、POP、ノベルティ、カード、商業印刷物など、その守備範囲は多岐にわたり、これらの技術とノウハウを活かした「企画開発力」によって高い付加価値を創造している。とくにPPやPETなどの透明原反への印刷を得意とし、オフセットで1ミリ厚の化成品に印刷できる、全国でも数少ないうちの1社だ。

 事業の柱となっているのは、自動販売機で使用される飲料やタバコ類のダミー。従来、成型だったこれらダミーは近年、納期やコスト面で有利な「フラットダミー」へと移行する中、トップクラスのシェアを誇っている。さらに、「トップボード」と呼ばれる自動販売機用のPOPでも高いシェアを誇り、年間およそ24〜30万部の印刷を手掛けているという。

 同社の最大の強みは、「創造力×技術力×対応力」という掛け算から生まれる付加価値の提供にある。既成概念にとらわれない斬新な企画・アイデアと、そこで育まれた印刷・加工における素材対応力、そして様々なニーズに応える守備範囲の広さが同社の成長エンジンとなっており、コールドフォイルやデコレア加工(インラインフォイルで印刷素材の表面にホログラムを転写するオリジナル技術)、疑似エンボスといった特殊印刷技術も、この「掛け算」から生まれたものだ。


紙パッケージに特化した生産体制


 同社が佐江戸工場(神奈川県横浜市都筑区佐江戸町850)にKoenig&Bauer社製菊全6色+ニスコーターUV機「Rapida106X」を導入したのは昨年11月。既設機の老朽化にともなう設備更新ではあるものの、その背景にはPPやPET素材への印刷が「脱プラ」という世界的な流れの中で減少傾向にあることがひとつのきっかけとなっている。これら一連の流れについて、取締役製造本部長で生産管理部長の行木義太郎氏は「一時は売上全体の7割を占めていた透明原反への印刷は、『脱プラ』という社会の潮流によって減少し、その比率は現在4割程度となっている。そこで、老朽化していた佐江戸工場のA倍6色機と菊全8色コーター機の2台を廃棄し、紙パッケージに特化した生産体制を目指してRapida106Xを導入した」と説明している。


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行木 部長


 一方、多品種・小ロット化の流れの中で受注が減少していたA倍6色機の置き換えとして、3.5m幅のDurst社製大判フラットベッドLED-UVインクジェットプリンタを導入。透明原反の技術とノウハウを活かした商品開発で新規事業を立ち上げ、店頭什器のほか、チェンジングなど、様々な機能を付加した印刷物を付加価値として提供している。


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3.5m幅のdurst社製大判LED-UVインクジェットプリンタ


 同社では、2013年に一世代前のモデル「Rapida106」(インラインフォイラー搭載菊全判8色機)の日本1号機を導入した経緯がある。さらに2020年にはシルクスクリーンの置き換え需要をターゲットとして同9色機UV+Wコーター仕様を導入。これら特殊仕様によって「付加価値」を創造してきたマシンに対して、今回の「Rapida106X」は、0.3ミリ厚程度の紙パッケージ印刷専用機として運用し、その印刷スピードと生産効率による「納期対応」と「価格競争力」を付加価値として提供していく考えだ。

 「Rapida106X」は、毎時2万枚の印刷スピードを達成した世界最速モデル(紙厚0.04〜1.2ミリ)。高生産性に加え、高度な自動運転のための数多くの機能が搭載されており、既設の2台の「Rapida106」も知る行木部長は、「フィーダーとデリバリーの安定性が抜群に優れている」と評価する。


高速印刷を実現する「ドライブトロニックSIS」


 「紙パッケージ印刷の圧倒的な生産性」で差別化を狙う同社。その事業戦略を具現化する「Rapida106X」には、2万枚/時の印刷スピードを可能にするひとつの機能として「ドライブトロニックSIS」が搭載されている。これは、引き針がないセンサー式のインフィードシステムで、紙を掴んだフィードドラム上のグリッパーバーが左右に最大±7ミリ可動することで位置合わせすることから、癖のある紙や重たい用紙などでも印刷スピードを上げることができる。「オペレータは、紙が出ないことに最もストレスを感じるもの。特別な設定なしでも厚紙がバンバン出る。正直、最初は驚いた」(行木部長)

 実稼働からおよそ4ヵ月。現在、印刷スピードは平均1万4〜5,000枚/時程度で運用。紙積みが間に合わないという理由もあるようだが、単純に従来の厚紙専用機と比較しても印刷スピードだけで生産性は50%向上している。

