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大阪印刷、6台のIndigoで急成長する同人誌印刷ビジネス〜選ばれる「デジオフ品質」

2024年2月15日

[HP Indigo導入事例]幅広い原反への対応力が武器に


 同人誌印刷ビジネスで急成長を遂げる大阪印刷(株)(大阪市西淀川区御幣島5-5-23、根田貴裕社長)。昨年11月に延床面積で旧社屋の3倍相当となる新社屋に移転し、この工場では6台の「HP Indigoデジタル印刷機」が稼働。そのトータルジョブ数は約1万8,000件/月、インプレッション数は1,000万インプレッション/月を突破している。この急成長の背景には、資材の調達コスト抑制にともなう粗利率の高さがある。今回は、このあたりも含め、Indigoによる同人誌印刷の最前線を取材した。

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6台で月あたり1,000万インプレッションを突破


成長の背景に「Indigo品質の認知」


 イベントへの依存度が高い同人誌印刷分野。創業以来、右肩上がりの飛躍的な成長を遂げてきた同社も、「新型コロナウイルスによるパンデミック」によるイベント自粛、人流抑制を背景に「苦戦」を強いられた。ただ、そのダメージは対前年比15%ダウンと相対的に軽微だったという。このタイミングで同社は、大阪・日本橋商店街の一角にあった本社工場を、スペース拡張を目的に此花区の工業臨海地区へ移転するとともに、そのスペースを活かして同人誌印刷の主力機である「HP Indigoデジタル印刷機」の3台目を増設している。

 2021年12月に本紙が取材した際、共同経営者で製造部門を統括する緒方人志氏は、コロナ禍の最中の設備投資について、「潜在的な自社の成長」に言及し、次のように語っている。

 「経済のリオープニング時に需要が倍になったとして、他社は100%に戻るだけだが、当社は85%の倍で売上170%まで成長すると試算。これはある意味、我々にとって『危機』であり、生産キャパシティの増強および瞬発力強化を急いだ」(2022年1月既報)

 しかし、実際はコロナ前の売上6億円に対し、2023年は12億円に拡大。当初の試算を上回る200%の成長を弾き出した。

 この「潜在的な成長」が顕在化した背景について緒方氏は、「Indigo品質の認知」をひとつの理由に挙げている。

 「やはり、同人誌の世界でもオフセット印刷への憧れみたいなものがあり、オフセット=大量生産=有名、大手というイメージがある。このオフセットライクな品質を小ロットでも実現できるデジタルオフセット、いわゆるIndigoでの生産をユーザーが自ら好んで選択するようになった。これはある意味必然でもある」(緒方氏)

 また、緒方氏は「同人誌の品質要求には終わりがない。『安いから』『つきあいで』という理由で妥協する人種ではなく、部数を問わず自分の作品にはこだわりを持っている。まさに技術力勝負の世界であり、この勝算を高めるのがIndigoである」と語る。

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左から、緒方氏、喜多侑里氏、高尾祐輝氏


継続的な「守りの投資」


 現在、同社は従業員110名を擁し、売上規模は約18億円。昨年11月には延床面積で旧社屋の3倍(約3,700平米)におよぶ新社屋に移転している。同社の従業員は8割が女性で、此花区の前工場では商品を高い棚に積み上げることで在庫スペースを辛うじて確保していたが、今回の移転を契機に女性でも脚立などを使わずとも手が届くように背の低いラックに取り替えた。このため、新社屋は従来の3倍の延床面積があるものの、すでに面積の8〜9割が埋まっている。緒方氏は「おそらく10年もこの場所にはいられないのではないか」とさらなる業務の拡張を予測する。

 この新工場では現在、Indigo7000シリーズ6台が一列に整然と並んで設置されており、その「景色」は圧巻である。

 コロナ禍のIndigo3台体制から後、2022年10月にIndigo7900、2023年2月にはIndigo7K、そして工場移転時の11月に同じくIndigo7Kを導入。この短期間での設備増強について緒方氏は、「常に目の前にある需要が逼迫する状態の中で、パンクを回避するための『守りの投資』を続けてきた結果」と説明する。確かに「Indigo品質」が認知、選ばれる同人誌の世界ではあるが、なぜここまで「Indigoありき」の設備投資を継続的に行ってきたのか。そこには緒方氏が考える「同社の開発力×Indigo=創造力」という方程式があるようだ。

