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視点の行方

印刷業の倒産 前年度から⼀転、増加へ

印刷ジャーナル 2023年4月15日

 東京商工リサーチの調査によると、2022年度(4-2月)の「印刷業」倒産(負債1,000万円以上)は、59件(前年同期⽐31.1%増)に達した。年度通期(4-3月)は、2003年度以降の20年間で最少だった2021年度の48件を上回り、2020年度の69件に迫っている。

 「新型コロナウイルス」関連倒産は、27件(前年同期⽐50.0%増)と増勢を強めている。市場縮小に加えてコロナ禍による各種イベントの自粛や観光・ブライダルなどの需要減も経営を直撃している。

 年度の「印刷業」倒産は、2019年度から3年連続で前年度を下回り、2021年度は2003年度以降で最少の48件だった。倒産の減少が続いた背景には、コロナ関連の資金繰り支援効果が大きかった。だが、印刷需要の回復が遅れるなか、支援効果も薄れた2022年度は倒産が一気に増勢を強めている。

 また、負債額は「1億円以上」が28件(同115.3%増)と、全体の半数近く(構成比47.4%)を占めた。構成比は前年同期の28.8%から18.6ポイント上昇し、倒産規模が拡大している。

 2022年12月に東京商工リサーチが実施した「過剰債務に関するアンケート」では、「印刷・同関連業」で過剰債務と回答した企業は46.3%にのぼり、全体の6位だった。また、「コロナ後(概ね2020年2月以降)に過剰となった」と回答した企業は26.0%に達する。売上が落ち込むなか、過去の投資負担だけでなくコロナ関連の資金繰り支援策に依存した企業で、負債が膨らんでいる可能性がある。

 コロナ禍の初期は資金繰り支援策に支えられ、企業倒産は抑制された。だが、もともと構造的な不況で経営体力は弱体化しており、コロナ関連支援の効果も薄れたことで資金繰りは厳しさを増している。さらに、円安やウクライナ情勢による紙や光熱費などの価格高騰、配送費の上昇などコスト増も深刻で、印刷業界の倒産は増勢局面に入ることが懸念される。

休廃業・解散は前年同期比12.6%増

 2021年度の印刷業の休廃業・解散は260件(前年比16.3%減)で、2年連続で減少した。しかし、2022年度は4-12月の9ヵ月間で222件(前年同期比12.6%増)と前年同期を上回っている。

 2003年度以降の休廃業・解散は、2003年度の81件を底に増勢をたどり、2019年度は390件まで増加した。その後、コロナ関連支援が広がると2020年度以降は急激に減少、2021年度は260件にとどまった。ただ、現在のペースで推移すると、2021年度を抜く可能性が高まっている。

 印刷業界は構造的な不況が続き、そこにコロナ禍が追い打ちをかけた。業績回復がなかなか進まず、紙、インキなど資材高騰に加え、代表者の高齢化などの経営課題を抱え、倒産だけでなく休廃業・解散も増勢局面に入っている。