 さらに生産効率を飛躍的に高めているのが、全胴同時刷版交換の「ドライブトロニックSPC」の機能による「前準備時間の短縮」だ。これはダイレクトドライブ構造に基づく自動化の機能で、さらに刷版はベンダーレスで自動交換が可能となっており、人手による版曲げの作業が不要なことから作業時間の短縮およびプレートへの傷のリスクを低減できるメリットがある。

 一方、メンテナンス面でオペレータの作業負担を大幅に軽減するのが集中グリスだ。「週に一度グリスアップするが、Rapida106Xは集中グリスによって自動化されており、6色コーター機でグリスポイントが従来と比べて200ヵ所少ない設計になっている。グリスは入れるだけでいいというものではなく、余分な油を拭き取る作業もあることから、通常6胴で30分以上はかかる。ここで費やされていたオペレータの労力や時間を印刷作業へ振り向けることで、さらなる生産効率の向上が見込まれる」(行木部長)

 このほかにも、壺フイルムなどを使わず、インキ壺内部からエアーを送り出し、インキキーへのインキ固着を防ぐ仕組みなど、メンテナンスの負担を軽減し、かつサステナブルな機能が随所でオペレータを支援している。


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「Rapida106X」の前で(行木部長(左)と橋本雅彦顧問)

省エネ性能と人材の活性化


 「Rapida106X」は、「先進的省エネルギー投資促進支援事業費補助金(A)先進事業」(省エネ補助金)の対象として採択された唯一の枚葉印刷機でもある。同社では再版におけるインキの発色や再現性を考慮し、LED-UVではなく、従来同様のUV仕様となっているが、既設機だった菊全8色コーター機との比較で、エネルギー消費量を30%以上削減できると試算。「佐江戸工場だけでも年間の電気代コストは約2,000万円。その30%を削減となると大きなコストダウン効果がある」(行木部長)

 また、行木部長は色出し時の印刷スピードについて「よく色合わせだけ印刷スピードを落とすオペレータがいるが、印刷スピードによってインク離れが変化し、水の量も変わってくる。色出しも本刷り同様の高速で行う方が理に適っている」と指摘。「素早く適正な乳化状態にもっていく『2ステップダンプニング』機構などによって色出しが速いRapida106Xなら、その分増えた損紙をカバーできる」としている。

 人材の確保や活性化という面でも「Rapida106X」への期待は大きい。行木部長は「直感的な操作性をはじめ、先進性やデザイン性に、若い人材が興味を持っている。また、従来3名だったオペレータが2名になることで、人員の配置転換を柔軟に行うことが可能になり、印刷現場を知る人材が営業や企画に携わることで、新たな価値が生まれる」とした上で、「新事業である大判インクジェットのオペレーションも印刷オペレータが担当することで新たな気づきがある」としている。

 「私は、職人よりも印刷オペレータを育成することが重要だと考える。若い人材が最新鋭の機械で生産性をひたすら追求し、工場に1人いればいい職人が品質を担保すればいい」(行木部長)


新たな事業分野への挑戦も


 パッケージ印刷をメインとする同社だが、今回のRapida106X導入は、カード印刷の受注拡大も視野に入れている。現在、池辺工場のRapida106インラインフォイラー搭載8色機で印刷しているアミューズメント関連のプラスチック製カードは、3ヵ月毎に約100万枚の受注があるという。「カード印刷の需要は世界的に増加傾向にある。その需要を取り込んでいきたい」(行木部長)

 また、工場のスペースの問題で、今回の「Rapida106X」にはフィーダーとデリバリーに全自動パレット交換機能を搭載できなかった。「将来的には無人化も考えており、そのためにも自動化による生産性向上を目的とした工場移設も検討していく。さらには車で10分程度の距離にある池辺工場も集約し、付加価値と生産性が連立する工場運用も視野に入れ、飛躍的な生産性の向上を目指したい」(行木部長)

 先代の大野芳郎会長は、「『できない』とは言わない」というチャレンジ精神を全社に植え付けた。「今後もこのDNAを受け継ぎ、実行していく」(行木部長)とし、多様化するニーズに対して、人・モノ・金への投資を積極的に実施していくという。また、強化ダンボールやアクリルを使った製品開発でデジタル印刷事業の強化を進めていく一方、デジタル印刷技術とオフセット印刷技術を融合することで、ハイブリッドな製品開発や生産の効率化を推進。さらには印刷技術を活かした新たな事業分野への挑戦にも着手していく考えだ。

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