 「Indigoは創造力を掻き立てるマシンである。従業員が自ら考えて作ったものが、評価され、商品になり、売上になる。この過程の楽しさを従業員にも実感してほしいと考えている。その意味でIndigoは、仮説から成功に至る確率を高めてくれるマシンであり、従業員のモチベーションが高ければ高いほど飽きないマシンである」(緒方氏)


多様な前処理済み原反を自社開発


 その最たる機能として、緒方氏が評価するのが、「様々な原反への対応力」である。同社では、外部と共同でプレコーティング済みの様々な原反を開発し、自社でもA3ノビサイズ対応の枚葉コーター機「TEC COATER SYSTEM-50」(テクノロール製)を設備。また、一部でHPと用紙を共同開発するなど、素材への探究心は非常に高い。現在はPPや塩ビ、蒸着PETなどにもプレコーティングを施して印刷している。

 「Indigoはオペレーションに一定のスキルが必要なのは確かだが、努力すれば素材の質を残した素晴らしい印刷を実現し、その努力に対して120%の成果で応えてくれる。当社では多くの名も無き用紙をSNSなどで発信し、これら情報に貪欲な同人誌の世界で広がりを見せている。将来的には印刷原反の販売も視野に入れている」(緒方氏)

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様々な原反を使った印刷サンプル

 同人誌の制作はタブレットなどを使ったRGB環境で行われるケースがほとんどで、同社の真骨頂は、このRGBデータの印刷にある。その色域の再現性をさらに向上させたのがビビッドインキの採用だ。現在6台のIndigoは、いずれもCMYK+ビビッドピンク+ビビッドグリーン+プレミアムホワイトの7色仕様となっており、ユニークなビビッドインキ2色の搭載によってRGB色域の再現性がより豊かなものになっており、プレミアムホワイトによる遮蔽性の高い白も、素材対応の幅を広げている。

 「100万部刷るも10部刷るも作者の思い入れは何ら変わらない。その思いに我々がどう応えるか。RGB環境で制作されたものをRGB色域で印刷することで、作者の思ったような色になる。逆にユーザーがこのIndigo品質に慣れさせられたとも言える」(緒方氏)

 同人誌の場合、キャラクターの描画が多用されているため、肌の表現、いわゆるスキントーンが重要になる。Indigoのざらつき感のないスキントーンの品質評価も高いようだ。


粗利率の高さが良好なサイクルを生み出す


 同社の「積極投資による急成長」という良好なサイクルを生み出している背景のひとつに、粗利率の高さがある。資材の調達コストを限界まで抑えるための量とルートを確保する同社の粗利率は、なんと約70%。この資材調達コストに対する徹底した努力が低価格のサービスを支え、それが評価され、さらに受注増に繋がる。そして、さらに調達量が増加することでコストが下がるという良好なサイクルが同社の飛躍的な成長を支えているわけだ。Indigoで生産する受注ロットは50〜70部程度で、ジョブ数は約1万8,000件/月、インプレッション数は1,000万インプレッション/月を突破している。

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6台のIndigoが整然と並んで設置されている

 これまで営業部隊を持たず、100%オンライン受注で成長してきた同社だが、以前から次の成長エンジンを「BtoB事業」と位置付けている。ただ、「『潜在的な自社の成長』が顕在化し、常に生産のキャパシティが逼迫する状況にある中で、現段階ではBtoCビジネスに対する設備投資を強化していくことを優先課題に位置付けている。

 さらに、同社が今後の最大ミッションと位置付けているのが「事業規模の拡大」である。「売上60億円、従業員300名程度の規模まで事業を拡大させることが全社で共有しているミッション。いわゆる『規模の経済』の論理で、競争優位性を高める目的もあるが、やはり製造業で事業規模がなければ従業員も思うように休暇がとれないし、給与の底上げも難しい。従業員の『幸せ』を考えた場合、労働分配率を一定の水準で維持しながら従業員の待遇を向上させていくべきだと考えている。また、これが良い人材を確保できることにも繋がる。この当社のミッションをクリアする上で、その原資となるIndigoが果たす役割はさらに大きくなっていくだろう」(緒方氏)

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